ぼくのだいすきなせんせい!(1) H.23/06/22


(高沖)沖田さんが保育園の先生です。
たかすぎしんすけ編。なんとなんと豪華に挿絵はパール先生です。画像サイズの為に読み込めない人は・・・がんばってスマホかPCで読んでください。




1)たかすぎ しんすけ

オレのなまえは、たかすぎしんすけ。
あかとうがらし ほいくえんに かよっている。
とうがらし、だって。へんな、なまえ。

オレは、げきからせんべい組さん。
らいねんは しょうがっこうにはいる、おにいさん組だ。
だけど、うちの組のせんせいは すっごいいじわるで、むかつくやろうだ。

なまえは、おきたそうご。
まだこどものくせになまいきなやつで、じゃっかん21才だってのに とてもえらそうなのだ。


かみのいろは、茶いろで さらさらしていて オレとおなじくらいのながさ。
すらっとしてて、いまはやりの あいどる くらいかわいい。いやもっとかわいいかも。
いやいや、オレはかわいいと おもってないけど、ほかのみんなが そういう。
とくに ぎんときなんか、いつもいつも かわいいかわいいって すごくうるさい。




「おーう、テメエら、布団敷いてやったぞー、早く寝やがれ〜」
おひめさま みたいに かわいい かおなのに、ぼうりょくだん みたいな ことばづかい だ。
きれいな ことばを つかいなさいって、しょうようせんせいも いってた。
しょうようせんせいは、オレが まえに かよっていた ほいくえんの せんせいで、とてもやさしくて だいすきだった。
だけど、とつぜんしょうようほいくえんは おしまいになって、こんなわけのわからない なまえの わけのわからない せんせいがいる、へんな ほいくえんに にゅうえんさせられた。
おかあさんが いうには、しょうようほいくえんは、おかねがなくって おしまいになったんだって。

まわりはしらない こ ばっかり。

おきたそうごは、ふとんの うえで かけまわって おとなしくしないオレたちを、つぎつぎに あしばらいをかけて ころばせた。
そうして ものすごく こわいかおで
「おめぇら、3秒で寝ねえとぶっ殺すからなァ」
なんて、うれしそうに いった。

むかつく!なんてむかつくやろうだ!!
だけど しっかり めをつむっていないと、めのまえに ものすごくこわい おばけの絵をおしつけられるので、とても めを あけていることは できなかった。
ぎんとき や とおしろーなんて、おばけの絵にびびって、ぎゃあぎゃあ さわいで うるさいったら ない。
おれは、こわくないけど、おひるねのじかんは ねなきゃ いけないので しかたない。

さいていの、せんせいだ。
おれの せんせいは、しょうようせんせい だけだ。
ぜったいに、「せんせい」なんて よんでやるもんか。












きょうは おすなばで おあそびだ。
オレは、ばけつに おみずを くんできて、すなにかけて おおきな おふねを つくっていた。
すごい、かっこいい。おれが、せんちょうだ。

おきたそうごが ちかよってきて、
「何だお前、そういうの作るのうめえじゃねえか」
なんて いった。
フン。てんすう かせごうったって、そうは いかない。
オレは へんじをしないで、プイと むこうを むいた。ざまあみろ。

おきたそうごは それいじょう なにもいわないで、こんどは とおしろーのほうへ あるいて いった。
「なにそれ、なにそのイモムシみてえなの」
「まよねーずだ、わるいか」
「だっさ」
おきたそうごは、ようじの こころが きずつくようなことばを、あっさりとあびせている。

とおしろーはきにいらないやつだが、あれはひどい。
おれは、おきたそうごを こらしめてやることに、した。

ちゃんすは、すぐにやってきた。
おすなばで あそんでいるあいだに、こっくりこっくりとおねむになってしまったしんぱちに、もうひとりのせんせいの やまざきさがるが かかりっきりになる。
そのとき、ぎんときと とおしろーが いつものとおり けんかを はじめた。
いつも けいむしょの みはりばん みたいに めをひからせている おきたそうごが、あのふたりの くびねっこを つかまえて しかりつけている。

いまだ。

オレは こっそりと おすなばを ぬけだして、ひろい ほいくえんの おにわの はしにある木に するするとのぼった。
ここなら そうかんたんに みつからないだろう。
そうおもった しゅんかん。

「だーれが砂場から出ていいって言ったぁ?高杉ィ。おまえ10秒以内に降りてこねえと尻ひっぱたくぞ」
おきたそうごの こえが、木のしたから きこえた。
オレは ちょっとだけ びっくりして、はっぱのあいだから したをみる。
そうすると、おきたそうごの まっかな おにみたいな目が、オレを みていた。

ここで びびっては いけない。
「だれが おりるもんか!おまえなんか せんせいじゃ ねえもん!オレいうこと きかねえからな!」
「ああっそ、じゃあ今からおやつだけど、お前の分俺が食うから。なんならお前の子分のまた子の分も食うから。今すぐ降りてこねえと明日の分も明後日の分もねえから。卒園するまでずっとお前のおやつ食うから」

ひ、ひきょうもの ひきょうもの ひきょうもの!!!!!
オレはぐっと くちびるを かんだ。
オレの おやつは オレのだ!

オレは なんとかして おきたそうごを ぎゃふんと いわせようと かんがえた。
すると、オレがいる えだの ちょっと上に、大きな けむしが いるのを みつけた。
そうだ、これを おきたそうごに なげつけて やろう。
あいつは おんなみたいな かおをしているから、きっと けむしが こわいんじゃ ないかなと おもったんだ。

オレは いっしょうけんめい からだを のばして けむしを とろうとした。

すると、おきたそうごが きゅうに 大きな 声を だす。
「バッ、バーロィ、大人しくしてろ!あぶねえだろうが!」

オレは、こいつが こんなに あわてたところを はじめて みて、うちょうてんに なった。
きっと けむしが こわいんだ。だから オレに あんなこと いうんだ。
いよいよ やっきになって けむしをとろうとした。
みぎ手で きの みきを つかんで、ひだり手を ぐいと のばす。
もう、ちょっと・・・・。

「やめろ!やめろったら!待ってろ、今からいくから仕様もねえ事しねえでじっとしてろィ!」
おきたそうごが 木のみきに 手をかける。

やっと オレのひだり手が、けむしのいる えだを つかんだ。
ぐいい・・・と オレのかたのところまで えだをひっぱって、みぎ手をはなして けむしをとろうとした、そのとき。
ささえがなくなって ぐらりと オレのからだが ふらついた。
もちろんオレは おちないように ぐっとあしをふんばった。だけど そのとたん、ひだり手で にぎっていた えだを うっかり はなしてしまった。
いっぱいに しなっていた えだは すごいちからで びゅんと、もとのばしょに もどっていった。
そのとき、オレの ひだり目が ものすごいしょうげきをうけた。
きのえだが、オレの目を えぐっていったんだ。

もちろん そのときは そんなことは わからなかった けど。
オレは、あまりの しょうげきに、びっくりして あしを ふみはずして しまった。
おきたそうごの ひめいのような声が、きこえた。

でも、あとは なんにも わからない。

目が、ひだり目が、ただ あつくて。

あとは なんにも、わかんなかった。



 












目が さめたのは、びょういん だった。
ひだり目が まっくらで なにも みえなかった。
さわってみると、ほうたいが ぐるぐると まいてある。
ふと よこをみると、おきたそうごが 目をはらして、ぼろぼろと ないていた。
しんじゅのような なみだを いっぱい こぼして。

「高杉ィ・・・・・ごめんな・・・俺、ごめんな」
そういって、オレのことを ぎゅっと だきしめた。

おれは なんだかしらないけど、むねが どきどき した。
おきたそうごは、とっても いいにおいが、した。

そのとき、ドアが がちゃりと あくおとがして、おとうさんが はいってきた。

「晋助の父親の万斉でござる。母親は今実家に帰っておりまして、今こちらに向っておるところでござるよ」


おきたそうごは、なみだにぬれた かおを はっとあげると、おとうさんの かおを じっと みながら、ゆかに 手を ついた。
「すいやせんでした。俺がついていながら、晋助くんに取り返しのつかない怪我をさせてしまいやした」
そういって、ふかくふかく あたまを さげる。

おれは、とうとう おきたそうごを ぎゃふんと いわせたのだ。
いつも えらそうにしている おきたそうごが、ひとまえで ゆかに あたまを つけている。

それなのに、オレは なんだか むねが くるしくて しかたなかった。
さっきの いいにおいと、しんじゅみたいな なみだが、ずっと あたまのなかに のこって いた。

「顔を上げるでござるよ、晋助は確かに左目が見えなくなりましたが、元はと言えばこいつが悪かったでござる。先生は木から落ちた晋助を受け止めて下さったんだから、命の恩人でござる」
おとうさんは とっても おだやかに おきたそうごに はなしていた。

おきたそうごは、まだ なみだを ながしつづけて いる。
目なんて、ふたつ あるんだから たいしたこと ないのに。

おきたそうごが ないたら、おれも かなしく なってきた。

なくな。

なかないで。

なかないで、せんせい。


おとうさんが、にゅういんの てつづきに いっているあいだ、せんせいは、じぶんの はなしを してくれた。
せんせいも、ほいくえんの ときに、だいすきな せんせいが いて、そのせんせいに あこがれて せんせいに なったんだって。
その はなしを しているときの せんせいは、とっても きらきらしていて、やっぱり てれびに でている あいどるなんかより ずっとずっとかわいいと、オレはおもった。



いっしゅうかんご、ぶじに たいいんした オレは、ほいくえんに いった。

ほいくえんの まえで いつもの まつだいらの おっちゃんが、あ〜おしんごうだぞ〜〜と いって、ハタをふった。




ひだりめは、がんたい。
こんなの、なんてことねえ。みんな「いたかった?」なんていって オレのまわりに あつまってきて、オレはなんだか とくいに なった。

それよりも。
オレは せんせいを さがした。

にゅういん しているあいだに かんがえたんだ。
オレ、もうせんせいを なかせない。
なかせないし せんせいを なかせるやつは ゆるさない。

せんせいが なかないように これから ずっと オレが まもって やるんだ。
せんせいを オレの およめさんに することに、きめたんだ。

でも まずは、せんせいの ことを「せんせい」って よんであげないと・・・・。

せんせいは、ピアノの よこに たっていた。
オレは、かばんを きょうしつの うしろの ロッカーにいれて、せんせいの ところへ あるいて いった。

そうして、しんこきゅう して。
ゆうきをだして、はなしかけた。

「せんせい、お、おはよう」

せんせいは、びっくりしたようにオレを見て、それから おにわの お花みたいに にっこりとわらった。
そうして、
「高杉ィ、お前まだ来ねえと思ったから、お前の今日のおやつ、俺が食っちまったィ」
なんて いいやがった。

とにかくオレは、せんせいって よべて だいまんぞく だった。
せんせいを およめさんに する、だいいっぽは くりあー したのだ。

ところが。

オレが いっしょうけんめいに なって はーどるを こえたというのに、もっともっと たかい はーどるを いともかんたんに こえるやつが、いた。


「そうご!!!おまえ オレの まよねーず かくした だろう!かえせ バカヤロー!!」

うしろを ふりむくと。

とても えんじとは おもえない、ひとごろしのような目をした ひじかたとおしろーが ぎりぎりと せんせいをにらみつけて いた。






たかすぎしんすけ編
(了)→ひじかたとおしろー編に続く



  




















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