ブルーととザーメン




血液。医学用語でブルートというその言葉の語源はドイツ語。

精液。医学用語でザーメンというその言葉の語源はこれもドイツ語。



銀魂総合病院の名物ナース。男のくせに全身を色っぽいミニの白衣とナースキャップで包み、患者の誰もが憧れる弩級の美人、沖田総悟。

採血、血圧測定、処置から食事・入浴介助に至るまでドSドSに患者を扱い、沖田総悟に食介に付かれた日には、デザートのゼリーが患者の口に入ることはまずない。

それでもクレームの来ない、ドM心を刺激するその美しい瞳を持つナースのあだ名は「ブルート」。

三度の飯より血が好きで、採血の時などは針を刺してからわざと血管をさぐって痛がらせてみたり、手足を怪我して治療に訪れた者の血を見ては、ぞくぞくと嬉しそうな表情をするところから名づけられた。



その沖田ナースを朝から晩まで怒鳴りつけているのは、35歳の若さにして外科副部長にまで上り詰めた男、土方十四郎ドクター。

銀魂病院きっての切れ者と名高く、オペの迅速さと美しさはこの男の右に出る者はいない。土方派閥に属する真選医大卒の山崎などは、この男の言いなりで彼の執刀にはいつも対面に立って第一助手として補助している。

十四郎のオペはナースの誰もがオペ看護師に入るのを嫌う。
十四郎が最初から最後までナースを怒鳴りつけながら執刀し、器械出しを間違えようものなら術中であるにも関わらず理不尽に怒鳴りつけ手洗いナースを震えあがらせるからである。

故に大抵のナースは土方十四郎を嫌った。病院きっての色男である土方がオペ看を選べないのはその為である。
その土方ドクターに唯一器械出し助手として手洗いをすることができるのが、他でもないブルートだった。

このブルートにだけは口で敵わない土方十四郎。
ナースがドクターに逆らうことなどありえないが、何故だか十四郎はブルートにめっぽう弱い。
変わらず怒鳴りつけながらではあるが、スムーズにオペが進むのはブルートの器械出しの上手さか二人の息が合っているのか。

とにもかくにもこの病院の難易度の高いオペを執刀している土方十四郎を操っているブルートのことを、影の実力者とも呼んでいるのが病院関係者達だった。

その土方ドクターのあだ名はザーメン。

医者というだけでモテるにもかかわらず、更に不必要なこの色男ぶりを世の中の女性が放って置かず、一歩病院を出ると盛りの付いた猿のように目当ての女をとっかえひっかえつねに精液垂れ流しの生活を送っているからである。


ブルートとザーメン。
この病院の名物コンビであった。




× × × × ×



今日から銀魂総合病院に勤務するは坂田銀時。

今年35歳で定職にも付かず、便利屋などという職業に身をやつしてはきたが、ここらで一定の収入でも得ようかと清掃会社の面接を受けてみたら、そのガテン系でも通るかと思われる体格の良さを買われてすんなり採用になった。

そうして派遣されたのがこの銀魂総合病院だった。

ボサボサの銀髪をぼりぼりと掻くと、フケのようなものが床に落ちる。
これから掃除するのだからして気にはならない。

まずは事務棟から掃除してくれと言われている。
院長室、各部長室、事務長室、総看護師長室などいかつい扉が並ぶ廊下を、バケツやモップやゴミ箱がセットされた清掃カートをがらがらと押して歩く。

この男、グレーのツナギを着て眠そうな顔をしていた。

『そういやあ、ここの外科副部長さんはとんでもない節操なしの下半身をお持ちだって聞いたなあ・・・・。銀さん是非弟子入りしたいなあ』

そう思った銀時は、おもむろに外科副部長室の扉を大きく開けた。

「すいませーん、俺坂田銀時っつーんですけどお、タダで診てもらえませんかねー。俺35歳にしてなんだか最近この息子チャンが元気ないんすよねー。てか外科でいいんすかね、こういうの・・・・・」

言いかけて右手に持っていたモップをぼとりと床に落とす。



外科副部長室のものものしいデスクの向こうで、これまた革張りの高級チェアに座る白衣のザーメン。
そしてその上に腰までスカートをたくしあげて尻を丸出しにしたブルートが足を広げて跨っていた・・・・・のだ。

その、白いブルートの尻に、銀時が羨むほどにギンギンのモノが突き刺さっている。

銀時が声を掛けた瞬間、白いナースキャップと共に亜麻色のサラサラの髪が振り返って、元気のない息子が思わず元気になってしまうような冷たい瞳にぎろりと睨まれる。

ザーメンに至ってはこちらを見もしない。
何事も無かったかのように下から腰を突き上げて、ナースの尻にイチモツを激しく出し入れし始めた。


「ンッ、ンッ、ンッ、アウッ、ン、ンッ!!」







呆然と外科副部長室の扉に立ちつくす清掃員、坂田銀時。


哀れ次の日から、底意地の悪いブルートナースによって、「インポテンツ」(医学用語・語源はドイツ語)と呼ばれるようになるのであった。





(了)















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