「祐希、起きて」
「……うん」
「うん、じゃないよ」
ばさりと掛けていた布団が剥がされた。あぁ寒い、眠い。悠太ってばひどい。
「ゆうたの鬼……」
「違います。早く起きてこない祐希くんがいけないんです」
オレから無理矢理剥がし取った布団を丁寧に畳みながら悠太が言った。
「……几帳面だね」
「え?」
「布団。干すんでしょ?」
「あぁ、うん」
これから干すんだったらわざわざ畳まなくたっていいのに、丁寧だと思う。まぁ、そういうところが好き……なんだけど。
「祐希、あくび」
「……あ」
噛み殺そうとすらしなかったあくびを指摘されて、ちょっとだけ恥ずかしくなった。そういえば、悠太は堂々とあくびしたりしないなぁなんて。それにしてもオレはたった今安眠妨害されたわけで、あくびを我慢出来ないのも仕方ないと思うんだよね。
「ほら、下りて」
シーツ剥がせないでしょ、って言いながらぐいぐい押されてベッドから退かされた。
「わあ……悠太くんひどい」
「祐希がなかなか起きないからだよ」
悠太は慣れた手付きでさっきまでオレが使っていたシーツを回収して、また布団と同じように丁寧に畳んだ。それは洗濯機に入れるんだから尚更ぐちゃぐちゃでもいいような気がするんだけど。
「もう洗濯するものないよね?」
シーツやらその辺に置いてあったタオルなんかを抱えて、悠太が言った。
あぁ、悠太、オレのお嫁さん、みたいだ。
「待って、オレも行く」
「え?」
「お手伝いしてあげるって」
「え、いや、大丈夫だよ」
「いいの。オレがしたいだけだから」
なんとなく。気が変わっただけ。
悠太が抱えていた荷物を取ろうとして、やめた。
悠太ごと抱きかかえて今度こそ行こうか、って言ってみたけど返事がない。覗き込んでみてもタオルを顔の前で握りしめていて表情なんてわからない。
ただ、ゆうた抵抗しないんだなぁって思ったら嬉しくて。きっとゆうたはそれどころじゃなくて気づかないだろうけど、ゆうたかわいいって呟いてみた。