「鉄線よ、我君を愛す(10)-4」




「ウアッ!!!!」
まるで太い杭でも打ち込まれたかのような痛みだった。

息が吸えない。
尻穴に力を入れて身動きせずに耐えるしかないほどの鈍痛。
しかし男が無情に腰を揺らせた。
「あうっ!」
意識せずに口から悲鳴が漏れた。
「畜生!いてえ!キツすぎる!畜生!!緩めろ!!」
「うっ、あっ・・・ああっ!!」

男の赤黒い性器と、総悟の意思に反してぐっぽりとそれを咥えこんだ穴の結合部分から、鮮血がじわりと湧いた。

「ふふ、血でヌメって動きやすくなったんじゃないの?」
立っているのに疲れたのか、土間の隅の手押し車に藁がつんであるのに総悟の袴の残骸を敷布がわりにして上半身を寝転ばせる小十郎。足だけを手押し車から下ろして組んでいた。
右手を頬に置いてひじを突く。完全に傍観者を決めこむつもりだった。

「冗談じゃねえ!こちとらアンタみてえなお上品ぶった悪趣味とは違うんだ。俺の自慢の逸物がぶっつりいっちまいそうじゃねえか!」
余裕のない男が無理に腰を振って尻穴を広げようとする。

「いあっ・・・!あああ!!」
担ぎあげられた総悟の左足が痙攣するように突っ張った。

「仕様が無いね、そんな淫乱一人満足させられないなんて。私はそいつの泣きわめく姿が見たいってのに。まあいいや、後でどうにだってできる。今はおまえたちを満足させてあげるよ」

美しい高価な錦の胸の合わせから、小十郎が小さな包み紙を取り出した。
薄い油紙が五角形に折られたその包みには、白い粉。

小十郎が十四郎の閨に持ち込んでいたものと強力な催淫効果のある薬を混ぜた、強烈な媚薬だった。

「従兄弟のお兄サマが私には甘くて、ね」

銀時が調合したその薬を指で挟んで愛おしそうに唇の前に持ってくる。
別に取り出した小さな器に入っている粘着質な油に粉を入れて、右手の人差指でくりくりと練り混ぜた。

「はい、できあがり。下のおクチから食べさせてあげてよ」

小十郎に手渡された器から男が指で油を掬う。
ぐいと腰を引いて逸物を取り出すと、無理に広げられた尻穴が戻りながら赤い血の糸を吐き出した。
すかさずそこへ油のついた指を二本突っ込んでぐちゃぐちゃと掻き回す。

「んっ・・ふ・・」

長くのびた爪が内壁を傷つけているのか、総悟の眉根が寄った。

手押し車から起き上がった小十郎が総悟のところまで歩み寄って、掻き回されている箇所を嘲りの表情でちらりと見る。

「よぉく擦りこんでやってよね、よく効くから」
右手の指に残った油を総悟の乳首に強く擦りつけて拭くと、戒められた獲物が「うう」と呻いた。
「おえっ」
戻しそうなそぶりを見せて汚いものにふれたかのように更にその指をぷらぷらと振って手押し車に戻る。

「さあ、これでちっとは緩くなるんだろうな?」
煮しめたような臭い匂いのするよれよれの着物に何か涌いているのか、ぼりぼりと肩に手をつっこんでそこらじゅうを掻きながら男が言った。

先程からの乱暴な扱いに、総悟の薄い胸が酸素を求めて上下している。
その先端にある桃色の突起が油で濡れて光っているのを、男達が欲を持って見つめた。

「・・・・もう、我慢できねえぜ。薬なんてどうでもいいから俺に突っ込ませてくれよ!」
すぐ横に立っている農民風の男が声を上げた。

「・・・まあ待てよ」
ニヤリと笑って総悟の腿を撫で廻しながら、先ほどぐちゃぐちゃに掻き回した穴を食い入るように見ていた男が呟く。
そこは固く閉ざされていた先程とは違って、ヒクヒクと物欲しげに蠢いていた。

薄い桃色だったその穴は、今は熟れた実のように充血して色が濃くなっている。

「早ぇな・・・もう男を欲しがっていやがる」

事実、総悟の身体は劇的な変化を遂げていた。

全身が熱い。

どくどくと胸の動悸が高まり、男に触れられている腿が燃えるようだった。
なにより萎えきっていた中心に急激に血液が集中して、むくりとそこが勃起をはじめたのだ。

なにも、興奮する要素などない。脳と身体が一致しなかった。

更に、直接塗りこまれた尻穴とその奥の腸壁が、不気味な蠕動を始めた。
見なくても浅ましげにヒクついているのがわかる。

「ふ、あ・・・」

誰にも触れてもらえない下半身がもどかしく、自ら腰を揺らせた。

「ああ・・・は・・」
知らず口から声が漏れる。あわや涎が溢れそうになって、必死に残った理性で抑える。

「そろそろいくぜ」
先程窮屈に締めつけられた男根に左手を添えて男がいやらしげに前後に腰を振った。

「やめ、ろ・・」
先程まではこんなことは何程もないと思っていた。

高杉の下を離れ、その安否もわからず、そうして十四郎への間違いない愛も否定しなければならない己の状況で、貞操もなにもなかった。

どうにでもなれ、と。

下賤な男共に嬲り物にされた総悟など、十四郎が興味を失ってくれればその方が良かった。

だが。
いざ無理に己の身体に快楽欲求を植え付けられてみれば、頭の芯からそれを望んでいない事をはっきりと感じた。

嫌だ。

この身体は、己の愛する人だけのものだ。



「・・・・・さま」

総悟がその男の名を声にした瞬間、無情な凶器が再び躊躇なく突き入れられた。

「ふ、ああああああっん」

信じられない声が、己の口から出た。
驚きに息が止まる。

薬を使われたのは初めてだった。

十四郎は元より、香を好む高杉でさえこんな怪しいものを総悟に仕込んだことはなかった。
忌むべき野卑な男の肉棒が、尻に押し込まれることに、これ以上ない喜びを感じて愕然とする。

「へへ・・・・どうやらイイみてえだな、具合の方も最高になっていやがる・・・俺にまとわりついてきやがって、好き者め」
「ああ・・・はあ・・・はぅ・・・」
何も聞こえなかった。男の言葉は。

己の尻を犯しているものが何かも解らない。
神経が何万本も通っているようで、理解が追いつかないほど敏感になっていた。

わけのわからない生物がぞわぞわと腸内を動き回り、何本もの肉がズルズルと出し入れされているような感覚。

なによりも驚いたのは、霞んだ視界で男を見下ろしてみると、未だ男はぴくりとも腰を動かしていないのだった。
では、今この身体の中にいるものはなんなのか。男の男根には違いないが、微動だにしていない男から何本もの凶器が生え、それが皆別々の動きで総悟を責め立てている。

それぞれが動く度に、気も狂う様な快感が総悟の身体を突きぬけた。

「ああっ・・は、はあっ・・・」
「限界だ、動くぜ」
「やあっ・・・やめ・・やめて、、、」

恐怖しかなかった。

今この状態ならば、男が腰を動かした時どうなってしまうのか。

自由な右足で力なく空を掻くが、なんの抵抗にもならなかった。
むしろ、周りの男の一人がその右足に色を感じてぐいと足首を掴み、腿の付け根に中指を差し込んでぐるりと周回するように撫で始めた。
たったそれだけの刺激に、身を捩る程の快感を覚える。

「ひあ、、、あ、、あふっ」
触れられてもいない前がぱんぱんに膨れ上がった。
誰か、触って欲しい。

理性の灯が消えかけている総悟の唇から、つ、と唾液が流れる。
守って来たものが崩れた瞬間だった。
そして同時に、総悟の中いっぱいに入っている男が、ゆっくりと前後運動を始めた。





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