Think of me!!*


とく、とく、と悟と私の鼓動が収まりつつある。温かい悟の腕の中で、激しい情事の後のゆるやかな時間に微睡みかけていた。
後頭部に悟の呼吸を感じながら、明日の任務のことを頭の奥から引っ張り出す。私は明日6時起きなのだ。自室で寝なくては。


落ちてくる瞼を無理矢理持ち上げて、名残惜しい悟の体温を振り払うために、身体を小さく伸ばした。起きあがろうとする私の気配を察知したのであろう悟がひしっと背中にへばりつく。

「だめ。やだ。無理」
「うわ、バレた」
「なまえー、今夜もここで寝ろよ」
「やだ。明日の朝早いもん、6時起きだよ」
「俺が起こしてやるよ。なぁ、行かないで」

だめ?と私の目を覗き込む悟は、その美しさが私に充分過ぎるほど通用することをすっかり分かっている。こうして悟に甘えられるとどうにも弱いのだ。
彼の透けるような青い瞳は、先程までの熱を孕みまだ潤んでいる。唇をきゅっと引き結び、小首なんか傾げてみせる悟は今夜も私を自室へ返す気はさらさら無いらしい。

「はぁ、タチわる……」
「そ?でも好きだろ?」

嬉しそうに私を抱き寄せて、子犬のように顔中にキスを落とす悟はいつにも増して甘えん坊だ。せめて少しでも反撃しようと悟の耳元に唇を寄せ「大好き、悟。」と囁くと、小さく息を呑んだ彼に覆い被さられる。

「オマエさ、明日の任務誰とだっけ」
「傑。覚えてるくせに」
「あ゛ーーームカつく。俺とは全然一緒にならねーのに」
「傑と私の術式は相性いいから。仕方ないよ」
「それもムカつくんだよ。俺も行っちゃおっかな」
「じゃあ傑と2人で行ってきたら?」
「それじゃ意味ねーだろ!!」

子どもみたいな顔でぶーぶー文句を言う悟が可愛くて可愛くて仕方がない。拗ねてたからいつもより甘えん坊だったのか、と合点がいって、彼の首に腕を回してわざと甘えるように微笑んでみる。私が悟に甘えられると弱いのと同じくらい、悟も私のこういうのに弱い、はず。


「悟とは任務じゃなくて、デートがいい」
「……なまえ、もっかいヤろ」
「え、え、無理」
「うっせ。オマエが可愛すぎるのが悪い」

むり、と言おうとした唇は悟の唇で塞がれる。
ふわふわの舌を絡められたり、ゆっくり口内を弄られると明日の任務のことなんか簡単にどこかへ飛んでいってしまう。
胸の突起をちゅぅと甘く吸われ、ゆるく噛まれると先程までの刺激と相まって腰が跳ねた。散々悟に暴かれた秘部は、再びの快楽を求めてとろりと愛液をこぼす。悟の指がそこに割り入ろうとしてぬるりと滑ると、彼が私の目を見据えていやらしく笑った。

「何が無理だよ。どっろどろじゃん」
「…さっき、したときの」
「嘘だね。…やっぱこっち。おい、脚もっと開けって」

秘部に割り入ろうとした指で、太ももを強く掴まれ脚を大きく開かれる。晒されたそこにすーすーとする冷気を感じて、濡れそぼっていることを改めて自覚して頬が熱くなった。
悟の舌がツツ、と秘部に滑った瞬間、強い快感に腰の奥が爆ぜたように痺れる。そのままどろどろに濡れているそこを舌で掬うように舐められると、絶頂の気配から爪先がぴんと伸びてしまう。

脚の間に目をやると、悟の伏せられた長いまつ毛が酷く扇状的だった。唇が私の秘部をなぞって、その赤い舌は快楽を与えようと艶かしく動く。
私の視線に気がついた悟が、こちらを上目に見る。わざと舌を出して、ゆっくりと全体を包むように舐め上げる様はあまりにいやらしくて、目を逸らそうとした瞬間に大きな快楽の波が私を飲み込んだ。

「っ、あ、悟……ぁ、も、いく」
「ん」
「ぁ、ん!ぅ」

びくびくと痙攣する腰を、悟の大きな手が掴み、性急に引き寄せる。
蕩けきった秘部に一気に悟のものが挿入されると、絶頂の狭間にあった秘部は悟の形が分かるくらいにぎゅうぎゅうと締め付けてしまう。

「ぅ、あ!い、きなり……ばか、ぁ」
「はっ、こんな締め付けといてよく言うよ。……やっば。きもちい」

ゆるゆると腰を打ち付ける悟が、私の首や胸元に唇を押し付ける。ちゅ、という音と共に、熱くなっては離れていく唇が私の皮膚に何をしているか気づいて、慌てて止めようとしてももう遅い。

悟の動きが激しくなって、原色みたいに強烈な快楽が頭と身体を支配する。余裕のなさそうな悟がギリギリまで引き抜いてから奥を何度も穿つと、ぐちゃぐちゃと2人の体液が混ざり合う音が響く。荒い呼吸がお互いの絶頂が近いことを教えた。

「あ、さと、るぅ、イく、っ」
「……俺も、イく。なまえ、」

絶頂のさなか、名前を呼ばれて悟の方を見ると深いキスを落とされる。唇も、身体も、頭も、全部が悟でいっぱいだった。
悟からのキスを辿々しく受け止めていると、お腹の上に熱い飛沫がかかったのを感じた。





「ちょっと悟、なにこれ……」
「俺のもんだってマーキング」
「だとしてもやり過ぎだよ、上着脱げないじゃん」
「脱がなくていーだろ。おい行くぞ。遅刻だけど」
「やば!!え、悟もくるの?」
「寂しんぼだろ?お見送りしてやるよ」

7時に正門集合のはずが、すでに7分過ぎていた。悟が昨夜信じられないくらいにキスマークをつけたせいで髪も結べないから、支度に時間がかかってしまった。ポニーテールにしちゃうのが一番楽なのに、悟の馬鹿のせいで。

大慌てで正門に向かうと、そこでは既に傑と補助監督が打ち合わせを終えていた。運転中に説明しますと告げ、車を取りに行った補助監督を見送る私の横で、悟が傑にじゃれついている。


「おはよ、傑。ごめんね遅刻して」
「おはよう。いいさ、どうせ原因は悟だろ」
「傑ぅ〜!オマエ、なまえに怪我させたら承知しねーからな」
「……ああ。なまえは私が大切に守るよ」

左肩に傑の手が掛けられ、強く身体を引き寄せられる。悟の目が大きく見開かれ、「ふざけんな!!」と叫んだとほぼ同時に傑にヒョイと持ち上げられ、そのまま横に着けられた車へと乗り込んだ。

「ちょっと傑、びっくりした」
「ごめん。あ、気にせず出発してください」

ごめんだなんて1ミリも思ってないくせに。運転席の補助監督へ淡々と指示する傑は心底楽しそうに微笑んでいて、コイツの性格の悪さを改めて痛感する。

「……傑ってそんな顔して中々性格悪いよね」
「そう?なまえを遅刻させたからね。仕返しだよ」
「見てよあの悟の顔。かわいそう」
「ふふ、最高に面白い顔だね」

任務から帰ってきたら悟のご機嫌直してあげなきゃな。窓から見える、この世の終わりみたいな顔をした悟に向けてせめてもの小さな投げキスをしてあげる。
「バカップル」と吐き捨てた隣の傑が、呆れたように笑った。





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