下から、す(夏油)*




「8戦で5勝、5カートン。まあまあだな」
「硝子、寝タバコするなら自室でやってくれ。火事はごめんだ」
「はいは〜い。女子寮から男子寮まで燃やし尽くしてやる」
「怖っ。悟、なまえはこのままここで寝かせておこう」
「じゃっおやすみクズども。なまえに手出すなよ」
「オマエがいちばん危ねーよ」


「んーーーー……ん」
水底から浮上した瞬間のように、急速に目が醒めた。やばい、寝てた。大富豪は?中々良い感じだったはず。8切りして……

ふわっと鼻腔を傑の香りがくすぐる。少し甘い、伽羅の香り。「すぐる」と思わず名前を呼んで手を伸ばせば、大きな手が私の指を絡め取った。

「起きた?……ふふ、眠たいね。硝子も悟も部屋に戻ったよ。なまえはまだ寝てな」
「かたづけ、手伝う」
「ありがとう。でももう終わったよ。水飲む?」
「ありがと、のむ」


やっとの思いで目を開けると、暗闇に傑の姿がぼんやり浮かぶ。ベッド脇の床に座った傑が、ベッドに肘をついてこちらを見ていた。起き上がり、座り直してからペットボトルを受け取ると、そのまま私の足首に傑の手が置かれる。

「……なまえ、悟がいるのにショートパンツで来るなんて警戒心が足りないよね」

悟に足を撫でられてたの、気付かれてたか。冷や汗をかく私を察してか、咎めるようにスルスルとふくらはぎから太ももを撫でる傑の手が、あっという間にショートパンツを引き下ろした。

これは、傑、結構怒っているかもしれない。戸惑いや罪悪感よりも、怒った傑に対する邪な下心が頭をもたげる。怒った傑は意地悪でとってもやらしいのだ。そして私は、そんな傑がもっと見たくてたまらない。


「悟は、そういうんじゃないし、むしろ私は、傑がいるから履いてきたんだけど」
「へえ、私にああやって触られたかった?」
「傑には、もっとやらしい事されたいよ」
「……なまえ反省してないだろ」

眉間にシワを寄せた傑が、呆れたような顔をして私の足首に唇を寄せる。そのまま赤い舌先でチロチロと舐めたかと思うと、食べるみたいに歯を立てられた。

傑の口、大きいなあ、足食べられちゃいそう、とか考えていると、ふくらはぎを越して太ももまで到達した舌にベロリと舐められる。ちゅ、と赤い跡を付けられ、またがぶりと甘噛みを繰り返す。

「傑、歯立てるのなんか、ん」
「悟に触られた所、上書きしてるだけだよ。やらしい声出さないでくれ」
「っん、ね、そんなとこ触られてない」
「そう?……ここは?」


下着をスルリと下ろされ、足首を掴んで引き寄せられる。ベッドに座った私の足の間に傑の顔があって、背徳感と期待でお腹の奥が震えた。

「まだ触ってないのにすごく濡れてる。なまえ、期待してただろ。……舐めてほしい?」
「すぐる、いじわる。やらしい……」


いつもは私が見上げている傑の顔が、今は私を上目遣いに見つめてくる。触って欲しくて、舐めて欲しくて、たまらなくなって傑の髪に触れた。そのまま、ぐ、と傑の後頭部を掴み秘部に引き寄せると「変っ態だね」と嬉しそうに吐き捨てた傑の唇がぢゅっ、と先端を口に含んだ。

「あっっ、っ、んん、きもち、あ」

唇の柔らかい所で、秘部の一番敏感なところをやわやわと扱かれる。そのまま軽く吸われ、優しく舌先でつつかれると、あまりの気持ちよさに声を抑えることも忘れてしまう。

「すぐる、あ、ぁイッ、ちゃう、やば、」
「んー……早いね。いいよ」

くぷ、と傑の指が体内に入ってくる。唇と舌で秘部を舐めあげられながら、指で奥のイイ所を擦られるともう耐えられなかった。

「っあ、っ!ぅ……」

両足がびくびくと痙攣する。思わず傑の頭を掴んで達してしまったから、彼の髪を結んでいたヘアゴムが緩んだ。

立ち上がった傑は、緩慢な動作で緩んだヘアゴムをほどき、ぱさりと長い髪を下ろす。意地悪な顔で「気持ちよかったね」と笑うと、私に見せつけるようにゆっくりと服を脱いだ。引き締まっていて厚みのある彫刻みたいな身体に、綺麗な長い髪がアンバランスに映える。やっぱり傑は、とってもやらしい。


「なまえ、こっちにおいで」

うっとりと見つめていると、床に座った傑の上に跨るよう促された。早く入れて欲しくて、おあずけを食らっていた犬みたいな性急さで傑に跨り、首に腕を回す。キスをしようとした私の動きを察して、邪魔にならないようにと傑が自分の髪を耳に掛けた。

「あ、傑のその仕草すき。たまんない」
「そう?なまえの前でしかしないけどね」

ふふ、と笑う傑が愛おしすぎて、感情のままキスを落とした。唇を甘噛みし、上顎を舐める。そのまま私は腰を落とし、傑自身を体内に収めた。焦らすようにわざとゆっくり上下に動くと、傑のものが中でピクリと跳ねる。

「ん、あ、傑の、おっきく、なっ、た」
「っ…仕返しのつもりかな。後で後悔するよ」
「あは、すぐるがやらしいのが悪い、っあ!?」

小さく舌打ちした傑に両肩を掴まれて、お腹側のイイ所を抉るように動かれる。ごりごりと先端で押しつぶされると、頭の奥で火花が散る。激しくなる抽送と、傑の切羽詰まった吐息にたまらなくなり、思わず顔を下に向けると、ぬちゃぬちゃと大きな音を立てながら傑のものを咥え込む結合部が目に入った。

「んぁ、あぁ!やっ、すぐる、」
「ほら見なよ、私のが入ってるところ。こんなぬるぬるにして、どっちがやらしいのかな、っ」
「はぁ、むり、イく、あ、ぅあ!」
「いいよ。ね、なまえ」

傑はいつも、イクときにキスをしたがる。私の下にある傑の頬を両手で包み、深く口付けた。お互いを追い立てる水音が響く部屋で、ふたり息をはずませながら舌を絡めあった。気持ち良くて、気持ち良くて、髪も唇も何もかもがぐちゃぐちゃだ。

「ん、んん、ん、ぅう」
「は、なまえ、可愛い」

意識が飛びそうになるくらいの絶頂に震える私の体内から、傑のものがギリギリで引き抜かれお腹に精が散った。


溢れないよう身体を寝かせ、余韻に浸りながら呼吸を整える。いつの間にかティッシュを持ってきた傑が、私のおでこにキスを落としながらお腹の上を拭った。

「あ、おへそに入ったかも。ごめんね」
「うぇー、吸い出して!」
「良いけど、なまえの内臓が出ちゃったら困るな」
「傑のその発想なんか怖……」

そう?と言いながら傑が放ったティッシュは、綺麗な弧を描きゴミ箱に吸い込まれた。

「ヘイタクシー!ベッドまで」
「はいはい。しっかり掴まってて」
「ふふ」

頬にかかる傑の髪を、そっと耳に掛けてあげた。傑のこの姿を、間近で見られるのは私だけ。嬉しくなって広い胸にぐりぐりと頭を押し付けると、傑は優しく笑って頭を撫でてくれる。ふわりと傑から香る甘い伽羅の香りに包まれ、気を失うみたいに意識が遠のいていった。

「…好きだよ。おやすみ、なまえ」

私も大好き。おやすみ傑、そう言おうとしたけど言えなかった。遠のく意識の中で、傑の指が私の足を撫でる感覚が残って消えた。






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