「おーい!トラ男!!お前今日誕生日なんだろ?!」

授業の終了を告げるチャイムと共に、隣のクラスであるルフィがバタバタとやってきた。
…チャイム鳴り終わってないのにもう来ているのは気付かなかったことにしよう。

「…チッ、うるせェのがきた」

「サンジがスゲェケーキ作ってきてんだ!来いよお前!!」

他クラスということをものともせず入り、ローの肩をガシッと掴むルフィ。

「っ、オイ、」

「なあ、来るよな?もちろん名前も!!連れてこなきゃ食わせねェってサンジが言っててよ」

「え、もちろんいくいく!サンジくんのケーキ食べないとかないわ」

さ、いくわよロー!

嫌がる幼馴染の腕をがっちり掴んで席を立つ。サンジくんの作る料理はなんでも美味しい。女の子にとても優しい彼はいつでも作ってくれるので、現金なナミなんかは毎日のお弁当を頼んでる。流石にそんなこと私はできないけれど、おこぼれに与れるタイミングがあるならそれを逃す手はない。

「…ああ、ったく、行きゃいいんだろ」

「というか、あなたのために作ったみたいだし行かない方が失礼じゃない?」

「そうだぞトラ男!せっかく名前が、むぐ」

「あーらルフィ!お腹空いてるんでしょこれあげるわ!!」

余計なことを言いかけた大きな口に飴を押し込む。この天然少年が呼びにきた時点で何かやらかしそうと身構えていてよかった。

「む、うんめェなこの飴!もっとくれ!!」

「はいはい。あげるからルフィの教室に行こう」

「おー、あいつらも楽しみに待ってんだ!一緒に祝おう!」

ニカッと太陽のように明るい笑顔を向けられてローも観念したのか、いまだ私が掴んでいた腕をそのままに歩き出す。

「……パンはないだろうな?」

「パンはねェけどケーキはあるぞ!」

「それは聞いた」

どっちにしろ嫌いだとでも言いたげな顔に、私はほくそ笑む。

パン嫌いなローの誕生日ケーキにスポンジなんて使うわけないじゃん。

サンジくんは男の子に厳しいけど思いやりがない人ではないし、何より私が頼んだのだからローも食べられるもののはずだ。

連れ立って歩く私達に向けられた女子たちの羨ましげな視線。それを心地よく受けて私は教室を出た。