「我儘なカンパネルラ(3)」 H.23/02/27



(銀沖)R18
鬼畜銀さん登場でいきなりドロドロに。



「はじめまして、坂田銀時です」
土方さんと同じくらい背の高い、銀髪のお兄さんはにっこりと笑って俺に右手を差し出した。
俺は、その銀髪のお兄さんの隣に立つ、土方さんの顔を見た。
俺に対する表情は未だ憮然としたままだったが、初対面の銀時の前でまさか兄弟喧嘩を続行するわけにもいかず、ゆっくりと頷いた。

「は、はじめまして・・坂田・・さん」
おずおずと右手を出した俺の手のひらをぎゅうっって握って、その銀髪はにへら〜っと笑った。
「今日から沖田くんのお兄ちゃんなんだから、名前で呼んでよ!」
え、でも。
アナタだって俺の事「沖田くん」ですよね?
「俺ずっと一人っ子だったからさ、兄弟が出来てうれしいんだ」
そんな風に言われちゃあ、なんとも断れない。
「はぁ、、じゃあ、ぎん・・ときさん」
ちょっと照れながら言う。
「銀時でいいよ」
お兄ちゃんって言ってくれてもいいけどね。
なんて付け足して。
スマートで柔らかい感じの人だった。なのに最初の挨拶の時みたいに、ぴしっとする所はしてる。

土方さんも右手を出す。
「今日からうちの家族だ。よろしくな、銀時」
「ああ、よろしく、兄貴」
兄貴、だなんて始めて呼ぶのは抵抗があるだろうに、この人はそんな事気にもしないでサラっと土方さんをそう呼んだ。
すぐに仕様もない意地を張ってしまう俺に無い柔軟さを持っているみたい。
何か魅力を感じた。

土方さんも「兄貴」なんて呼ばれて一瞬照れたような顔になっている。
「ああ」とも「おう」ともつかない返事をして。
「お前は随分優秀だと聞いている。俺の右腕として働いてくれるのを期待している」
だってさ。
俺の時とえらい違いじゃん。


この銀時は、土方グループのコモン弁護士の伊東鴨太郎が探し出してきた。
歳は土方さんと同じ25歳。
でも土方さんの方が少し早く生まれている(土方さんが5月5日、銀時が10月10日、二人揃ってゾロ目だなんて気が合いそうですよね)というのと、もちろん正妻の息子ということで銀時が弟ってことになるらしい。
それにしても、僕達のお父さんてほんと元気なお方だったんですね。

顔は、はっきり言ってイケメン。
ちょっと眠そうな顔してるけど、土方さんみたいにピリピリしたところもない。
銀時は某有名大学を卒業してずっと海外を放浪していたらしい。
よくある自分探しってやつじゃなくて、カメラに興味があって、世界中を写真や映像に収めて回ってたんだって。
だから、見つかるのが遅くなったって伊東が言ってた。
とっくに母親は亡くなってて、バイトしながら世界中を回ったらしい。
自分の力で。
そういうのってかっこいい。
ボッと見上げてると、銀時がちょっとトイレ〜って言って席を外した。

土方さんと二人っきりになる俺。
う、ちょっと、気まずいんですけど。

「総悟」
どきー。

「お前は本当に見境いがないな、涎垂らして銀時を見ていただろう」
んなっ・・・!

ワナワナと震える俺を見下ろしてもう一言。
「銀時はお前の兄だ、色仕掛けでせまったりするんじゃあねえぞ」
「なっこっ・・こっ・・・」
あんまりな物言いにまたも言葉が出てこない。
そんな俺を見て、フン、図星か。と呟くとさっさと仕事に戻ってしまった。

ひいい。
殺してやるう。

お前なんて、伊東が連れてきたってだけでハナから疑ってて、「俺が会って真偽を確かめる」なんて言ってたって坂井さんに聞いたもんね。
俺だって伊東はめちゃくちゃ胡散臭い奴だって思ってる。
なのに、ちょっと「兄貴」って呼ばれただけで完全に信用してるよ、アレ。
本当に「家族」ってやつに弱いらしい。
土方さんも案外チョロいよな。

でも。
銀時のおかげでまがりなりにも土方さんと話ができた。

俺も、銀時にある種好意を持ったのは確かだった。


「アレー?兄貴は?」
銀時が手をプラプラさせてトイレから戻ってきた。

ひょっとして手洗ってから拭いてないのか?この人。
「・・・トイレにタオルありやせんでした?」
「え?ああ、あったけど、アレよ、俺って地球に優しいから、自然乾燥でこの家の加湿も担ってみたりして」
いやただ拭くの面倒臭かっただけだろ?
なんかこの人土方さんの前でだけ猫かぶってなかった??

とはいえ、土方さんより銀時の方がずっと話しやすくて。
その日は二人で夕食をとって、世界中の話を聞いた。
「いやー、バックパックって本当危険な目にあうんだよね、パキスタンなんてあれよ、安宿に泊まってるもんだからさー、イキナリ銃撃戦とか始まってね〜。宿泊客とかもう慣れたもんなのか皆さっさと伏せるのよ。日本人の俺だけボッとしててあわてて真似して伏せたって!んで宿屋の親父がテーブルを盾に応戦してんの!!!」
だとか。
「あのね、なんだかんだで一番怖かったのはね、フランス。フランスの警察に職質された時よ。ホラ、やっぱ身なりきたねーじゃん?マジこえーの、マジ。フランス語だってまともにしゃべれねえからさ、英語と身振り手振りで言い訳すんだけど、どんどんあやしくなんのよ、俺」
銃撃戦の時よりフランスの警官の方が怖かったんだってさ。
他にも色んな話が飛び出して。
久しぶりに腹の底からゲラゲラ笑った。

やー、銀時とはうまくやっていけそうだ。

その夜。
俺はベッドに潜り込んで。
この調子だと土方さんとまともに話せるようになるかもしれない。なんて考えてた。
これからは銀時も一緒だし、土方さんだっていくら仕事が忙しいとはいえ、飯を一緒に食うこともあるだろう。
そうしたら、、、こないだの俺の馬鹿な行動のわだかまりも少しは溶けて、ごめんなさいって言えるチャンスも来るかもしれない。

俺はなんだかうれしい気持ちで、目を閉じた。







数日して、銀時は土方グループの企業の一つ、リゾート開発会社のトップに就任した。
リゾート開発分野は、不景気の昨今業績が伸び悩み、グループ全体のお荷物的存在になりつつあったらしい。
ま、本当はよくわかんないけど、とにかく盛り返してくれってことだよな。その会社を。
とにかく、本当に銀時は土方さんのサポートをする為に、グループで働きだしたのだ。
とりあえず、研修と名打って各部署を2カ月ずつ経験してまわっていくらしい。
すっごい大変だと思うけどそういうの銀時はおくびにも出さない。
めちゃくちゃ忙しいんだろうけど、なるべく家に帰って来て俺と飯を食う。

俺と銀時は急速に仲好くなっていった。
それと同じように、土方さんも銀時を完全に信用するようになってきた。
仕事がものすごくできるらしい。
しかも触れたら切れそうなナイフみたいな土方さんと違って、柔らかい人当たりで反発勢力もフワっと煙にまいちゃう感じ。
色んな人を味方につけちゃうんだって。

土方さんはたまに3人で夕食を一緒に食う時、そうやって銀時をベタ褒めしてた。
それまで土方さんの周りは敵ばっかりだったから、すごく嬉しいんだろう。

相変わらず俺にはそっけなかったけど。

フン、根に持ちやがって。
そう強がってみるが、なんでかしらないけど土方さんに冷たい目を向けられるとちくりと心が痛んだ。


まあ俺と土方さんのことは置いておいて、銀時はなんだかんだでじわじわと、俺達兄弟の心の中に入りこんできた。




「銀時、総悟、戸籍の件だが」
土方さんが俺達を書斎に呼んでいきなり始めた話。
「いつまでも坂田、沖田ってわけにもいかないだろう、そろそろ二人とも俺の戸籍に入れようと思う」
養子縁組ってやつですかィ。

「俺ァいらねーでさ」
「あ、俺も」
お、銀時も?気が合うね。
「どういうことだ」
明らかに不機嫌になる土方さん。何が不満なんだって顔だ。
土方さんは「家族」というものに憧れていて、形の上でも早く俺達を家族にしたいらしい。
そんな形式のものなんて意味がないというのに。
「俺、ずっと沖田できたからねィ、姉ちゃんと母さんのいたアパートも引き払ったし、名前まで変わっちまったら、三人で暮らしてきた事がなんだか無かったことになっちまいそうですから」
土方さんには一線を引いているように聞こえてしまっただろうか。
銀時と土方さんとは、これから新しく家族としての絆を作って行けばいい。そう思ってはいるのだけれど、俺ってほんと、口に出すのが中々できないんだよね。銀時の肩肘張らないところ、ほんとちょっと分けてくれよ。

「俺も、ね。別に兄貴とはそんな戸籍を移すなんてことしなくても心で繋がってると思ってるし。それからやっぱりそこまでやっちゃうと、財産分与とかややこしいのに首つっこまないといけなくなるでしょ。そうなると今の会社でもやりにくくなるしね。そもそも金とかは興味ないんだ」
あららスマートに言えるんですねィ。
俺みたいに土方さんを傷つけかねない言い方しちゃうガキとは違うわな。
尊敬しちゃうぜ。

土方さんは少しがっかりしたようだったけれど、小さな声で
「そうか」
と言って俺達を解放した。

ごめんね、土方さん。
俺は、土方さんと同じ戸籍に入るのいやじゃない。
だけど。
姉ちゃんと母さんも大切な家族なんだ。

とにかく、この一件があってから、俺と土方さんは今まで以上に銀時を兄弟としてすっかり信じ込むようになった。

それが、銀時の薄汚い仮面だという事も知らずに。








銀時がこの家に来て一カ月。
その日、土方さんは仕事で遅くなるってんで俺と銀時は二人で夕食を取った。
銀時は今、入ったばかりの会社で苦労しているんで、食事当番は俺が全部やっていた。
「ごっそーさん、うまかったよ、沖田くん」
「へへっ、そうだろィ」
「沖田くんって見た目綺麗なのに、料理は男らしいよね、ドカっと一品ものとか野菜も激しい乱切りとか」
見た目綺麗ってそんなしれっと・・・。
てか綺麗って・・・。
「や、味は美味いっしょ」
「まーねー」
ふと、俺は思った事を口にする。
「ね、銀時ってさ、どうして俺のこと沖田って呼ぶんですかィ」

銀時はコンマ2秒動きを止めてから言った。
「ん〜〜〜〜〜〜〜兄貴の警戒避けかな?」
土方さんの、警戒?

「なにそれ?」
「フフっ兄貴って沖田くんに近付く男、殺しそうな目で見るっしょ、俺も含めて」
「???何それ?」
あ、また同じ事言っちゃった。

「わかんなきゃいいよ、さ、片づけは俺やるから沖田くんはお風呂はいっといで」
はてな?

わかんねーや。
銀時とキャッチボール上手くできなかったのは初めてだ。
俺は頭をひねりながら風呂に入った。


そして。

その夜、11時をまわった頃だった。
俺は、ちょっと眠くなっちまったもんで早めにベッドに入った。
カチリ、と電気を消して、さっきの銀時の科白を思い出していた。
「兄貴の警戒避け」
よく意味はわかんないけど、それってつまり銀時がなにかしら計算して俺の事を名字で呼んでいるってこと?
なんだろ、なんのために?

コンコン。

いきなりノックの音。
え?
この家には今銀時しかいない。
銀時?と声を掛けようとしたらかちゃりと俺の部屋のドアが開いた。

「え、え、銀時?」
こんな時間に。しかも俺が返事もしていないのに銀時が部屋に入ってきたことに、軽く混乱する。
「ど、したの?銀時」

銀時はドアの横のスイッチを押して電気をつけると、俺の枕元まで遠慮なくすいすいと歩いてきた。
「今日さ・・・・。どうして名前で呼ばないのかって聞いたろ?」
いきなりの発言。
「ぁ・・へ?いや・・・聞いた・・けど」
なんでこんな時間にいきなり?
「教えてあげるよ」
そう言うと。銀時はいきなり俺の布団を乱暴に剥いだ。

ばさっ、と音がして、俺の寝巻姿がすべて銀時の目にさらされる。
「え?」
そう思った途端、銀時は俺の両手を押さえつけて、激しく口づけてきたのだ。

「んっ・・・んんっ・・・!」
いきなりの所業に俺の頭はパニックで。
抵抗しようとするけどまったく両手は動かない。
そうこうしているうちに銀時の舌が俺の中に入って来て、俺の口の中を縦横無尽に動き回った。
こんな・・キス、始めてで。
てか、俺のキスって無理矢理高杉に奪われたのが始めてでそれしか知らねえんだけど。

やっと銀時が離れた瞬間を狙って大きく息を吸い込む。
「なっ、、、なにしやがるんでい!」
キッと強く銀時を睨みつける。手は、押さえつけられたまま。

銀時は・・・・俺が見た事無い顔をしていた。

「総悟」
いきなり名前を呼ばれて、心臓が激しい音をたてた。
めちゃくちゃ怖かった。

「総悟、お前初めてだろ」
初めてって・・・何が・・・・。
わけのわかんない汗が俺の背中に浮いてきた。

「初めてだから、忘れられないようにひどくしてやるよ」
言うが早いか、俺のパジャマをびりびりと引き裂いた。

なんか・・・同じような状況、俺どっかで・・・見た・・。
見たって言うか・・・・。

俺はあまりの事態に、抵抗することも文句を言う事もできなくて、ただただ銀時を見上げた。
「総悟ちゃんって普段威勢がいいわりには、いざとなるとビックリして動けなくなっちゃうんだね」
そんな銀時の挑発も、俺の耳をすうって素通りする。
これから何が行われてようとしているのか、高杉の時のことがぼんやりと思い出される。
あの時は、強くて美しい黒豹がさっと現れて俺を助けてくれた。
でも今日は・・・・・。彼は、いない。
これは夢?
だって銀時はとっても優しくておもしろくて・・・。
反応のない俺に何を思ったのかわかんないけど、銀時は俺の首筋にふわふわの髪を埋めて、愛撫を開始してきた。
ガリっと噛みつかれて。
「いっ!」
痛みに少しだけ覚醒して、俺はいきなり抵抗を始めた。
「っめろ・・・やめろよ!!!」
右手は相変わらず銀時に押さえられているから、左手で銀時の髪の毛をめちゃくちゃにひっぱる。
足をばたつかせて腰を跳ねさせて上にのしかかる身体を跳ねのけようとした。
でも、どれも全く碌な抵抗になっていないらしくて、銀時はビクともしない。

まったく適わない、という事実が俺の頭にすごく大きな恐怖となってのしかかってきた。
「ちょっと・・ちょっとまってホントにまって」
銀時は完全に俺の言う事なんか聞こえないって顔で、俺の手を離すと、パジャマのズボンを下着ごと一気に引き下げた。
「やあっ・・・」
俺の身体はあっというまに真っ裸で。
まだ明るい室内。
きっちりと服を着込んだ銀時に密着されている為裸をじろじろ見られているわけではないが、俺だけが一糸纏わぬ姿になっているという思いが、俺の羞恥を急激にアップさせる。

「いっ・・・・いいかげんにしろよ!テンメ!」
俺はめちゃくちゃに暴れた。
両手が自由になったのをいいことに銀時の髪を引っ張り顔を引っ掻いた。
俺の抵抗が激しくなると、銀時はすげえ嬉しそうな顔になって身体を起こした。
そしていきなり俺の頬を平手で殴りつけた。
「あうっ」
首とかちぎれんじゃねえのって力で。
痛ぇ・・・俺の左頬はジンジンして一瞬感覚がなくなったけど、すぐに痛みがやってきた。
鼻からぬるりとした物が流れてきたのがわかった。鼻血だった。

「総悟・・・・お前は従順にしてりゃいいんだよ」
ぐっ、と。
両手で俺の首を押さえる銀時の大きな手。
両親指が俺の薄い喉仏のあたりに添えられ、力が込められる。
多分、そんなに力は入れてないと思う。
だけど、俺の喉には急に酸素が入って来なくなって・・・。いや、首を絞められた経験ないから知らなかったけど(あたりまえだけど)息苦しいっていうより気道がものすごく痛いんだ。
すごい圧迫感で。喉潰れるんじゃねえのって。
俺は、抵抗もできないで、ただ銀時の両手首を力なく掴んで口を大きくあけて銀時を見つめるしかできなかった。
痛い・・・苦しい!!!
ぱっと銀時が手を離してくれた。
それだけで俺は・・・・。銀時に感謝した。
ごほ・・・ごほ・・・。
むせ返る俺にニヤニヤと笑うと、銀時は俺の足を思いっきり広げる。
怖い・・・首を絞められた恐怖に抵抗らしい抵抗も出来なくなる。

そそり立った銀時自身が取り出される。
・・・なんだよあれ・・・。
銀時のモノはハンパなくでかくて。ものすごい角度で反りかえって、亀頭よりもその下の部分が太くなるくらい、パンッパンに膨れ上がっていた。

それを・・何の前触れもなく、俺の後孔にあてがっている。

待ってくれ・・・・嘘だ。
こんなのは違う、こんなのは嫌だ。
俺は男で。
こんなホモとかそんなのじゃなくて。
俺は、かわいい女の子といつかベッドインするってささやかな夢があって・・・。
こんな、、、銀時とかそんなんじゃ・・・。

チラリと俺の顔を銀時が見る。
俺の顔は恐怖に慄いていただろう。
よっ・・という声を発しながら俺の足を抱え上げて。
「俺さ、、初めて会ったときから総悟のことこうしたかったんだよ。でもさ、兄貴の目が厳しくってさ。わざと一歩置いてるフリするために総悟のこと名前で呼んでなかったんだよ。まあ兄貴予想外に俺の事信用してくれたみたいだし、そんな必要もなかったかもしれないけどね」

その瞬間、俺はあの綺麗で強くてしなやかな筋肉に包まれた身体の・・・・・強い目力を持った土方さんの顔を思い浮かべた。


目の前に火花が散る。
「っ・・・・ぁアアアアアアア!!!!!!」
俺の叫び声が、部屋いっぱいに響き渡った。











「ううっ・・・・うっ・・・ひっく・・・・ひいっ・・・・・・」
俺は、めちゃくちゃに蹂躙された後、素っ裸で放り出されて一人にされた。
終わった後銀時は「良かったよ」なんて優しく言って俺の額にキスを落として。
部屋の電気をパチリと消してそのまま出て行ってしまったんだ。

悔しくて・・・痛くて悲しくて。
涙が止まらなかった。

つい数時間前までは。
銀時はとても優しくてなんでも知っててかっこいいお兄ちゃんで。
俺の無くしてしまった家族の存在を埋めてくれる人だった。
銀時のおかげで土方さんとも仲直りできるかもしれないって・・・・・。

「ううう・・・うう・・・・ううううぁう・・・・」
俺は、枕に顔を押しつけて、一晩中泣き続けた。





「おーきたくーん、朝ごはんだよー」
次の日の朝、リビングから俺を呼ぶ声が聞こえる。
正直、銀時の顔なんて絶対に見たくなかった。
でも・・・・俺はあれから考えたんだ。
銀時をこのままになんて絶対したくない。俺が、俺があんなことされて黙っていると思ったら大間違いなんだ・・・・。
昨日遅くに、土方さんが帰宅した音が聞こえた。
どうやら朝食にも降りてきているみたいだ。

・・・見てろよ、銀時。

おれは、鏡を覗いて俺自身を強く睨んだ。
あいつを・・・この家から追い出してやる!!

階段を下りると、土方さんはもう席についていて、銀時は朝食の皿を運んでいるところだった。
牧歌的な明るい色のエプロンなんかしやがって。
いつもの笑顔だった。
俺は、その仮面の下の恐ろしい下種野郎の顔を思い出して吐き気がする。

「どした〜?おきたくーん、早く席につきなよ」

ギロリと銀時を睨みつけて、席に座る。
土方さんはチラリと俺の顔をみて、大げさに目を眇めた。
「なんだ総悟その顔は」

あたりまえだ。
俺は一晩中泣きはらした目をしてたんだから。
頬は・・・あんな痛かったのにどうやら銀時が手加減したらしく、ほとんど腫れてなかったけど。

「沖田くん昨日学校のお友達と喧嘩しちゃったんだよね」
クソ銀時が勝手なことを言う。

はぁと土方さんがため息をついて。
「喧嘩くらいで泣くな、今までは泣いたら誰でも許してくれたのかもしれんが、そういう根性はもう捨てるんだな」

俺は、膝の上でぎゅっと拳を握りしめた。

「・・・・嘘ついてんじゃねえよ」
ボソリと声が出た。

新聞を手にしかけていた土方さんがぴたりと止まる。

「嘘ついてんじゃねえよ!銀時!俺が黙ってると思ったら大間違いなんだよ!!」
ガタンと席を立って大声を出した。

「あ・・・あんた・・・そんな顔して・・・俺達の事騙してたんだろ!!あんた・・・あんた・・・」
「総悟、どうしたんだ、静かにしろ」
「ひっ・・土方さん!こいつは嘘つきの最低ヤローだ」
「なんだ、何があったんだ」

俺はひとつ息を吸い込んで・・・。
「こ、こいつ昨日俺に・・・」
「どうしたの?沖田くん」

銀時が何の葛藤もないのんびりした声で俺の言葉に割って入った。

あまりの温度の違いに、ぐ・・と少し詰まる。・・・が、言ってやらなければ気が済まない。
「こ、こいつは、、俺に・・・や・・・やらしい事を・・・・・し・・・しや・・しやがったんだ!」

言った・・・言ってやった・・・・。
ぽかんとする・・・・・・・・土方さん・・・と、銀時。

なんで・・なんでお前がそんな顔してんだよ!下種野郎!
その銀時の顔は本当に吃驚したような、理解できないって顔で。

まるで俺の方が何かおかしな発言をしちまったんじゃないかって思うくらい。
「ん・・・・と・・・それ、は、どういう事・・かな?」
事態についていけないって顔。こいつの演技はプロ並みなんてもんじゃなくて。
一瞬あれは俺の夢だったんじゃないかなんて思ってしまって、俺の方が反対に焦る。

その、俺の焦った表情と、鳩が豆鉄砲くらったような顔の銀時を見比べて、土方さんがため息をついた。
違う!違うんだ!俺を信じてよ!!

「えー・・・と・・・。うーん・・・・・。そっか・・・。」
ボリボリと頭をかいて、銀時が口を開いた。
「うーん、ごめんね。俺が悪かったのかな」

「どうしたんだ、何があった」
土方さんは、銀時の方を向いて銀時の意見を求めた。
「いやー、、昨日さ、沖田くんが俺の部屋に来てさ」

どきんとした。
何を・・・言い出すつもりだ。
「んー・・・まあ、俺に・・なんてゆーかさ・・こう・・俺に触ってきたんだよね」
かっと頬が燃えた。
俺が・・・・俺が誘ってきたって言いたいんだ、こいつは!

「こういうことは良くないって沖田くんを部屋に戻らせたんだけど、怒らせちゃったみたいだね」
「う・・・嘘ついてんじゃねえ!!!土方さん、こいつが言ってるのは全部ウソだ!こいつが・・こいつが俺の部屋に来たんだ!!」
俺は必死で土方さんに説明しようとした。
したのに・・・・・。

バン!!!!!
身体が飛び上るほど大きな音がした。

土方さんが拳でテーブルを叩いたんだ。

呆然とした俺に、土方さんは苦々しげな顔を向ける。
「いい加減にしろ、総悟」

怒っている。
土方さんが・・・・怒っている。

「俺は、お前の様に卑怯な嘘を言う奴が、一番嫌いだ」

土方さんは、まっすぐ俺を見つめながら、強い声で言った。

ひじかたさん・・・・・・・嘘じゃない、嘘じゃないんだ・・・・・。

だけど。
俺には、前科があった。

いくら嘘じゃないって言ったって、信じてもらえるわけなんてなかったんだ。








それから土方さんは、もう俺の話なんて聞いてくれなくて。
銀時は「俺の対応が悪かったんだ、沖田くんを怒らないでやってくれ」みたいなことを言ってた。

そうして、今、テーブルに俺一人が座っている。
先に仕事に出る土方さんを銀時が玄関まで送り出していた。
バタンと玄関が閉まる音がする。

俺は脱力感で席を立つこともできなかった。
土方さんが、俺の事を信じてくれなかった・・・。
だけど、それは全部俺が悪くて。

玄関から悪魔が戻ってくる足音を、呆然と聞いていた。

「総悟」
二人きりになった途端、豹変する銀時。
俺は顔を銀時の方に向けることもしなかった。
銀時は、くすりと笑うと
「案外ガッツあるね、総悟は。まあ兄貴の信用はないみたいだけどね」
そう言って階段を上がり始める。

階段を登りきる音。
一番手前に俺の部屋、その向こうが銀時、土方さんの寝室は一階の書斎の奥にあった。
かちゃり、と音がする。

部屋に戻ったのか。

・・・・いや。
今、廊下を歩く音が聞こえたか?

ガタン、と音をたてて椅子から立ち上がった。
あいつ、俺の部屋に入りやがった!

だだだっと階段を駆け上がる。
銀時が俺の部屋から出てきた所だった。
「な、何してやがった!人の部屋で!!」
手元を見ると、銀時の手には、俺の・・・命の次に大切なお守りがしっかりと握られていた。

お・・・俺の・・・
「なんだよ、、、返せよ!返せよ!!!」
俺は思い切り銀時に飛び付いた。
銀時は手を高く上げて、俺には届かないところにお守りを掲げた。
「フッ、言いつけようとしたお仕置きだよ」
そう言って自分の部屋に入った。
そうして、かちゃりと音がした。中から鍵をかけやがった。
俺の部屋には鍵がついていない。
まあついてても鍵なんかかける習慣なかったから使わなかったとおもうけど。
「なんだよ・・・・返せよ・・・・返せよ!泥棒野郎!!!!!!」
ちくしょう・・・畜生!!!
俺はめちゃくちゃに銀時の部屋のドアを叩き続けた。
知らない間に涙が流れていた。

15分ほどして、中から銀時が出てきた。
ぴしっとしたスーツ姿。誰が見てもまともな人間だった。
胸ポケットに俺のお守りを入れて。
「総悟も早く学校行かないと遅刻しちゃうよ」
呆然と座り込んでいる俺の頭を撫でると、階段を下りて行った。


俺は、銀時のあまりの変貌ぶりに、何も考えられないまま、その場に座り続けていた。










その夜、俺は銀時の部屋を訪ねた。
土方さんはまだ帰って来ていない。
土方さんの帰りを待とうかと思ったが、あの人がいると銀時は絶対に尻尾を出さないような気がする。とぼけられたら話が進まない。
俺は、どうしたって、お守りを取り返さなければならなかった。

かちゃりとドアを開ける。
もちろんノックなんてしない。
鍵はかかっていなかった。

机に向かって何か書類を整理していた銀時は、くるりと椅子ごと振り返って、いつもの笑顔で言った。
「待ってたよ、総悟」

俺は、銀時を警戒して、すぐに逃げられるようにドア付近に陣取った。
「・・・返せよ」
低い声でそれだけ言う。

「ふふ・・・もうちょっと色気のある用事で来てほしいな、総悟」
「返せよ!!」
もう一度強く。

鼻で小さく笑う銀時。
ポケットから俺の大切なお守りを取り出して顔の横まで持ち上げる。

「ここまで取りにおいで、総悟」
俺は、きっと銀時にとって手の平の上で走りまわる猿みたいなもんなんだろう。
分かってはいたが、言われるままに銀時に近付くしかなかった。

銀時の右手にあるお守りに手を伸ばす。
ぐっ。と、奴の左手が俺の手首を掴む。

「総悟」
俺は、昨日の事を思い出して、恐怖を感じた。
「俺に触るんじゃねえよ!」
返せ!!俺のお守り返せ!!!
ゆっくりと、銀時が椅子から立ち上がった。
俺よりずっと背が高くて、威圧感を感じる。
ふっと身体が浮いた。
銀時に首根っこを掴まれたのだとわかった時には、俺は銀時のベッドに乱暴に放り投げられていた。

「ツッ」
やわらかいベッドとはいえ、いきなりの衝撃に身が竦む。
起き上がろうとした所を銀時が馬乗りになった。
瞬間。
左頬に衝撃を感じた。
銀時が力まかせに俺の頬を殴ったのだ。
昨日受けた乱暴とは、全然違う力だった。
「兄貴はさ、今日から出張なのよ、一週間。九州の方でちょっとトラブルがあってね、今日決まっていきなり行ったよ。総悟が学校行ってる間にここに戻って準備して、ね。俺に家の事頼んでさ」

「つまり。多少総悟が怪我したって、バレやしないんだよね」
そう言うと続け様に俺の頬を何度も打った。右、左、右、左・・・。
感じたことのない衝撃に、脳震盪の様な症状。
やめて・・・やめて・・・!!!!!
はぁ・・・はぁ・・俺を打ち終わった銀時は、肩で息をしている。
俺を打つ事で快感を感じているようだった。こいつは、完全な異常者だってことに、気がついた。

俺はあまりの痛みに抵抗すらできなかった。
ガクガクと身体中が大きく震え、ただもう二度とぶたれないように、銀時の機嫌を損ねないように、それしか考えられなかった。
「ひ・・・・ひ・・・ごめ・・・なさ・・・」
何に謝っているのか自分でもわからなかった。
打たれた両頬はじんじんと痛み、鼓膜が破れたんじゃないかってくらい耳もわんわんと音がしていた。
俺は、しゃくりあげながら、簡単に銀時に服従してしまったんだ。

銀時はズボンの前をゆっくりと開いて、俺の顔の前に立派な物を取り出した。
相変わらずの毒々しい形状で、吐き気を覚える。
「舐めろよ」
銀時は俺の髪の毛を掴んで、俺の唇を押しつけた。
「ヤッ」
瞬間、嫌悪で顔を背ける。
銀時の目が、すぅと細められたかと思うと、また頬に衝撃。
「この野郎!俺に逆らうんじゃねえ!!」
バン、バン!と頬を打つ音が響く。
「うう・・・うっ・・・や・・やめて・・・やめてくだせえ・・・」
俺は肩を震わせて顔をベッドに押し付けて身を守るように身体を丸めた。
「たすけて・・・ごめんなさい・・・ひっ・・・ひっく・・・返して・・・お願い・・・お守り、返して・・・」
混乱に、俺はもう、まともな会話ができなくなっていた。

銀時は、いきなりものすごく優しい笑顔になって言った。
「総悟、泣いたって駄目だろ?兄貴にだって言われたじゃないか。泣いて許してもらおうって考えはもう捨てろって」
ひっ・・・ひっ・・・しゃくりあげながら俺は顔を上げることもできず。

嫌だ・・・嫌だ・・・。
俺はどうしたっていやだった。
こんな汚らしいものを舐めるなんて。
「総悟、お前は何を言っても無駄なんだよ、これ舐めないと絶対に許してもらえないんだ、もっともっと痛い思いをするだけなんだよ」
優しく・・・優しく俺の髪を撫でて。
「いやいや・・・いやだ・・・・やだぁっ、許して」
俺は完全に子供に返っていた。こいつの言うとおりにするのも嫌だし殴られるのも嫌だ。
だれか・・・ひじかたさん、助けて・・・。

ふうとため息が聞こえる。
ビクリと身体が震えた。
「仕様がないね」
一瞬許してもらえるのかと顔を上げた俺の目に、銀時が振り上げる右手が映った。
「やあっ、やめて!!!ごめんなさい!!!」
顔をベッドに埋めて必死で謝る。

「じゃあ、できるね、総悟」
俺の肩をゆっくりと掴んで起き上がらせる銀時。
目の前には、この世で最も汚らしい、男の象徴があった。

俺は、絶望の中、その気味の悪いものにおずおずと舌を絡ませた。
「うう」
独特な臭気。
何が・・・何が悪くてこんなことになったんだろう。
「もっと根元から」
俺の髪を掴んで、舌を誘導させる。
下の毛もやっぱり銀髪なんだな・・・と思いながら、その密集した銀髪に鼻を埋めるような角度で舐め上げる。
ぴくぴくと浮いた血管にそって先端まで。

しばらく屈辱に耐えて一生懸命舐めていると
「ハイ口大きく開けて〜」
そう言って俺の口を開けさせると、その凶器をずぼりと口に突き刺してきた。
強烈な吐き気。
「う・・・ごほっ・・・ごほ・・・」
涙が、俺の瞳からとめどなく流れ。
ゆっくりと抜き差しが始まる。
臭い・・汚い・・・。ひじかた・・さん・・・。
「舌添えて、舐めてちゃんと」
銀時の非情な声。
俺は、従うしかなかった。
「今日はこんなもんでもいいけど、これからはもうちょっと上手くなってね」
打たれて腫れた上に銀時のものを咥えている為に膨れ上がった俺の頬をそっと撫でながら銀時が優しく諭す。

これから・・・・。
地獄から聞こえるその声に、目を瞑った。

ずちゅ、ずちゅ。
「そうだ、総悟さ。」
うっとりと目を細めながら銀時が何かしらを思いついたように。
「兄貴のこと好きなんだね、見てたらすぐわかったよ」

え。

俺は舌を使うことも忘れて銀時の顔を見上げた。
銀時は、にっこりと笑って続けた。
「惚れてる男に、他の男に抱かれたなんて、総悟、よく言えるよね」

がん!と鈍器で後頭部を殴られたかのような衝撃を、受けた。

すき?
俺が?
土方さんを??

ぐわんぐわんと耳鳴りのように鳴り響く音が聞こえる。
そしてすぐに、俺の喉の奥に、熱い固まりが吐き出された。




(了)


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