アーメン


この恋は恋じゃないかもしれない。
恋と呼ぶにはあまりに彼女が眩しすぎるし、
愛と呼ぶにはあまりに彼女に何かを求めすぎる。彼女に求める請いが恋ではないのは漢字を見ても明らかで、だけども彼女なくして私は月と太陽を区別することすら難しいのである。彼女なくしてはこの星は自転しないし、酸素は巡らないし、新しい生命は産まれてこない。それら全ての現象が彼女の存在を示しているように、まるっと纏めて彼女こそが愛の証明なのだと近頃の私は思う。
まるで宗教だ。聖母マリアがどうとか、イエス・キリストがどうとか私は知らないけれど、彼女を崇める宗教があるのなら酸素をひと握りでもする前に入信して全てを捧げたい。そうやって人生を謳歌したいし、また、そうやって転落もしていきたい。
こんな私の思いなんて彼女は知らず過ごしていることが私にとっての救いのひとつだ。神のように君を愛しているのだと、私は教室の端から見つめることしか出来ない。五条悟の双眼越しに、家入硝子の言葉越しに彼女を摂取するだけでは飽き足らない私をどうか許して欲しい。君の傍にいたい私を許して欲しい。

「今日天気がいいね」

私は君のその言葉で青空を知る。

「焼けるような夕陽が綺麗だね」

私は君のその言葉で夕景を知る。

「見て、花満開だよ」

私は君のその言葉で世界の動きを知る。

ずっとずっとそうやって生きていたかったというのに、どうしてか世界はそれを許してくれない。世界が許さないということは巡り巡って彼女が私を許してくれていないということなのかもしれない、と血溜まりの中思う。彼女がこの世界の創造神だというのに、どうしてこの世界は残酷に出来ているのか心底理解出来ずにいた。彼女という光の元、全てが平等であっていいはずなのに人は人を虐げ、差別し、踏み躙る。彼女がそんな世界を創るはずがない。世界の端っこで丸くなって泣く弱者の為に彼女はこの世界を丸く創ったような存在だというのに。張り裂けるような自己矛盾が稲妻のように走った。そして血溜まりに似た焔が辺りを包んでいく。

どうか、許してくれないか。
君という宗教に属しながら、世界を憎む私を。
どうか、愛してくれないか。
君が包み込んだ弱者たちを救おうとする私を。

至らぬ信者でごめんね。
でもいつか、私が死ぬ時にはこの星に雨を降らせて欲しい。それが最後の請いだ。

これも恋だ。




×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -