自由落下は指先から*


傑は真面目過ぎると思う。私からしたら別に明日でもいいじゃんと思う事だって、彼はやると決めたら後回しにはしない。

「……傑って小学生の頃、夏休みの宿題早めに終わらせるタイプだった?」
「え?まあ、そうだね」
「そんな感じ」

今だってベッドに2人並んで、私はちょっとだけやらしい事を期待しているのに傑の手元には小難しい本。どうやら今日はこれを読んでから寝ると決めているらしい。

最近、夜は4人で桃鉄ばっかりしてたから読書の時間が取れなかったのは分かるけど、私と2人っきりの時間も確保できていないことを傑は気づいているのだろうか。

「ふん、傑のガリ勉ー!おやすみ」
「そうでもないだろ。おやすみ」

くすくすと笑いながら、私の髪を指先で漉く。傑の指は魔法みたいで、触れられると意識がどこかに飛んでいく気がする。こうして少しだけ眠い時には眠りの世界へ、肌を合わせている時は深い快楽の世界へ。

紙が擦れる音を聞きながら、今夜はシたかったな、と思いながらもぶつりぶつりと意識は途切れていく。微睡みの最中、唇に柔らかいものが押し当てられた気がした。




「ん……」

薄いTシャツの上から、大きな手のひらが胸をすっぽりと包み込んでいる。繊細な動きで先端を摘んで、立ち上がったそれをこりこりと扱かれると反射的に腰が揺れる。

爪の先で弾いたり、周りをなぞったりしながらやわやわと全体を揉まれると、段々と強くなる快感に頭の奥が覚醒し始める。
後ろから抱き締められながら愛撫されると、傑の顔が見えない不安がかえって快楽を誘発するような気がするから不思議だ。

傑、起きてるのかな。今何時なんだろう。身を捩ろうとした瞬間、下着に指がひらりと侵入してくる。
腰やお尻の方、曖昧な部分を指先でくすぐるように撫でられると、胸への布越しの刺激がより強く感じられて、我慢できず声が漏れた。

「っ、」

夜這いみたいな状況に興奮を煽られて、もっと触って欲しくて後ろを振り返る。そこには目を閉じたまま静かな寝息を立てる傑の顔があるだけだった。

……まさか、これだけイヤらしい触り方しておいて寝ぼけてますってことは無いよね。寝たフリまで上手いの、初めて知った。「すぐる?」恐る恐る名前を呼んでみても返事は無い。まさか、本当に寝ていたりして。

「ん……」

眉間にシワを寄せた傑がごろりと寝返りを打って、私に背中を向ける。この男、本当に寝てる。
散々煽られたせいでお腹の奥がじんじんと熱を持ったまま、やり場のない欲求を傑の背中におでこと一緒にぶつけた。ぐりぐりとTシャツに顔を押し付けると、傑の匂いが肺を満たしていく。
あ、これは本当にヤバいかも。何かに操られるみたいに、手が下着の中へと伸びていく。

「……っ」

傑はいつもこうして、指先で滑りを広げてから周りをゆっくりと焦らすように撫でる。それから、外の一番気持ちいい所を中指で擦って、耳元で私の名前を呼んで、

「ぅ、」

傑の匂いを嗅ぎながら自分でこんなことシて、バレたらどうしよう。絶対、変態って言われる。そう思うのに傑の指の真似が止められなかった。
指を1本、中に埋めると傑の指より細いからか全然物足りない。2本埋めて、上の良いところをそっと擦る。腰がびくびくと跳ねて、とろりと愛液が溢れる。

傑が起きないうちに、はやくイかなくちゃ。いつも散々焦らした後にしてくれる、指でぐちゅぐちゅに掻き回しながら外も同時に触ってくれるあれ。自分の指で試してみても、やっぱりすぐにイきそう。
傑、起きて。やっぱり起きないで。

息を殺しながら傑の背中に顔を埋める。自分の指によってもたらされた絶頂に脚が震えたけど、やっぱり傑にシてほしい。
腰から広がった気だるさに身体中が包まれる。大きな背中にくっついたまま、眠りの淵に引っ張られていった。




「……ん」
「おはよ、なまえ」
「すぐるおはよ」

じめじめとした部屋の空気が肌にまとわりつく。カーテンの隙間から差し込む光はまだ弱い。
それでも傑も私も目が開けられないまま、夢と現実の境界線を行ったり来たりしながら抱き合っていた。傑の手が脇腹から腰を撫でる。

昨夜、一人でした時の熱が未だに燻っていた私の身体はそれだけで腰が揺れた。傑の胸に顔を埋めると、寝起きの甘い声が上から降ってくる。

「なに、変な気分になっちゃった?」
「そういうわけじゃないけど」
「どうかな。確かめてみようか」
「や、っだ、変なとこ触んないで」
「……あれ」

ふざけた手つきで私のお尻を撫でていた傑の手が、前の方に触れた瞬間ぴたりと止まる。昨夜、拭かないで寝たせいでそこは未だに充分すぎる程に濡れていた。脚をこすり合わせると、静かな部屋に小さく水音まで響く。
びしょびしょなの、確実にバレた。こわごわ傑を見上げると、意地悪な顔でにっこりと微笑んでいる。

「なまえ、どうしてこんなに濡れてるのかな」
「……傑が、夜中……寝ぼけて胸触ってきたから」
「へえ、それだけでこんなになる?」
「なるよ」
「本当に?」

湿った下着の上からゆるく爪を立てられる。ぷくりと立ち上がったそこを上下に軽く引っ掻かれると、傑から与えられる刺激に飢えた下腹部がひくひくと収縮したのが分かった。

「本当の事言って、なまえ」と耳元で追い討ちをかけられる。こうして傑に甘い餌をぶら下げられると、浮かんだ羞恥だって一瞬で消えていってしまう。

「……ちょっとだけ、一人でシた」
「どうやって?教えて」

するりと下着が下ろされる。傑の大きな手でお腹から秘部へゆっくり撫でられて、ぐちゃぐちゃのそこに中指が滑る。
昨夜自分でした時とは違う、求めていたその快楽に期待が湧き上がって、傑の背に回した手に力がこもった。

「傑の、触り方の真似した」
「なまえはやらしいね。こう?」
「ぁ!ん、それ」
「ここ押し潰されるの好きだもんね」
「っ傑それ、だめ」

中指で突起を押し潰されながら左右にいじられると、奥で爆ぜそうな快楽がじんじんと蓄積していく。イキたいけど、奥でもイキたい。傑の指を埋めて欲しくて、その手を掴んで指を誘導する。傑の喉がごくりと鳴った。

「なまえ、ちょっとエロすぎる」
「も、無理。ゆび入れて」
「かわいい」

傑の声色には興奮がありありと滲んでいて、その目にも欲望が光っている。待ち望んでいた指が膣に埋まると、ぐちゃ、と生々しい音が部屋に響いた。奥の良いところを指先で掻き回されると、その鮮烈な快感に腰が引けてしまう。

「なまえはここぐちゃぐちゃにされるのも好きだろ」
「あ、っ!傑、やだぁ」
「こうして欲しかったんじゃないの?」
「指っ、2本はやだ、気持ち良すぎて」

ふ、と傑が鼻で笑う。
解かれている髪が頬に落ちて、それを片手で耳にかける仕草はいつ見てもゾクリとする。

「……なまえ、まだ1本しか入ってないよ」
「う、そっ」
「2本だと、こう」
「は、!っ……あ」

ぬぷ、と埋まっている質量が確かに増えて、快楽もそれ以上に増す。中でバラバラに指を動かされると、良いところへの刺激が止まずに息が出来ない。
腰ががくがくと揺れて、私の絶頂がすぐそこに迫っていることを察知した傑の親指が、外の突起を弾く。中と外に痺れるような快楽を与えられ続けて、あっという間に絶頂の波に攫われる。

傑の指を離すまいと締め付けるそこから少し強引に指が引き抜かれ、ほぼ同時に傑のものが押し入れられる。指では届かなかった奥にぶつかる堪らない圧迫感に腰が震えた。


「あ、んん!っ」
「ね、なまえ。自分でするのと、私にされるのどっちがイイ?」
「傑、のが、いい」
「君は本当にやらしい。私の指思い出して一人でシてたなんて」
「やだ、言わないで」
「やだ?でも中はすごいよ。びくびくして私の締め付けてくる」
「んっあ」
「いやじゃないみたいだね」

先端近くまで抜かれてから、奥目掛けて深く打ち付けられる。その激しい動きに目の前がチカチカして、傑の腰に脚を絡めてしまう。
気持ち良くて気持ち良くて、傑の首に腕を回す。抱き締めていてくれないと、意識も身体もどこか遠くに飛ばされてしまいそう。

上半身も下半身もぴったりとくっつけ合って、ゴリゴリと腰を前後に揺らす。奥が押し広げられる感覚と、傑の熱に浮かされたその吐息が耳にかかる。それすら快感になって身体が跳ねた。

「す、ぐる、あっ駄目、やばい」
「我慢して。ちょっと激しくする」
「無理、あ!むりっ」
「なまえ」

両手指を絡められて、舌まで絡め取られるキスが落ちてくる。限界まで腰を押し付けられるとどこも動かせなくて、世界一優しい監獄に閉じ込められているみたい。

抵抗できないままひたすらにぬぷぬぷと抽送されると、強引に絶頂へと押しやられているこの状況に、どうしようもなく興奮する。震える膣壁が傑のもので擦られ続けて、頭がおかしくなりそう。

「すぐ、っる、んっ」
「なまえ、可愛い」

傑は私の目を真っ直ぐ見据えながら、荒々しく腰を使い続ける。動きが早くなって、その顔から余裕も笑みも無くなる。この顔が一番好き。私のことで頭がいっぱいの顔。

「イく」
「あ、っん!う……あっ」

どくん、どくんと膣内で傑のものが動く。ぴったりと食い締めているからかその拍動をまざまざと感じてしまう。ていうか、ゴムしてたっけ。

「すぐる、ゴム」
「……してるよ」
「早業」
「どうも」

合わさった肌はどちらも汗まみれで、その汗も混ざってしまいそうなほどにくっつきあう。傑の早い鼓動が心地良い。鼻先を擦り合わせて、耳たぶを触り合う。
傑のピアスをいじりながら「今度ピアス開けてよ」と言うと、何故か傑はちょっと渋い顔をした。

「春夏は膿みやすいんだ。開けるなら秋冬の方が良い」
「そうなんだ。じゃあ秋に開けて」
「いいよ。綺麗な耳だから勿体ない気もするけど」

私の耳たぶをふにふにと指先で摘む。その優しい指になんだか眠たくなってきて身体を寄せた。……臀部に硬いものが当たっている、ような。

「傑?」
「なまえ。もう一回シたい」
「え?うそ」
「私のこと考えてオナニーしてたって、それは反則。君いつからそんなやらしくなったの?」
「傑のせい」
「……もうどうなっても知らないよ」

今は一体何時なんだろう。悟が起こしに来ちゃうかもしれない。それでもやっぱり、傑の匂いに包まれてその指で肌をなぞられると、あっという間に理性なんて吹っ飛んでしまう。

「指、2本いれて」
「そんなに好き?私の指」
「好き。気持ちいい」
「……ねえなまえ。あんまり可愛いこと言われると手加減できないから、止めてくれないかな」

自分の指も悪くないけど、やっぱり傑の指が一番気持ちいい。私を見下ろす傑の顔からは、余裕も笑みもすっかり無くなっていた。

そう。この顔がたまらなく好きだ。
熱情のまま傑の首を引き寄せる。頬に落ちてくる長い髪。傑の全部がたまらなく好き。指だけじゃないよって、後できちんと伝えておいた方が良いかな。





BACK





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -