Mr.R man


ラジオから声が聞こえる。
名前を呼んでいる。
時々ノイズが走る。
けれどその声は、私の名前を叫んでいる。

行かなくては。

突如として胸に湧いた感情は行動に繋がり、行動は更に気持ちを高めた。
私を待っている。私が行かなければならない。
かつて私が始めた事だった。かつて私が終わらせた事だった。
それが今、私の及ばぬ所で意思を持ち動き出し、それでも尚私を必要として叫んでいる。
その声に応えられるのは私だけだ。私だけが彼らの声に応える術を持っている。
だから私は、行かなければならないのだ。
かつて私達の名を知らぬものはいなかった。かつて私達を恐れぬものはいなかった。
私達は強く、賢く、非合法な事をしてでもこの世の中を生き抜き統べていた。
あの日がくるまでは。
あの日が全てを終わらせた。
1人の年端もいかない子供によって私達は、私は終わりを迎えた。
これも運命なのかもしれない。
あの日、あの瞬間、最後の一匹が目の前で倒れていくのを眺めながらそんな事を考えた。
土埃をあげて地面に沈む最後の一匹、その向こうに佇む1人の少年。
あの私達が、誰の口からも囁かれる、まさに世の中を統べていたに等しい私達が、こんな少年に負けるなど。
これを運命としなければ、どう理解すれば良かったのだ。
そして私達は、私は、目の前で起こった運命をただ静かに受け入れた。
私は全てが終わったと思っていた。
だがどうだろう、あの日から月日が流れた今この瞬間、私が終わりと思っていた組織がまた再び私の前に現れた。
そして組織はまた私の名前を呼ぶ。
帰ってこいと、戻ってこいと、私の名前を叫んでいる。
だから私は行くのだ。
これもきっと運命なのだろう。
私達は今ここに再び、私達の名前を掲げるのだ。






ならば、これも運命なのか?

目の前で倒れていく最後の一匹。その向こうに立つのはあの日の少年と同じ目をした、少年。
また私はここで負けるのか。
また私はここで終わるのか。
また私達は終わるのか。
仲間たちが私を待っている。
なのに私は、行けないのか。
目の前がぐらりと歪む。
ラジオから聞こえる声が遠くなる。
踏み出す一歩が鉛のように重たかった。
それは、仲間のもとに向かえぬ気持ちからなのか。
まるで胸に空洞が出来たかの様な虚無感。
去り際に少年と目が合った。
力強い目は私をジッと見ていた。
私はこの目の持ち主にことごとく縁がないようだ、と笑いが込み上げてきそうだった。
ふと、別れた息子の事を考える。
離別するように別れたあの日、背中に聞こえた悲痛な声。
出来る事なら、アイツにはこんな目を持ったヤツと出会って欲しいと思った。
そして、私と違って縁を持って欲しいと思った。
1人で強くなると叫んだその隣に、どうか誰か佇んでいて欲しいと願った。

ラジオから声はもう聞こえない。
ロケット団は再び解散した。




END





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