それはもう最高の夕ご飯だった。おばさんの手料理が所狭しとテーブルに並び、サンジのものとはまた違うケーキも堪能でき大満足。加えてかわいいラミちゃんと恋バナに花が咲いちゃったりして!ちなみに私の好きな人はとうの昔にバレており、色々と手伝ってもらっている。代わりに彼女の恋人との愚痴を聞いているが、それがまた初々しくてとてもかわいい。

「はぁ、幸せ!」

「…それはおれのセリフじゃねェか?」

「今まで生きてきて言ったことないでしょ」

片付けを手伝ったあと、ゆっくりしていってね!とのおばさんの言葉に甘えローの部屋に向かう。怪訝な顔をしている本日の主役を横目に、我が物顔でソファに座った。そう、忘れそうになっているが、誕生日なのはローである。

「まるでお前の誕生日だな」

「ちゃんと祝う気持ちはあるもん」

「へェ…」

「な、なによ…」

ローが本を片手にギシ、と隣に身体をソファに沈めた。その距離感を意識してしまいどきりとする。

「…急に黙んな」

「い、今から本読むでしょ!私はちょっとメッセージに返信するから」

「ん」

短い返事と共に本を開く音。


メッセージの通知すらきていないスマホを持つ手に汗が滲む。これからやろうとしていることを、頭の中で念入りにシミュレーションした。あまりにドキドキと心臓の音が聞こえるので、まさか隣にまで聞こえてやしないかとさらに緊張する。


「あ、あのさ、」

「…なんだ」

一度ギュッとスマホを握り、それからロックを解除する。


「ナミが今日の昼休み、たくさん写真撮ってたでしょ?」

「あー…なんか無駄にスマホを向けてきてたな」

「いや無駄って…まあいいや。それ、ウソップくんが動画に編集してくれるんだって」

「へェ」

「で、最後に私とローのツーショットが欲しいって言われてて…」

パタンと本を閉じる音に思わず肩が跳ねた。

「それ必要なのか?」

「ひ、必要だよ!ローの誕生日動画だし、主役がいなきゃ!」

「フン…暇なヤツら」

口ではそう言っているが満更でもない様子に少しホッとした。この幼馴染は無愛想でノリも悪いが、身内には結構甘いことを身をもって知っている。

「まあいい。さっさとしろ」

「う、うん…。じゃあ撮るから、こっち向いて」

スマホのカメラを起動し、インカメラに切り替える。2人が画面に収まるところを確認した。

「と、撮るね」

「クク、なに緊張してんだ」

自然に出たであろうその顔を画面越しに見つめ、



カシャッ



シャッター音が鳴り、私はローの顔から離れた。唇に少しかさついた感触が残っている。


「…………撮れたかよ」

「え、わ、わかん、な、い…」

「ハァ。ったく…貸せ」

「あ、え、」

何事もなかったかのように、私の手からスマホをとるロー。まさか、これって失敗?

「次は綺麗に収めてやる」

「え?…っ!」



2度目のキスはその宣言通りにばっちりカメラに収まった。


「おせェんだよ。バーカ」