ある意味リア充 | ナノ





ぴこぴこ

どーん


「あ、またやられた…」

「祐希、そろそろご飯だってー」

「うーんこのボス強すぎ…あぁうん、今行く」

「早くおいでよ?」

「うん」


今日、世間はクリスマスとやらで恋人たちも浮かれて賑わっている。そういうのなんて言ったっけ。あぁ、リア充だリア充。そんな中オレは一人でゲーム三昧。学校も冬休みでたくさん遊べるし。でも悠太は真面目だから、宿題やるって言ってなかなか遊んでくれない。仕方ないから一人でゲームです。まぁ楽しいからいいんだけど。あ、嘘。このボスが倒せないから楽しくなくなってきた。

もういいや、なんて思って大人しくセーブして、スリープモードにしておく。電源を切らないのは、後でまたやるから。オレはあんなボスで諦めません。

先にリビングへ行こうとした悠太を引き止めて後ろからダイブ。もう習慣付いてきたから悠太も微動打にしない。最初の頃は危なっかしくて今にも転びそうだったのにね。うん、どんどんたくましくなって来ていいんじゃないかな。頑張れお兄ちゃん。なんて一人感心してたら早く行こうって声がした。
「あーごめんごめん、続きはまた後でね」

「ほらお母さんたち待ってるから。最後のは聞かなかった事にするね」

「わあ悠太くんひどーい」

「棒読みやめて、ほら歩いて歩いて」


ぐいぐい押されて部屋からすっかり追い出された。やっぱりたくましくなるのも困るな。

リビングに着くと両親が居て、テーブルの上には多分全てお母さんが作った料理がたくさん並んでいた。今日の夕飯はかなり豪華だ。それでも七面鳥なんて無くて、代わりに鶏の唐揚げ。そんな所がオレはすごく好きだった。豪華な料理や、七面鳥だってもちろん食べたいけれど、家庭の味って感じがするこっちの方が好きだ。

そんな庶民の豪華な夕飯を食べ終え、そそくさと部屋へ戻る。目的はもちろん、あのボスを倒す為。

スリープモードを解除してゲーム再開。こんなやつさっさと倒して先に進めたいのに。


「祐希」

「んー?」

「先お風呂入って来ちゃいなよ」

「ん、んー…」


うーん今やってるのになぁ。オレはガチャガチャとコントローラーのボタンを押していく。コマンド入力も完璧。今回は倒せそうだ。


「あ、それで何だっけ?」

「……うん、だから」

そこでリビングの方からお母さんの悠太を呼ぶ声がした。


「あーっと…、ちょっとオレ行ってくるから祐希もゲーム止めなよ?」

「はいはい了解ですよっと」


でもボタンを押す手は止まらない。もう少し、あともう少しで倒せる。そう確信していた。


「ゆ……んっ、ふ…」


悠太の名前を呼ぼうとして…あ、れ?唇になんか柔らかい感触。なに、これ……。
自分でも驚くくらいの甘ったるい声が出て、目を見開いた。そしたら悠太の顔が目の前に。

かつり、音をたててコントローラーが手から滑り落ちる。画面にはでかでかと何度も見たゲームオーバーの文字。


「ちゃんと止めてよ?」

「う…わ、ずっる……」


くすりと笑った悠太がやけに艶かしかった。これは完璧に一本取られた。真っ赤な顔を隠すようにずるずるとその場に崩れ込めば頭を撫でられる。あぁ、あと少しで倒せたのに。そんなことを頭の隅で考えていたら、2度目のキスをお見舞いされた。






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