「我儘なカンパネルラ(15・完)2」 |
「せ・・・・・」 低い、声。 「そ・・・ごを・・・・・離せ」 この声は・・・・・・。 ガタン、と音がした。 ふ、と俺を押さえつけている力が緩む。 「総悟を、離せ!!!」 自由になった頭を捩じって、まだくらくらする視界に顔をしかめながら声のした方を見る。 そこには。 車椅子から落ちて・・・いや、降りて、がくがくと膝をつきながらも、這いつくばって俺達の方へやってくる、銀時がいた。 「ぎ・・・・銀時!!!!」 ああ・・・・・ああ・・・・・銀時!!!! 銀時の表情はしっかりとしていた。久しく見ていない、知的な光を湛えたえんじ色の宝石のような、瞳。 「総悟・・・・」 「銀時!銀時!俺の事、わかるの!?」 ドン、と山崎を押しのけて銀時の方へ行こうとする。 その俺の足を、山崎がずるりと引いた。 「まさか・・まさかの展開ですよ・・・・アハハ・・・・まさか、銀時さんが正気を取り戻すとは、ね」 よろよろと立ち上がろうとする銀時。 ずっと足を使っていなかったから何度もがくりと膝をついた。 だけど毎日毎日リハビリの為に俺は銀時の身体中を何時間もかけて動かしていた。 ついに、銀時がぐらぐらとしながらも立ちあがった。 一年間も車椅子に座っていたのに、美しい筋肉は落ちてしまっていない。 均整のとれた男らしいスタイルに、涙が溢れた。 銀時・・・銀時だ。 つんのめるように俺の方に1歩、2歩と近付く。 銀時を抱きとめようとした俺の肩を、山崎が掴んだ。そうして、俺を越えて銀時の方へ身体を向けた。 手には、あのジャックナイフ。 や・・・・やめて・・・・・・。 銀時は・・・長い・・・長い暗闇を耐えて・・・・・、今やっと光を見たんだ。 恐ろしい、、そんな恐ろしい物を銀時に向けないでくれ。 山崎がナイフを振り上げるのと、銀時がよろりと山崎に向って倒れ込むのが同時だった。 ぎらりとした凶器が銀時の胸に突き下ろされる。 銀時は、倒れ込みながらも、一度目のその攻撃をかわした。そして、山崎に抱きつくようにして二人折り重なって地面に倒れた。 「総悟に・・・・さわる・・・んじゃ・・ねえ」 「銀時!!!!」 俺は、銀時が正気を取り戻したのと、山崎が銀時に襲いかかったショックで腰が抜けたみたいになっていた。銀時の前にずりずりと這って行く。 山崎の上に覆い被さっている銀時が、顔を上げた。 俺の方に手を伸ばす。 「総悟・・・・」 「銀時!」 涙で、銀時の顔が良く見えない。 もう少し、もう少しで銀時の手に触れる。 そう思った瞬間。 どす。 という音がして、銀時がビクリと硬直した。 目は大きく見開いて。唇がぱかりと開いた。 「う・・・・・お・・・」 エビのように背中を丸めて山崎の身体の上から転げ落ちる。 銀時は、両手を左の脇腹にあてていた。 銀時の両手からは、どす黒い血がだらだらと流れ落ちている。 「や・・・・いやだ・・・・・嫌・・・・・・嫌だ!銀時!!!」 俺は、腰が抜けたまま、必死に銀時に手を伸ばした。 届かない・・・・。銀時に届かない・・!! 「う・・・・くそ・・・・ぐうっ・・・・・・あ・・・・」 銀時はそれでも倒れたりしなかった。 血走った眼で山崎を睨み上げると、ぐいと膝をついてぐらりと立ちあがる。 ぐら・・・ぐら・・・と左右に揺れながら、山崎に向って一歩足を踏み出した。 ぼたり、、ぼたりと血が流れ落ちる。 やめて・・・それ以上動かないで・・・・!!! ぐい、と銀時が山崎の胸倉を掴んだ。 肉弾戦に慣れていない山崎は咄嗟に応戦できなくて。 銀時の渾身の拳を受けて文字通り吹っ飛んだ。 銀時も体重を乗せて殴った為に、よろりとつんのめって前向きに地面に倒れ込んだ。 山崎を見ると、一発KOで完全にのびているようだった。 「銀時!銀時、大丈夫!?」 俺は急いで銀時のそばまで膝でいざって行った。 慌てて銀時の上半身を抱え上げて俺の膝に乗せる。 「総悟・・・・・」 銀時の腹を見ると、俺が刺した男なんて比べ物にならないくらいの血が流れていた。 「や・・・・いやだ・・・銀時・・・・・」 やっと会えたんだ・・・。やっと本当の銀時に会えたんだ。 神様!銀時を、連れて行ったりしねえで・・・・!!! 後から後からとめどなく涙が溢れる。 「総悟・・・・顔、、、見せて・・・・・・・」 優しい優しい俺の大好きな銀時の顔。 「泣いて・・・たら・・・よく、見えないよ・・・総悟の、顔」 「ひいっ・・・・・・ひぐ・・・・・ぎん・・・・・」 「ああ・・・でも・・・俺が・・・俺がずっと総悟のこと、泣かせてきたんだよな」 小さく笑う。ゴホゴホと急にむせてしばらく咳き込んだ。 「俺ね・・・俺・・・・総悟のことが一番好きだった。誰よりも・・・誰よりも。俺は生まれてからずっと世の中を恨んでた。俺を捨てた父親も、俺を疎んじた母親も、何不自由なく暮らしていたという兄のこともすべて。だけど、だけどね。総悟だけは、可愛くて仕方無かった。俺は総悟の為ならなんでもしてやりたかった。でも、総悟はあいつのことしか見ていなかった。それが、悔しくて・・・・・。どうやって・・・・総悟、の・・・・ことを・・かわい、がっていいか、わからな・・・く、なってしまった」 途中から銀時の声は小さく弱々しくなっていった。 「もう、しゃべらないで・・・・しゃべらないでくだせえ・・・銀時」 銀時は震える手で、胸ポケットから何かを取り出した。 例のキーケースだ。 キーケースを開くと、キーホルダーの列の内側に、チャックがついていた。そのチャックを長い指先がゆっくりと降ろす。 そこには。 ああ!そこには、ぼろぼろになった、俺のあのお守りがそっと入れられていたんだ!!!!! 「ぎん・・・・・き・・・・」 もう、しゃくり上げすぎて、話す事もできなかった。 俺の、俺のお守りを、銀時は大事に持っていてくれたんだ・・・・・・。 「これ・・・返さないといけないって、ずっと思ってた・・・。だけど・・・どうしても手放せなかった・・・」 俺のとめどない涙が、銀時の頬にぼたぼたと落ちる。びしょびしょになった頬とは裏腹に、銀時の唇はかさかさと水分を失っていた。 「最後の、お兄ちゃんの・・お願い・・だ。・・・これ、俺にくれない・・かな・・。総悟の、たい・・せつなモンだって、わかってる、、けど・・・、俺に・・・くれねえか?」 あげる・・・・あげるよ!銀時!!!! 俺のものなら何でもあげる!!!! 「・・・・・っから・・・・・・だから・・・・・し・・・・死なないで・・・・・銀・・・・銀時・・・・!!!」 お守りを握る銀時の指に力が入るのが分かった。 「そ・・ご・・何が・・・あっても・・・強く・・・・」 最後まで銀時は、言えなかった。 ごほ、と大きく咳き込んだ後、銀時の瞳は急に焦点を失ってがくりと首が折れる。 銀時は、もう目を開けていなかった。 「いや・・・・嫌だ・・・・嫌だ!!!あああ・・・うあああああああぁあああああああ!!!」 俺は、狂ったように泣き叫んで、銀時をめちゃくちゃに抱きしめた。 こんな・・・・こんな一瞬だけだなんて・・・・・。 こんなの嫌だ。 俺、銀時にまだ何も言ってない。 ずっと俺の事苦しめて・・・・恨んでますぜって言って。それから、土方さんと俺、今愛し合ってるんだって・・・・それを報告もしていない。 なんで・・・どうして・・・・どうして銀時が・・・・・こんな・・・・・。 この人は、これまで生きて来て、幸せだったことはあるんだろうか。 ずっと孤独で人を恨んで、誰にも愛されず暮らしてきたんだろうか。 そんなの、悲しすぎる・・・・・。 銀時を抱きしめたまま、泣き続ける俺の背後で、がさり、と音がする。 頭の隅で、危険信号が鳴っていたけど、今の俺は何もかもどうでもよくなっていて。 ただ、銀時の温もりを、この手に感じていたかった。 「沖田さん・・・すぐに・・・すぐに貴方も後を追わせてあげますよ」 さり、と土を踏みしめる音が聞こえる。 「銀時・・・・銀時・・・・」 俺は、銀時の頭をぎゅうと抱きしめた。 1年、1年だ。ずっと銀時が元に戻るのを待っていたのに・・・・。 こんな。こんな・・・・・。 山崎が背後でナイフを振り上げるのが分かった。だけど、俺の身体はもうぴくりとも動かなかった。 今、銀時を離してしまったら、次に触れた時はもう冷たくなってしまっているかもしれない。 銀時の顔の上に落ちる俺の涙は、まるで銀時が泣いているかのように、兄の頬を濡らした。 「さようなら、沖田さん」 次にくる衝撃に備えて、俺は瞼をしっかりと瞑った。 だけど。 予想した痛みはいつまでたってもやってこない。 不思議に思って俺は銀時を抱えたままゆっくりと後ろを振り返った。 そこには。 怒りに燃えた表情で山崎を締め上げる、俺の大好きな、俺だけの黒豹が、いた。 「テンメェ、俺があのヤローの運転手なんて最初で最後だぞ」 ぽかんとする俺の後ろから、高杉の声が聞こえた。 チャリ、と自慢のロードスターのキーを指で回しながら言う。 俺は、夢みたいなタイミングで現れた、鬼の帝王が、山崎をめちゃくちゃに殴っているのを呆然と見つめていた。 「無視かよ!!!」 高杉が、銀時の様子を見ようと俺を押しのける。 自失状態でこの奇跡を見つめていた俺だけど、急に意識が戻って来た。 土方さんは、我を失ったみたいにめちゃくちゃに山崎を殴りつけていた。山崎は顔も身体もボコボコに殴られてもう息も絶え絶えだ。 「や・・・やめて・・・駄目だ!土方さん!山崎が死んじゃう!!」 俺は、まだ抜けたまんまの腰をひきずりながら、土方さんに近寄って、山崎を殴りつけている足にしがみついた。 殺しちゃだめだ・・・土方さん! 「離せ!総悟!こいつは銀時をあんな目に合わせて、お前を・・・お前を・・・・・」 「駄目だ!!!お願いでさ!土方さんに、人殺しなんかさせたくねえ!」 「こんぐらいで死ぬか!!」 必死になって俺が土方さんの腰に縋りついたら、やっと土方さんの暴行は治まった。 はあはあと息を乱す暴君。 山崎は・・・・・とっくに顔が腫れあがって意識も無く、本当にあと一発でも殴ったら死んでしまいそうな状態だった。 ひぐ・・・・と涙が込み上げる。 「ごめん・・・ごめんな、山崎・・・・。いたかった・・・だろィ」 俺のせいなのに。 全部、俺のせいなのに、こんなになるまで殴られて。 「泣くなっつてんだろ、いつも」 俺の頭の上から、偉そうな声が聞こえた。 見上げると。 いつも・・・いつも俺の為に一生懸命で、どれだけ裏切っても俺を許してくれる、かっこ悪くてかっこいい、王様みたいで綺麗な魂の、土方さんが、いた。 うあ・・・・と余計に顔が歪んで、涙が溢れた。 俺が両手を広げて、ダッコをねだると、土方さんは、自分こそぐしゃりと泣きそうな顔になって、それから俺の側にしゃがんで、ぎゅうっと抱きしめてくれた。 そのままぐい、と立ちあがる。俺は土方さんの腰に足を巻きつけて、しがみついた。 「土方さん・・・遅い」 ぐじ、と泣きながら土方さんにいちゃもんをつける。 「す・・すまん」 本気であやまる土方さん。 「で・・電話・・しても・・・繋がんねえし」 「そ・・・そそそそ・・・それは・・・・」 「土方さん」 「ん?」 「土方さん、銀時が・・・・・・銀時が・・・・・・・」 土方さんも銀時の家族だ。ちゃんと伝えないといけねえ。 「俺のせいで銀時が・・・」 「総悟!」 何も言わなくていい、と土方さんが俺を抱きしめた。 どんな物からも守ってくれる力強い腕に包まれながら。 奥多摩の深い自然の中、俺の泣き声はいつまでも響いていた。 土方さんは、一週間も仕事を休んで一体なにをしていたかというと。 土方グループ内の手駒を使って内部に足がかりを作って、暗躍の機会を狙っていたんだそうだ。 正確には土方さんが会社を追われた日からこっちずっと準備をしてきたので、土方さん本人が実際に計画に参入したのがこの一週間ってことらしい。 もちろん、最大の敵はあのクソ野郎伊東鴨太郎で。そいつを失脚させる機会を二ヶ月間狙っていたのは土方さんの腹心である坂井さんだった。 そう、坂井さんは土方さんを裏切ってなんていなかった。 土方さんの為に、伊東の手下になったフリをして、奴の懐に入り込んでいたんだそうだ。 「なんで・・・・なんで教えてくれなかったんですかィ?」 心配したのに・・・・。 「あー・・・・まあ・・・いや、俺もあの日は本当に騙されてたんだからよぉ、次の日に坂井から連絡があってな」 「じゃあ次の日に教えてくれりゃあ良かったんだァ!」 ガンガンと土方さんの脛を蹴りまくった。 「いっ・・いって!いってえ!やめろ馬鹿!」 伊東は裏で結構法律スレスレのエグいこともやっていて、坂井さんが伊東付きになったことで色々とその強引なやり方が分かったらしい。 特にリゾート分野の清算にはなんだかしらねーけど各方面からその汚い手口が大評判だった。 いつでも慎重で危ない橋は渡らないのが伊東らしいんだけど、何故かリゾート部門閉鎖の件だけは余裕の無い動きをしていたそうで。強引に推し進めようとして、取引企業に対する契約書類の捏造をチョイチョイとやってしまったらしい。 その証拠を坂井さんが押さえてくれたんだそうだ。 結局あいつは、己の土方さんへの異常なライバル心の為に、自らを滅ぼしたってことだった。 「つーまりぃ、全部坂井さんのおかげってことですよねィ?」 土方さんは、俺が知ってる今までの土方さんの顔の中で、一番複雑な表情をした。 てゆうか、無表情なんだけど。多分心の中にはアホみたいなジレンマがめちゃくちゃ渦巻いているんだろう。 「い・・・・や・・・・・あの・・な?この一週間、俺が指示を出して・・・な?」 本当にこの人は、俺にいつでもカッコイイところしか見せたくないらしい。もうとっくにだっせえところいっぱい見てるっつーの。 「でも実際動いてくれたのは坂井さんなんでしょ?」 「う・・・いや・・・まあ・・・だけど・・・」 「十四郎様がおられなければ、この計画は成功しませんでした。十四郎様がまたトップに君臨してくださらなければ、当社の不正を公表するだけです。これからのグループは、十四郎様が今一度盛り立てて行ってくださるはずです」 にっこりと笑って坂井さんが言う。 チッ、100点の答えもらいやがって。 なーにが孤独だ。なーにが誰も信用しない、だ。 おもいっきり土方さんてば人に頼って人に守られてんじゃねーの。 もちろん俺もだけどね。 そんなわけで、俺達はまたこの家に戻って来た。 伊東がすぐに処分しようとしたこの家。坂井さんが資産として大した価値が無いにも関わらず、社の持ち物として置いておいてくれたんだ。 俺は優しいおじさんの坂井さんに、キスしたくなった!そう言ったら土方さんに本気で怒られたけど。 あれから2月が経った。 もう、夏も真っ盛り。来週は俺の誕生日だ。 「わーい!ひじかたさん!誕生日プレゼント買ってくれるでしょう?」 俺はおもっきしブリッコして土方さんに甘えた。 「な、何でも買ってもらえると思うな!全体おまえはそうやってすぐ人にモノを買ってもらえると思っているところがいかん!」 んな事言ったって土方さんが俺が働くの嫌がるんじゃねえですかィ。 「俺、夏服持ってないんでぇ、買ってくだせえ」 内心ゲロが出そうだけど、かわいらしく腕に擦り寄って首をかしげてやった。 「そ・・・・その棚のそこから端まで全部くれ」 トチ狂った土方さんはかっこつけて店中の服やら靴やらを即金で買ってくれた。 「ゲームとか漫画もないと土方さんの帰りが遅い日は一人で寂しいでさあ」 う・・・と詰まった暴君は、次の日に百貨店の玩具コーナーの責任者を自宅に呼んで、俺に欲しい物を列挙させるというイカれた行動に出た。 会社でも坂井さんに、まんざらでもない顔で 「あいつは金がかかって困る」 などと言っているらしい。 多分土方さんは馬鹿なんだとおもう。 どこまで行くんだろうこの馬鹿は、と思って、冗談で俺は 「俺、、小さいころからお城みたいな家に住むのが夢だったんですよねィ」 と言ったら、さすがに土方さんは 「調子に乗るな!」 といって俺の頭に拳骨をくれた。 だってえ、この二年で分かったけど、人生なんてどうなるか先なんて全く見えねえんだから、今あるお金は使っちゃったほうがいいんだよね、きっと。うん。 どうせヘタレ土方の金だしね。 「子供に暴力は振るわないんでしょーが!?」 涙目で俺が訴えると、 「18歳ってなぁ立派な大人だ!」 だってさ。 まだまだガキだから勝手に出歩くなっていつも幼稚園児みたいに俺の事扱いやがるくせに・・・・。 ま、なんだかんだで俺の誕生日の次の日に、なんと金持ち御用達の有名建築デザイナーが我が家の敷居を跨ぐ事になるんだけどねィ。 あん時はホント腰抜かしたよ。 土方さんとデザイナーさんは、それこそ焼肉のタレのメーカーの工場みたいな敷地で、宮殿並みの家を作る相談をしている。 勝手にやってくれィ。 てか、掃除するのが大変だからごめんでさあって言ったら、「おまえが城に住みたいって言ったんだろうが!!」って怒鳴りまくって、新しい使用人の募集も一緒に始めた。 「でもさあ、やっぱり総悟にとって一番の誕生日プレゼントは俺が帰ってきたことだよね〜?」 俺達がジャレてるところに邪魔が一人入った。 俺と土方さんはその人物を眩しく振り返った。 そこには、ニヤニヤといつもの余裕の表情で、昔の通りの銀時が立っていた。 銀時は死んでなかった。 俺が「逝かないで」って言ったから帰って来たんだよ〜なんて銀時はかっこつけてるけど、まあ病院の先生のおかげだと思います。 「銀時!」 土方さんの顔に肘鉄して、俺は銀時に飛び付いた。 「テンメー、一年間寝たきりで、あんだけ大怪我したってのに二ヶ月のリハビリで帰ってきやがって化けモンめ」 土方さんが俺と銀時をひきはがしにかかる。 「ん〜〜〜〜〜っ、総悟ちゃん良い匂い!いーじゃねえか、久しぶりなんだから、ちょっとくらい。アウ!いてえ・・・俺まだ傷完全にふさがってねえのよ?オニイチャン」 「あ、すまん・・・」 ほんと馬鹿だ、土方さんは。すーぐ騙されるんだから。 銀時ってば驚異の回復力で傷はもうほとんど治ってるってのに。 銀時が抱きしめた俺の腰からケツの割れ目にそって手を上下させる。 「ぎ・・銀・・・・」 俺が焦った声を出すと、土方さんが言葉にならない声でわめいた。 「テッ・・・てめ!こら離せ!離しやがれ!!馬鹿やめろ△§×●※☆Π〜〜〜〜〜!!!」 「ただいま、総悟」 「おかえり!銀時!」 んーちゅ、と銀時が俺にキスする。ま、いっか、キスくらい。 「こ・こ・こ・こらああああああ!!!!!何してやがんだクソ銀時!!」 「ちゅーぐらいでぎゃあぎゃあわめくんじゃねえよ兄貴」 「てめーは!あれだけ総悟にひどいことしておきながら図々しくこの家に戻って来やがって!!」 面倒臭い性格の土方さんは、銀時の意識が戻ったとたん、検察よろしく銀時の取り調べを厳しく行った。 もう終わった事だってのに、めんどくさい、本当面倒臭いよこの人。 だけど、土方さんは銀時を許して。もう一度この家の敷居を跨がせることにしたんだ。 「俺はアレよ?総悟ちゃんのアホにちょっとつけこんだだけだから」 「それが!!鬼畜だっつってんだろーが!この馬鹿をいい様に操りやがって!」 「反省してますって」 実は仲がいいこの二人を放っておいて、俺は銀時のスケジュールをカレンダーに書き写し始めた。 銀時は、身体に毒が入ってから神経がうまく動かなくなった部分があって、まだまだリハビリが必要だ。これからは通院で身体を少しずつ治していくんだ。 土方さんは会社の仕事の半分を銀時に任せることにした。 そうして自分は、大学に戻って研究を続けるそうだ。これからは自分のやりたい事もやるって。仕事と研究で忙しくなるから総悟が寂しい思いすることもあるかもしれないけど、ごめんなって言って。 俺はそれを聞いて、心の底からうれしかった。 だから、お祝いとして 「大丈夫でさ!寂しい時は銀時に遊んでもらいやすから!」 という言葉を送っておいた。 それを聞いた土方さんがなんかわけわかんねーくらい怒りまくってたけどしるもんか。 俺は、土方さんと銀時、大好きなお兄ちゃんが二人とも側にいてくれて、最高に幸せな気分だった。 美しい緑に囲まれた温もりのある建物。 ミンミンと蝉の声の中、中庭には涼しげな植物とウッドチップが敷き詰められた優しいプロムナード。 清潔な病室と窓から感じられる四季の移ろい。 俺と土方さんは、ここにいる山崎に会いに来ていた。 土方さんは病室の前で俺を待っている。 山崎はいわゆる「措置入院」というやつでこの精神科病院で暮らしている。 1年半前の事件は、もう裁判も終わって罪を償った後だから、たとえ俺が冤罪だったとしても、再び同じ事件で山崎が罰せられる事は無い。 だから、今回のドタバタで銀時の略取と、俺と銀時の傷害及び殺人未遂。 でも、山崎の場合は罪を償うよりも先に精神の治療が必要だって判断されたんだ。 山崎のおふくろさんは、俺と土方さんに尋常じゃない敵意をぶつけた。 当たり前だと思う。息子の人生を狂わせた俺に、冷静でいられるわけがない。 土方さんは、俺と一緒におふくろさんに土下座してくれた。 何度も通ったのと、山崎自身が俺に会いたがっているということで、ようやく最近面会が許されるようになった。 「沖田さん」 病室に入ると、俺を待っていたのか、山崎はパジャマにカーディガンをはおって、ベッドの上から俺を迎えてくれた。 「ザキ、調子、どう?」 穏やかな山崎の表情を見て、少しほっとする。 山崎は、本当に嬉しそうな顔で俺を見た。思ってたよりずっと調子がいいのかな? 「沖田さん!見てください、俺、この間の模試ですごく良い成績とったんです」 山崎がベッドに作りつけてあるテーブルに、ぐちゃぐちゃになった模試の結果を広げる。 半年以上前の、俺が出所したての頃に山崎が見せに来たやつだ。 「ああ・・・・すげえな、ザキ」 俺はこれを見せに来てくれた山崎に、なんて言ったっけ。確かまともに見ることもしなかったと思う。 「俺、絶対にすごく勉強していい大学に入って沖田さんを幸せにしますね。そうしたら銀時さんに暴力を振るわれることもなくなるんですから。待っててくださいね!」 山崎は興奮したように顔を紅潮させる。 俺は、穏やかに笑って言った。 「ああ、うれしいぜぇザキぃ、ありがとな」 山崎が俺の手を取る。 「俺・・・沖田さんが笑ってるのが好きなんです。泣いてる沖田さんなんて見たくないんです。沖田さんのこと、大好きですから」 「うん・・・・うん」 俺はもう、頷くことしかできなかった。 山崎は夢の中に生きている。 銀時に毒も盛っていないし、俺に罪をなすりつけることもしていない、そうしてもちろん俺を殺そうとしたことなんてまったく覚えていない。 ただ、ただ俺のことを守ってくれようとしていたあの頃の世界に生きている。 ザキ・・・・・お前は今、幸せかィ? カチャリと病室のドアを開けて外へ出る。 ロビーの喫煙所しか煙草が吸えないっていうのに、土方さんは病室の前で待っていてくれた。 「ふう・・・・う・・・・」 俺は堪え切れない涙を、土方さんの胸で流した。 土方さんは黙って俺を抱きしめてくれて。 俺を胸の前でぎゅう、ってしたままズルズルと俺をひっぱって病院を出た。 山崎の人生。 これは、俺が代わりに生きてやることはできない。 だけど、せめて。山崎が戻って来た時に支えになってやりてえ。苦しい事やつらいことがいっぱい待っている人生かもしんねえけど、嬉しい事も楽しい事もおなじくらいやってくる筈なんだ。 それを一緒に歩んで行けるように、いつでも山崎を迎えてやれるように、俺は待っていることにしたんだ。 俺と土方さんは、今、色々な事があったこの家のベッドの上で、裸で向かい合っている。 言葉が、何も出てこなかった。 誰に文句を言われるでもなく、誰に気兼ねするでもなく、世界で一番大好きな人に、愛してるって言えるんだ。 土方さんに抱きしめられた時、今死んでもいいって何度も思った。この瞬間が一番幸せだって。 だけど今は違う。 もっともっと二人で幸せになろう。 俺が、土方さんをもっとずっと幸せにしてあげるんだ。 俺は、静かな表情の土方さんの唇にそっと口づけた。 柔らかくて暖けえ。その感触を楽しむように何度も啄む様に口づけを繰り返す。首の角度を変えて、土方さんの唇を舌でなぞっては自分の唇で挟み込んだ。 何時間でもこうやっていられる、なんて思った時、焦れたように土方さんが俺の頬を両手で包みこんで深く口づけた。 「う・・・ん」 あっというまに土方さんの熱い舌の侵入を許す。 まるで俺の唇を食むように貪られる。上顎の下をつつかれて鼻にぬけるようなくすぐったさを感じた。 ちゅ・・・・・という音をたてて土方さんの唇が離れた。 熱かった唇がその瞬間に冷える。 すぐにもう一度土方さんの唇が俺のそれを塞いだ。 俺の背中に土方さんの左手が回り込んで、身体を支えられながらシーツに倒される。 俺の顔の上に土方さんの、真面目くさった顔。 この凛々しくて情けない人を愛している。 大きな両手が俺の頬を再び包んで。親指が両目の端から耳のほうへむかってぐい、と撫でた。 親指が耳の前に到達して、中指が耳の後ろから首筋を伝って俺の肩に降りる。 鎖骨のラインをそっと撫でて手のひらが俺の肩を優しく掴んだ。 土方さんに触れられているところはすべて、火を噴いたように熱くなる。 俺の鎖骨に、肉食獣の唇が降りて来た。軽く、そして強く、歯を立てられる。 ちゅ、ちゅ、ちゅ、、、と音を立てて、いろんなところにキスをされて、俺の身体はあっというまに自分では制御が利かなくなって行く。 俺の胸の飾りを舌でつついて勃起を促されて。 「ぁ・・・ん・・・」 もう片方は土方さんの大きな指でこりこりと転がされた。 乳首を根元から擦り合わせるように愛撫されて、自然と足が焦れたようにシーツを蹴る。 舌でぐいぐいと掘るように刺激を与えられ、手で弄られている方は敏感な先端の窪みに、指先を引っかくように差し入れられて小さく円を描くように押し込められる。 「ひ・・・ひぁっ・・・」 土方さんが触れている部分にぴりぴりとした感覚が生まれて、その快感は直接下半身とリンクする。 脇腹を土方さんの両手が滑り降りて、その真ん中を唇が追うように降りていく。 俺の腰骨をゆっくりと擦る指を唇が抜き去って、主張を始めた俺の中心に辿り着いた。 ぱくり、と俺の性器を咥える。 「んうっ・・・・・・」 根元に強い刺激を感じて、土方さんの口の中でふるりと震える。 咥えられた性器全体の神経がぞわりと逆立つ。きゅう、と根元から吸われて唇が上下しながら、裏筋を舐め上げられる。 「はあ・・・・うっ・・・ふ・・・」 急所を自由にされる違和感に全身から汗が噴き出た。 俺自身を愛撫してくれているのは、あの・・・焦がれ続けた土方さんなんだ! 意識しない俺の膝が立てられて、ひじかたさんの頭を挟む。 土方さんの手が、俺の腿を性的な意味をもって撫でまわす。俺の中心を咥えたまま、右手は外側から腿を抱え込み、手のひらが内腿の付け根を行き来した。 「やっ・・・やだ・・・・ひじか・・・さ・・・」 その右手の触れるか触れないかの刺激に、かえって性感帯が粟立つ。 土方さんの黒い髪が俺の足の間で激しく上下運動を始めた。 前触れ無く触れる歯に、ビクリビクリと身体が震えた。 「んっんっんっ・・・んっうっあっあっあ!」 土方さんの動きに合わせて堪え切れない声が漏れる。俺自身ははち切れそうなくらいになって、先端がじくじくと愛を求めて涎を垂らしていた。 唇で輪っかを作って一番上まで俺の性器を絞りあげ、そうして先走りを吸いとる。 左手が根元に添えられて親指と人差し指で強く扱かれた。 「いいいっはっ・・・ア!!」 いきなり激しく扱われて熱が集中する。 竿と亀頭の境い目を指でくるりとなぞられて、腰が大きく波打った。 「も・・や・・・出る・・・っ」 俺の必死の訴えに、土方さんは無言で先端に歯をカリ、と侵入させた。 瞬間。 我慢ができなくなった俺は、土方さんの口内に、欲望をエクスプロードさせた。 「ああっ・・・・ああああああうああんっ・・・ふあっ・・・は・・・」 ピクピクと快感に痙攣する俺の欲を、最後の最後まで絞り取ろうと俺自身の先半分を、数度ゆっくりと扱くように上下する。 弾けた精をすべて吸いきった土方さんは、ぐったりとした俺自身の先端に、もう一度音を立てて口づけして、俺が放った欲望を嚥下した。 はあはあと肩で息をしている間に、俺の尻がぐい、と持ち上げられて、おむつを換えるみたいに腰から下がシーツから浮いた。 ぐぐぐ・・・と俺の膝裏を押して、俺の尻を天井に向ける。 「苦しいか」 土方さんが俺に聞いた。 「後ろからの方が、いいか」 こういう真面目腐ったところが、たまらない、たまらなく、鬱陶しい。 嘘。 たまらなく、愛しい。 「顔、見てェ」 一度先にイった俺は恍惚感の中、唇を嘗めながら土方さんを見上げた。 土方さんの眉が寄って、余裕が無くなったのがわかる。 自らのモノを数度扱いて先走りの液体を出す。 それを俺の後孔に塗り込めて、中指を性急に出し入れしはじめた。 俺の入り口のふちをぐるりと指先で撫でられて、ひくひくと土方さんを誘ってしまう。 恥ずかしさに顔が熱くなった。 「クソ、足りねえか」 身体を伸ばして俺の頭上あたりにあったローションを手に取る。 イチゴの香りがするやつで俺がこれがいいって買ってもらったやつだ。 「ちょっと冷たいかもしんねえぞ」 たっぷりとローションを手にとってまた俺の中に塗り込め始める。 「んふ・・・ひじか・・・・さ、はや・・・い」 その性急な手の動きに、排泄感にも似た感覚を覚えて、波の様な違和感が喉元まで上がってくる。 「だめだ、クソ・・・クソ、待てねえ」 俺の秘部は土方さんの急いた手によって、ローションが十分に塗り込められた。 はあ、と息をつく音がして、熱いものが押しあてられる。 これからくる衝撃と幸福感に期待で身を振るわせると、俺は土方さんの顔を見つめた。 「総悟、愛している」 俺の内壁が、待ち望んだ土方さんを迎える。 ガチンガチンの土方さんの性器が、俺の中に入って来た。 「あは・・・・・ん・・・う・・ふっ」 浅く息を吐いて圧迫感を逃がさなければならないほどの固さと質量。 ずぶり、とローションの音をさせて半分ほど入った所でいったん止めて、俺の顔色を見る。 「だ・・・じょ・・ぶ、来て・・・」 とにかく俺は土方さんと1つになりたかった。 だけど、土方さんは俺を焦らす様にゆらゆらとその場で腰を前後させた。 「んあ・・・うぁ・・・」 土方さん自身を締めつける俺の内壁と、まだその熱を感じる事の出来ない奥の方の部分が、もどかしいアンバランスさで俺を責め上げる。 熱い肉を求めて俺の奥の内壁がぞわぞわと土方さんを熱望する。 「おく・・・奥までっ・・・・おねが・・・」 熱に浮かされたように俺が土方さんに懇願する。 その瞬間、じゅぶり。と音を立てて、土方さんが俺の中にぎゅう、とそのすべてを埋め込ませた。 「ン・・・・アッ・・・アアウッ」 満たされる充足感。 「は・・・・はあ・・・は・・」 ゆっくりと大きく息を吐いて圧迫感に耐える。 熱い・・・・熱い塊が、俺の中をいっぱいに侵している。その事実が俺をたとえようもない歓びの高みへと押し上げた。 「総悟・・・・今、お前の中に入っているのは、誰だ」 かたく瞑っていた瞳をうっすらと開けて声の主を見あげる。 「ひじかた・・さん。土方さん・・・でさっ」 息を吐き出しながら名前を呼ぶ。 同時に抜き差しが開始される。 「そうだ、俺だ。・・・・これから・・・これから、ずっと、俺だけを感じろ。俺だけだ。お前の愛は、俺だけなんだ、総悟」 洗脳でもされているかのように。ゆさゆさと揺さぶられながら土方さんが耳元で囁く。 「んっ・・あ・・・・」 「俺だけだ。お前は、俺だけを見るんだ」 「んあっ・・・あっ・・・ああっ・・・」 緩急をつけた動きをしていたモノが、最奥の場所を探り当てて俺が激しく反応したとたん、そこだけを執拗に責め立て、スピードアップする。 「ひ、ひい、ひぁっ、あっ、は、は、はぁっ・・・・んはっ!」 わからない。 もう、声を出しているのかどうかもわからない。 触れられてもいない俺の性器が、頭をもたげてぷるんぷるんと動きに合わせて揺れる。 先走りの液体が俺の腹と土方さんの腹を濡らした。 ずぶ、じゅぶ、じゅぶ・・・と卑猥な水音と共に土方さんの張りつめたモノが出入りする。 俺は、自分自身に手を這わせようとして、激しく揺さぶられる快感にそれが叶わなくて。 下半身にもどかしさを感じていた。 その時、土方さんの熱い手が、俺を再び包み込んだ。 腰の動きに合わせて俺の中心を握り込んで扱きあげる。 「う、、う、総悟!」 「あ、はっ、、はっ、はあ、、・・・かた・・さ」 頭の中がびかびかと光ってスパーク直前の予感に包まれる。 この、この愛を、求め続けてようやっと俺達は二人だけの世界を手に入れた。 もう誰も、俺達を引き裂くことなんて、できないんだ。 土方さん!! めくるめく、この生命の欲望。爆発、融合、そして宇宙。 俺は、土方さんという大きな肉食獣の背に乗って、たとえようもなく広い世界を駆け抜ける。 「総悟!!」 悩ましい土方さんの吐息。お互いの汗が混じり合って、甘美な欲望の火柱となって俺達を押し上げる。 土方さんが俺の身体に打ち付ける腰の動きがより早くなって。 最後に、俺の最奥を抉るように穿った瞬間。 俺と土方さんは同時に、お互いの世界のてっぺんに上りつめて愛を爆発させた。 「ひじかた・・さん」 叫びすぎて、声が掠れている。 俺と土方さんは、真っ白いシーツにくるまって、二人で寄り添っていた。 「どうした、総悟」 愛しくてしかたない、というように土方さんが俺の髪を撫でる。 俺ね、俺、ずうっと土方さんに言いたくて言えないことがあったんだ。 一度言いそびれたら、もうタイミングを逃したみたいで、どうしても言えなかった。 だけど、だけど今なら言えると思う。 俺は、愛しくてたまらない土方さんの胸に顔を埋めた。 俺が、はじめてここに引き取られて。 あの時いっぱい土方さんにひどいことを、した。 皆の前で恥をかかせたり、土方さんの大切な思い出を破り捨てたり。俺は土方さんの言う事を何一つ聞かないで反抗ばっかりしていた。 ごめんなさい。 そのたった一言が、今まで言えなかった。 ずっとそれを後悔していたんだ。 だけど。 今言いたいのはそんな言葉じゃなくて。 あのね。 「土方さん」 「ん?」 ぴょこ、と顔を上げて土方さんの鼻の前に俺の顔を寄せる。 「初めて会った時に、高杉に襲われてるところを助けてくれて、ありがとう」 土方さんは、吃驚したような顔になって、それから急激に耳まで真っ赤になって。 「いつの話だ馬鹿野郎」 そう言うとくるりと背中を向けてしまったんだ。 俺はブフッと派手に噴き出して、土方さんの背中に抱きついた。 大好きでさ!土方さん!! これからは、ずっと、ずっと一緒に二人でいやしょうね!!! 「我儘なカンパネルラ(15)完結」 (了) |