20120404004711 | ナノ





日曜日に、家の近くの公園に行った。本当になんとなく、本屋の帰りに立ち寄っただけ。珍しく今日は悠太は隣に居ない。別に毎日悠太と一緒な訳じゃないですよ。


陽が丁度真上にあって、この暖かさは春からだけではないことがわかる。そのお陰か小さな子供たちも元気に走り回っていて。それが柄にもなく懐かしい、だなんて思ってしまった。オレにもあんな頃があったっけ。今では走る行為すら億劫だし、そもそも何をするにも億劫で子供の頃の記憶なんてものも曖昧でしかなかったのだろう。


オレはふぅ、と息をついてそんな子供たちを横目に、公園の端っこに設置してある二人掛けくらいの横長なベンチに腰掛けた。オレくらいの歳の人が公園に居るのが珍しいのか、子供だけではなくその母親たちもじろじろとオレを見ていた。視線が痛い。


用もないのに腰掛けたベンチは木で出来ていて、土砂降りの雨が降って水分を含んだら今にも腐って崩れ落ちそうなくらい脆い事が見てとれた。最初はオレが座ったら重みで崩れるんじゃないかと思うくらいにはオレの目にこのベンチは酷く弱々しく見えていた。けれどもそれはただ単にオレの想像で、恐る恐る座ってみた所こいつは想像の斜め上を行っている、と理解するのに時間はかからなかった。そんな事を思っている内になんだか愛着が沸いてきていて。おかしい、こんな、ただのベンチなのに。見た目は誰が見てもきっと綺麗とは言えない、むしろ口を揃えて汚いとでも言うだろう。勝手に言ってればいい、オレはこいつの良さを知ってしまった。何処からか沸き上がってくる愛着は独占欲に変わり、誰にも座って欲しくない願望に刈られ二人掛けのベンチをひとり真ん中で堂々と使った。どうせ誰も座りたがる人なんて居ないくせに、非常識云々関係ないだろう。






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