これが昼メロの愛だ!_3




土方さんが苦しんでいる。

俺にはそれが手に取るように解った。

この前の女の時もそうだった。土方さんは自ら斬った女の身元をきっちりと調べ上げ、行方知れずなものだから葬儀も出せないで途方に暮れている親兄弟の姿を遠くから見ていた。
親に何も言わないで出て行くような娘じゃないんでございます、なにか事件に巻き込まれたのかもしれないと必死になって奉行所を説得する家族の嘆願が徒労に終わるさまを最初から最後までその目で捉えていた。

何もそんなことをしなくていいのに、わざわざ自分から針の筵に腰を降ろしに行く。土方さんはそういう人だ。
俺の為にひとごろしをしたその罪の深さをありありと己に見せて当然のように苦しむのだ。
苦しむけれどそれでも土方さんは俺を諦めない。
俺に好きな女ができるとかならずその存在を消す。それは、俺にも土方さん自身にも止められない。
止めようと思ったらそれは・・・・・、土方さんを殺すしかない。

神楽が妊娠した。
あんながきみてえな女にも子供ができるんだなと思う。
がつがつと飯を食う女は嫌いじゃない。どんぶり飯を食って店全部食ってそのうち江戸も地球も食い尽くしちまうんじゃねえかって勢いの色気のねえところが好きだ。そうやって考えてたら戦闘民族のくせに食糧食い尽くして侵略すんのかてめえなんて言葉が口を突いて出て、神楽と喧嘩になった。
今まで興味のあった女は姉ちゃんにちょっとだけ似てるようなのが多かったけれどこいつはどっこも似ていない。似ていないけれど俺の身体のどこか明るい部分で神楽を好きなのだ。

だけれども土方さんは、そんな神楽を・・・腹にがきのいる神楽を殺すだろう。
今この瞬間も、鬼になる自分を予感して土方さんはきっと地獄のように苦しんでいる。
もともとは心のきれいな人だから。
でもその苦しみは俺のため。
俺を愛しているから。

ひじかたさん。

俺は。

俺は、アンタがひとでなしになってまで俺に執着するその姿が見てえんです。
俺の女をその手で殺して、仮面のように無表情なその表情筋の下の罪の呵責に耐える土方さんを見ると、俺は身体中がぞくぞくとしてうれしくてたまらねえ。
アンタがそうやって苦しんでいる間は、俺は安心していられる。アンタは俺の虜だって、俺に夢中だってはっきりとわかる。
だから苦しんでくだせえ。
俺ァこれからも女をつくります。
そうしたら土方さん、アンタはずっと俺を追い掛けて俺を好きでいてくれる。

誰よりも愛してるアンタに、俺は愛されていることを感じていられるんだ。

俺は、土方さんに無理やり組み敷かれているように見せかけながら、この上無い幸福と愛と性欲にまみれて着衣が乱されるのに悦びを感じていた。


(了)


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