「鉄線よ、我君を愛す(3)-8」





感情の起伏が薄い総悟の表情が驚愕に歪む。
総悟の顔は、大量の涙でびしゃびしゃに濡れていた。
その事に自分でも全く気づいていなかったのだ。

「うう・・・うぁ・・・・ああああ・・・・」
それに気づいた総悟の、今まで耐えていた感情の堰き止めが、一気に外れる。
大きくしゃくり上げて、ついに声を上げて泣き始めた。

「ううう、うう、ああああ、あ・・ひ、ひいっ・・・・うっ・・・と・・・・」
『十四郎様!!』
十四郎の名を、心で呼んだ。

たすけて。
たすけてくだせえ・・・。十四郎様!!

泣きじゃくる総悟を満足げに見下ろして、高杉が抑えていた両手を離し下半身に視線を落とす。
そこには未だ達することもさせてもらえず、ビクビクと小さく震える少年の陰茎があった。

「クク・・・俺が、押し出してやるよ」
ずいと総悟の腰を己の方に引き寄せ、足を大きく広げさせる。
膝を総悟の腰の下に差し入れて尻を浮かせてそのまま上を向かせる。

総悟のひっそりとした菊門が、高杉の目に晒された。
薄く色づく皺に中指の腹を当てて円形に摩擦してやると、入り口の肉が早くもぴくぴくと指を誘う。
カリ、とそこを爪で引っ掻いてみると、今度は尻が大きく震えた。

「こっちは随分仕込まれているらしいな」
総悟の下半身をふいに投げ出して立ち上がると、床の間の花台の上に置いた貝細工の香入れに似たものを手にとって戻ってくる。
再び総悟に同じ体勢を取らせて貝の蓋をずらせると、中の香油を指に掬い取った。
甘い香りがあたりいっぱいに広がる。
焚き染められていた香をも凌駕するほどの強い香りだった。

尻に冷たい感触を感じて、しゃくり上げ続けていた総悟が身じろぎをする。
「なに・・・」
無表情が崩れたその涙でいっぱいの顔に肩を揺らせて幾分優しい声で答える。
「安心しな、怪しい薬の類じゃねえよ」
言いながらもどろりとした黄金色の香油を総悟の菊門に塗りつける。
つぷりと中指を埋め込んで、一気に指の根元まで押し進めた。
「ひ・・・」
中で中指を折り曲げたり内壁を掻き擦ったり好きに動かす。ひくひくと蠢く内壁に笑みが押さえきれない。
「そうほしがるな、まだだ」
指を二本に増やしてまた押し込む。増えた圧迫感にいちいち反応する身体。
ぐいと広げては肉の窄まりに負けて閉じ、またぐいと広げては括約筋に押されて戻る。
それを数度繰り返して、最後に思い切り指を大きく開いた。
指の根元に力を入れて狭い穴を限界まで広げると、赤く熟れた肉壁が侵入者を待ち望んでいるかのようにひくついている。

一度指を引き抜いて羽織ったままの着物の袂を探ると、塗りの煙管を取り出した。
ぱくりと咥えて今一度総悟の穴に指を入れ広げる。
奥までは見えないが、内壁は腸液のようなもので既にずるりと濡れていた。
左手で目いっぱい穴を広げたまま、煙管を口からはずす。

「んぅ・・・う、くる、しい・・・」
ようやっと泣き止んだ総悟が、涙ながらに訴える。

「嘘つくんじゃねえ」
まったく表情を変えない高杉は、右手に持った煙管の吸い口の方から、総悟の後孔に差し入れる。
入り口は目いっぱい広げてあるので細い煙管は何の引っかかりもなく1寸半ほど進んだ。
だが、奥へ行くほど狭くなる孔。
すぐに煙管の吸い口が濡れた内壁に触れた。

「あ、ひあっ!」
途端に総悟の腰が跳ねる。

かまわずに煙管を内壁に引っ掛けるように極々軽く触れて出し入れした。
かり。
かり・・・。

「あ、あぎっ・・・あひっ!」
敏感な器官のごく一部のみだけを、くすぐる様に刺激されて頭がおかしくなりそうだった。
先ほど塗りこめた香油を、少しずつ掻き出すかのように、煙管を滑らせる。

「ああっ・・いや・・・いや!!」
「なんだ、物足りねえのか?」
繊細な刺激に、総悟の菊門と熟れた内壁は既に香油と腸液でびしょびしょに濡れて波打っていた。

「んは・・・は・・・」
煙管が総悟を擦るたびに侵入者を捕まえようと指を締め付け、尻穴の入り口はビクビクとヒクついた。
高杉は目を細めてそれを眺めた後、おもむろに指を抜いて煙管を奥までずぽりと差し込む。

「んぅっ・・・」
高杉が頭を上げて総悟の表情を覗き見ると、頬は赤く染まり涙の跡が顔中に広がっていたが、濡れた唇と情欲に染まった瞳が、高杉を怯えたように見下ろしていた。

外気に触れていた内肌が、細い煙管を包み込んだ事によって狂おしい程の焦燥感は治まった。
入っているサイズもそれほど圧迫感を感じない。

その煙管が、高杉の手によって、ぐるりぐるりと回される。
「・・・・っ」
人差し指一本で穴から出ている部分を上下左右に舵棒を操るがごとく動かしてやると、ある一点で、総悟の腰がガクガクと震えた。
「やっ、」

「おっ・・・と」
今にも達しそうになった総悟自身の根元をぎゅうと掴む。

「フン、つついただけで気をやりそうになるとはな。いくらなんでも慣れすぎだろう」
「や、、、やめ・・・」
「まあ待ちな、もうちーとばかり踊れ」
高杉は今見つけたばかりの宝の隠し場所を煙管でもって執拗に刺激し始めた。
「ああああっ!あはぁ・・・・はんっ」
途端に総悟の身体が跳ね上がり、身を捩じらせてなんとか高杉の手から逃れようとする。
尻の奥では容赦ない攻めが続き、陰茎の根元は強く締め付けられている。
行き場の無い快感が、まるで身体中を駆け回って総悟の脳にどくどくと送り込まれているようだった。

「や、やあ・・・あは・・・はあ・・・」

やがて、達したいが爆発できない苦しさから、ひいひいという嬌声を含んだ激しい息遣いだけを漏らすようになった総悟を尊大に見下ろして、高杉はずるりと煙管を引き抜くと、猛り狂う己の象徴をそこへ一気に突き入れた。

ぐう、と呻く声。
いきなり長大な怒張を押し込められたが、その痛みは返ってこれまでの快感よりも喘ぎを抑えられた。

「鳴け」

ずぽりと抜いてぐいと押し込まれる。
「ん、はっ・・・・」
身体の中心から穿たれた楔の痛みが這い登って来る。
はじめゆるゆると己の武器を慣らしていた高杉だが、次第に中を抉るように速度を速めた。

「ふっ、ふっ、ふ、ふあっ」
熱い塊が引き抜かれる度に内臓までも連れて行かれそうになる。
高杉の腰骨と己の尻がぶつかる衝撃で、陰茎がみっともなく跳ね続けた。

「いや、、、い、いっぱい・・・いっぱいに、なっ・・・」
「何がだ、何でいっぱいなんだ」
「ああ・・・いや」
強く突き続けながら高杉に問われるが、いつのまにか痛みが快感にすり替わっていることを認めたくなかった。

ぐ、と高杉が覆いかぶさる角度を深くして総悟の顎を下から押し上げるように掴んだ。
尻の中で高杉の欲望もより深く突き刺さり、総悟が呻いた。

「いいか、今お前の中を満たしているのは俺だ」
「あう」
「俺の名を呼べ」
「ああ・・・・」
「言え」
ゆさゆさと促されて掠れた嬌声が漏れる。

「あ、は・・・しん、すけ・・・さま・・・・晋助さまっ」
意識していなかった。
己の意思ではない声が喉の奥から絞り出される。

快感に悦ぶ己の身体が知らぬうちに己に代わって敵の名を呼んだ。
その声をどこか遠くの別の誰かの言葉のように聞きながら、総悟は強く高杉を締め付ける。

高杉の獣の射精を体内に受け止めながら、己もようやっと張り詰めた欲望をびゅるびゅると勢い良く吐き出した。






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