これが昼メロの愛だ! H.25/05/21 |
(土沖神)なんかタイトル考えるのも面倒になってきました。沖神要素あり。 まあタイトルはどうあれ中身はわりと真面目です。 神楽が妊娠した。 もちろん俺にとっても神楽にとっても計算外には違いないので、誰も幸せにはならない。 どうしやしょうかと相談した近藤さんと土方さんは石のように固まったし、隊士どもにはすぐ知れ渡って「喧嘩するほど仲がいいとは本当ですね」などと囃し立てられ、万事屋の旦那に至っては俺を殺すと息巻いて木刀を真剣に持ち替える始末だった。 この少子化の時代、女の腹にガキができて一体なにがいけないというのか。 沖田君を殺して俺も死ぬとわめき倒していた旦那も、近藤さんが頭を下げに来てなによりも二人と生まれてくる子供の為に最良の選択をと言われて折れないわけにもいかず、俺と神楽の結婚が決まった。 俺は来月、晴れて花婿となる。 「まさかアンタ方より先に所帯持ちになるたぁ思いやせんでしたよ」 なんだかんだで誰もが俺たちを祝福しようという段になってもまだ首を縦に振らなかったのは土方さん。 俺は屯所の奥の一等地である土方さんの部屋で、むっつりと文机に向かって座る男の隣に腰を降ろした。 俺の方を見ないで壁を向いている青い瞳。この目つきの悪さでここまでのし上がった男。 灰皿の上の煙草の量が土方さんのご機嫌を如実に表していた。 やがて地獄のような表情の土方さんがぽつりと言う。 「ふざけるんじゃあねえ、お前みたいな餓鬼が人の親だ?笑わせるな」 「土方さんは喜んでくれねえんですかぃ」 「何がうれしいものか、いつのまに女になど手を出していた」 「土方さんだって女がすきでしょ」 「俺の相手は玄人だ。あんな野蛮な野生児のどこが良い」 俺は、土方さんが俺に甘くなる上目使いを見せながら冷たい顔を見上げる。 「あんなのでも、黙ってりゃ顔だけは愛らしいんでさあ」 「お前の事だろう、それは」 土方さんが俺の肩を掴んで、畳に押し倒した。 チェーンスモーカーの土方さん。側にいると、いつでも煙草の臭いがするけれど、畳に後頭部を付けた今は今年替えたての新しいい草の香りが、ふわりと鼻をかすめた。 土方さんは、俺のことが好きだ。 昔から俺に固執して、俺が好きになる女をわざと奪ったり追い払ったりして、女と俺を引き離した。 弟離れできないという言葉では説明しきれない何かがそこにはあって、遂に上京してはじめて懇ろになった女が行方知れずになった時俺はそれを確信した。 土方さんが俺と神楽の縁談に賛成することはない。 それどころか放って置いたらきっとこの人は神楽に何か危害を加えるだろう。 それは宇宙最強の種族である夜兎族の娘が相手だとしても関係ない。 土方さんはどんな手を使っても目的を遂げる男だ。 その土方さんを止めようと思ったら、それは、土方さんを殺すしか、ない。 俺は、俺の為ならなんでもするだろうこの男の顔をじっと見た。 今は冷徹な仮面をかぶった大人の男のような顔をしているけれど、武州の田舎にいる頃はチャンバラばかりしながらもまだ線も細くて、がきみてえなところもあった。 あの、農家の末っ子土方さんが中にいるってわかってるから俺は鬼の副長だっておっかなくねえ。斬り合いだったら負けねえし、なによりいくら怒ってみせたって土方さんは俺には甘いのだ。 呆っと見ている俺の下唇を土方さんが親指で左から右にすっとなぞった。 抵抗もなにもしていない俺の両手首を強く抑える。 「ほんとうに、あんな餓鬼に惚れていやがるのか」 俺は、その言葉には何も答えないで、逆光の為にはっきりしない土方さんの顔をじっと見上げた。 |