オレが東先生を好きなのは、果たしていつからだったか。ふと考えてみるものの、全く答えなんて出なかった。考えれば考える程、キリがない。
「じゃあ、この問題を塚原くん」
授業中にそんなことを考えていたら、当てられた。しまった、今は東先生の授業だったのに、なんて。
東先生と目が合うと、にこりと笑われたので若干どきりとしたが、問題には難なく答えることが出来た。
「ふふ、何考えてたの?」
授業が終わったら、廊下で東先生と話をするのが日課になりつつある。
「…知ってたんですか」
「うん、考え事してるなぁって思ってた」
さらりと言い放たれたので冷や汗が流れる。これじゃ嘘なんてついてもすぐ見破られそうだ。まぁ、東先生につく嘘もないのだけれど。
「東先生のこと、考えてました」
だってほら、東先生の前だと何故か素直になれて、嘘をつく気にもならないから。
「…え、オレ?」
ふぅん…と意味深な息をついてじろりと眺められる。なんだろう。
「要くんってほんと可愛いね」
けらけらと無邪気に笑う東先生は少し幼く見えたけど、きっと真っ赤になって反抗するオレの方が幼く見えるのだろう。
だとしたら、オレ達は周りに一体どんな風に映っているのか。
どうかそれが幼きであれどうであれ恋人同士、でありますように。
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