ぼくのだいすきなせんせい!(最終回) H.23/07/04


すんませんねこんなんにお付き合いいただいて。おわります。パール様、挿絵が挿絵がすばらしい!!ありがとうございました。





みんなで さいしゅうかい編

(さかた)
えんちょうしつで、おきたくんが なにをしているのか ぜんぜん わかんなかった。
おおきな つくえの むこうの かべで、しらない おとこのひとに だっこ されてる みたいで。
よく みえないけど、おきたくんは くるしそうな こえを だして いた。

「は・・・はぁっ・・・・んぅ・・・・」

はあはあと かけっこで いちばんに なったとき みたいに いっぱい いきを している。
つくえに かくれていて からだの うえのほうしか みえない。

なにを しているのか わからない。

でも、でも。

おきたくんは、いやそうで・・・・いやそうで・・・それなのに、とっても きれい だった。

かわいい、かわいいって おもっていた おきたくんが。
きょうは、みたこともない かおを していた。ほっぺが まっかで、ながい まつげが ふるえて いる。

でも、おきたくんの かおが みえたのは ほんのすこしの あいだ だけで すぐに、もうひとりの おとこの ひとの むねに かおを うずめて しまった。

なんだか わからない けれど オレの ほっぺも あつくなって、むねが どきどき した。
このあいだ おきたくんの おっぱいを ちゅうちゅう したとき みたいに。

すこしだけ あいた えんちょうしつの どあの ところから、じっと おきたくんを みつめている。

なにもかも わすれて。

ここに なにしに きたんだっけ。
だれと・・・・・だれといっしょに・・・・・。

はっ、と きがついた。

そうだ、オレは、たかすぎと ひじかたの ふたりと いっしょに ここへ きたんだった。

よこを みると。
ふたりとも ごくりと つばを のんで、からだが かたまった みたいに じっと おきたくんを みつめていた。
さっきまでの オレみたいに。

たかすぎは、くちを あけっぱなしで、かおが まっかに なっている。
ひじかたの 手は、ぎゅっと にぎられて ぶるぶると ふるえている。

やっと オレが みていることに 気がついた ひじかたが はっと したように オレを みる。

「あ・・・・あ・・・あれ・・・なに・・・なに、してんだ・・・」
かすれた こえ。
ひそひそ ないしょばなし みたいに。
びっくり しすぎて こえが でないんだろう。

「た、たすけ・・・なきゃ・・・」
よこから たかすぎの こえが した。

そのとき。

「ああああああっああ!!!」

ひときわ、 おおきな おきたくんの こえが した。

みると、おきたくんは、びくびくと おおきく ふるえて、おとこのひとの むねに かおを あずけて、ぐったりと してしまった。

「い、いじめられてるんだ・・・そうご・・・」
すこし、ひじかたの こえの おおきさが もどった。

いけない!

なんとなく、なんとなくだけど、いま オレたちが おきたくんに みつかるのは いけないんだって おもった。

「も・・・もう・・・帰って、くだせぇ」
おきたくんの こえが きこえる。

オレたちは、はっと かおを みあわせて、あわてて きたみちを もどった。
あしおとが たたないように、そうっと あるいて、つきあたりの ろうかを まがる。

なんとか おきたくんには みつからなかったと おもう。








(とおしろー)
きょうしつに、もどった オレたちは、なんにも いわないで きょうしつの ゆかに すわった。

さかたも たかすぎも、おこったような なきそうな かおで だまっている。
きっと、さっきの そうごの ことを おもいだして いるんだろう。

そうごは、ないているような こえを だしていた。
いつも、じしんまんまんで、えらそうで、いじわるばっかりする あの そうごが。

オレは そうごの こえを きいて、かおが あつくなった。のども からからになって、どうしていいか わからなくなった。
それでも、そうごが いじめられているなら、たすけて やらなきゃって おもった。

どうして、あんな やつが えんちょうしつに いたんだろう。
めがねを かけて、とても いじわるそうで、いやなやつだった。
そうごを だっこしていて、すごく はらが たった。

さわるな。
そうごに、さわるな。

たかすぎは、目の はしのほうを まっかにして、なきそうに なっていた。
こいつも くやしいんだろう。
そうごが、あの おとこに とられてしまった みたいで。



そのひ、 それぞれの おむかえが くるまで、おれたちは なんにも いわないで ただすわって いるだけ だったので、やまざきが とても ふしぎ がって いた。




それから、なんにちかの あいだ、そうごは いつもどおり だった。
いつも どおり、いじわるで、かおだけは かわいくて。
でも オレは・・・・たぶん、さかたも たかすぎも あの日の そうごの かおが わすれられなかった。

きのうも おとついも そうごの ゆめを みた。
あのふたりが なにをしていたのか わかんなかったけど、とにかく 見ては いけないものを 見てしまったように おもった。


それから、オレたちは、さんにんのうち だれが いいだしたか わすれたけど、こっそり そうごを のぞき見 することに した。
とくに、えんちょうしつで ひとりで いるとき。
また あいつが くるかも しれないから。

いじめられるかも しれないから。


ある日、オレたちが おゆうぎの れんしゅうを しているとき、きゅうに よその組のせんせいが そうごを よびにきた。
そうごは いっしゅんだけ、まじめな かおに なったけど、すぐに いつもの ひとを ばかにしたような目に もどる。
せんせいに げきからせんべい組を たのんで、じぶんは きょうしつを でていって しまった。

オレたち さんにんは、かおを みあわせる。

ひょっとしたら、あいつかも しれない。

「せんせい!おしっこ!」
「オレも!」
「オレも!!」

やまざきが びっくりしたように こっちを みる。
「いやいやいや、おかしいよね、なんでそんないつもいつもおしっこって言うの??それも決まって三人一緒に。てゆーか坂田くんなんてさっき行ったばっかりだよねホントマジで」

「オレ、ひんにょう なんだ〜〜」
「ないから、その歳で頻尿とか、ないから。ちょっとまって、先生も行くからね。君達だけで行かせたら帰ってこないんだから!!」
いそいそと こっちへ やってくる やまざき。
むかついたので、オレは おもいきり やまざきの すねを けりあげて やった。

「いぃった!!土方くん!!いつも言ってるよね!人を蹴ったりたたいたりしちゃだめだって!」
「うるせえ やまざき、もれるから いってくるわ」

なおも オレを ひきとめようと した やまざき だったが、ちょうど たかすぎの こぶんの きじまが、おもらしを してしまったので、そっちに 気をとられた すきに、オレたちは きょうしつを ぬけだした。

いそげ。
ちょっと、てまどって しまった。

そうごが、そうごが いじめられて いるかも しれないんだから!!!








(たかすぎ)
オレは、いっしょうけんめい、ほいくえんの ろうかを はしった。

となりには、さかたと とおしろー。
どっちも きにいらねえ やつら だけど、しかたねえ。
せんせいが しんぱい なのは さんにんとも おなじ だから。

せんせい、このあいだの へんな おとこのひとが きたのか?
このあいだ、せんせい いじめられてた だろ?とおしろーが きっと そうだって いってた。

せんせい、ないてる みたいな こえ してた。
なかないでって、おれが まもって あげるからって、あのとき きめた のに。
このあいだ せんせいは ないてた。
しらない おとこのひとと なにをしているのか わかんなくて、こわくて あしが すくんで なにも できなかった。

まって、まってて・・・・。いま、オレが いくから!

めざすは えんちょうしつ。
オレたちはへやの まえで、はあはあと いきをしながら、かおを みあわせた。

ドアは きっちりと しまっている。
なかから、だれかの こえが きこえた。
おこってるみたいな、こえ。
でも よく きこえない。

とおしろーが せのびを して、そうっと ドアのぶを まわした。
10せんち くらいだけ あけた ドアの すきまから、 おにわの とーてむぽーる みたいに さんにん それぞれ のぞきこんだ。




すると。

やっぱり!
このあいだの いやな めがねの おとこのひとが、せんせいを いじめていたんだ!!

「知っているんだよ。もう意地も張っていられないくらいの状況なんだろう?あちこちの支払期限が明日にも迫っていることは調査済みなんだ」
ばかにしているような こえで せんせいに むかって いう。

せんせいは、なんにも こたえない。

「きみが意地になることで、お姉さんの保育園を潰す事になるんだよ」
せんせいの、いきをのむ おとが きこえた。

「ここからあぶれた園児達が、すぐに次の保育園に入所できると思うかい?君だってこんな風にあくせく働かなくたって、園長室に座ってふんぞり返っていられるようになるんだ」
「で、でも、保育料を支払えなくなる親だっている・・・・」
「僕がそんなに悪者に見えるかい?何もわざわざこんな借金まみれの保育所に金を出す必要なんかない。だけど、君が好きだから、君を助けたくてやってるんだよ」

のびを して みてみると、せんせいは 目を ふせて くびを ひだりしたに むけて、あいての ほうを みないように していた。
ないてない。
ないてないけれど、おれには せんせいが いまにも なきそうな かおを している ように みえた。
それに、すこし ふるえているみたいだ。

「さあ、決めてくれ給え。僕だって暇じゃないんだ、これが最後のチャンスだよ」

せんせいは、いつもと ぜんぜん ちがう よわよわしい たいどで おとこのひとを みあげた。
なにか いおうとした せんせいのくちを、おとことのひとが おさえる。

「フフ、今まで待たされたんだ。YESというなら、かわいらしくお願いしてもらうよ」
ぴくりと、せんせいが うごいた。

「さあ言って。『お願いします、助けてください』って、言うんだよ、沖田君」

「いうわけ、ない」
ぼそりと、あたまのうえから こえが きこえた。
おれの すぐうえ から なかを のぞいている、とおしろーが こわいかおで つぶやいたのだ。

そうだ、せんせいが あんな いやなやつに おねがい なんて するわけがないんだ。
そう おもった のに。
あの、いつも いじわるで えらそうな せんせいが・・・・・・・。
ちいさく ふるえたまま、すわっていた いすから たちあがって、ゆっくりと あたまを さげたんだ!!!!!

「ッ・・・・・お・・・願い・・・だから・・・・この、保育所を、た・・助けてくだ、せえ」

! ! ! ! ! !
びっくりして こえも でなかった。
だって。
だって。

あんな・・・ あんなせんせい、みたくなかった。
まさか せんせいが あんな いやな ひとに おねがい する なんて!!
オレは どうしてだか わからないけど、せんせいが ぺこりと あたまを さげた とき、むねが もやもやして、きもちわるく なってしまった。
目を けが した とき だって、くらくら したけど こんなに むかむか しなかった。
うえを みると、とおしろーも なきそうな かおで くちびるを ふるわせて いる。
さかたは・・・・もうひとつ うえなので、よくみえないけど・・・・。

「だ・・だから・・・お願いだから・・・今のまま・・今のままの赤唐辛子保育園として・・・援助・・・してくだせえ・・」

「フフ・・・・ようやく素直になったね、かわいいよ、沖田君」
こつん、と いっぽ せんせいに ちかづく おとこのひと。
くすり、と きこえて。
「だけど、それは無理だ」

おれたち みたいな えんじにだって わかるくらい つめたい こえ。

「それはね、みすみすドブに金を捨てる様なものだ。保育園は経営だよ、君だって霞だけを食べて生活するわけにはいかないだろう?だからこそ今困っているんだ。さあそんな頑なな考えは捨ててしまって、理想の保育施設を一緒に実現しようじゃないか」
そういって、いきなり もういっぽ おおまたで すすんで、せんせいの うでを つかまえた。
せんせいの あごを もって、かおを ちかづける。

「あ」
「あ」
「あ」

オレたちは びっくりして うごけなく なってしまった。
だって。
だって。

おとうさんと おかあさんが いってらっしゃいのときにする・・・・よいこに してたら おかあさんが ほっぺに してくれる・・・・・いつか オレも おきたくんに したいと おもってた・・・チューを・・・。
したんだもの・・・・・・。

「やっ・・やめろっ・・」
どん、と おとこのひとの むねを おして、せんせいが さけぶ。

とおしろーが へやに とびこもうと ドアの すきまに 手を かけた。
だけど、
「しっ」
といって、さかたが とおしろーの ふくを つかむ。

オレは・・・・オレは・・・・せんせいが あんなひとに ちゅーされるなんて・・・ものすごく いやで・・・。
いやでいやでいやでいやで しかたなくて・・・・。
ぼろりと、なみだが こぼれた。

きがつけば、さかたが とめるのも きかずに、オレは おおきな さけびごえを あげながら、りょうてを ふりまわして、えんちょうしつに とびこんでいた。





(沖田総悟)
「うわああああああん!!!!!せんせいを、はなせえっ!!!」

いきなり、声が聞こえた。
ハッとして、伊東から離れる。

見ると、高杉が泣きながら伊東に飛びかかっているところだった。

見られた・・・・・・!!!!!!
どこから・・・どこから見ていやがった・・・・!?

高杉を追って、土方と坂田が園長室に入ってくる。
無意識に、唇を拭って。

高杉の小さな身体を伊東から引きはがした。
「コラ、やめろって・・・・」

俺の腕の中でばたばたと暴れる高杉。
「はなせっ・・はなせえっ・・・せんせいを・・いじめるな!!」
「そうだ!そうごに さわるんじゃねえ!!」
「おきたくん、だいじょうぶ?」

あああ、滅茶苦茶だ。

「い・・伊東さん、すいやせんが、帰ってくだせえ」

呆れた様にガキどもを眺めていた伊東は、フンと鼻で笑う。
「とんでもない躾の悪い子供達だね、まさに再教育が必要だ・・・・」
高杉が蹴りかかったパンツの裾をハンカチで拭って、ゆっくりと顔を上げた。

「仕方無い、今日も退散するとしよう。でも、わかっているよね?そうそう返事を待ってはいられない、自転車操業のこの保育園だってそうだろう」
にやりと口の端を上げて笑うと、何も言えない俺を残して伊東は踵を返した。

あとに残るは、どうしようもねえガキども。
「うるせえ!おきたくんに にどと さわるんじゃ ねえ!」
坂田が園長室のドアまで伊東を追いかけて行って、伊東の背中に罵声を浴びせた。
なんにでも本気になるようなことが無かったガキなのに、すげえ目をしている。

土方はぎゅっとスモックの裾を握って、怒りに震えるように押し黙っていた。

高杉は・・・俺の腕の中で泣きじゃくっている。
「なんで・・・なんで、せんせい・・なんで・・・・・」

俺は、高杉の頭をそっと撫でた。

見られてしまった・・・・・。
一番ガキどもに見せてはいけなかった姿を。
あんな・・・・あんな、金の為にクソ野郎に頭を下げる姿を・・・・・。
こいつらには何のことかわからなかったとは思うが、今この場面を見せたことが、こいつらの教育にいいわけがなかった。

「・・・・・そうご・・・。あいつ・・あいつ、だれ なんだよ」
眉をギュッと寄せた仏頂面のまま、土方が俺を睨み上げて言った。

「だれ・・・・・って・・・・お客さんでィ・・・」
「おきたくんは、おきゃくさんと ちゅーするの?」

う・・・・・・。

「なにしてっ・・・ひっ・・・なにしてた・・・んだっよ・・・せんせ・・・っ・・いやがって・・た、じゃねえ、か・・」
オレの腕の中で伊東につっかかって行った勇敢なガキがしゃくりあげながら言う。

オレはエプロンからタオルをとりだして、ごしごしといささか乱暴に高杉の顔を拭いてやると、さっと床に下して手を腰にやった。
「ど、どうでもいいだろ!ちょっと喧嘩してたんでィ!てめーらいいから教室戻れ!!抜け出しちゃだめだっていつも言ってるだろーが!!」
オラオラと三人のケツを軽く蹴りながら園長室から追い出して、ドアを閉めた。
閉めてから思い直して高杉を小脇に抱え、土方と坂田の手を両手に引いて教室まで引きずって行った。

「お前らが抜けだしたら残ってる先生が困るんだろーが!ルールも守れねえやつが人のことにあれこれ口出すなんてちゃんちゃらおかしいぜィ!!」
教室に3馬鹿を放り込んで園長室に戻る。

「あれ?帰ってきたんじゃないんですかあ?」
という山崎の間抜けな声を背中で聞きながら・・・・・・。









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