フェティシスト☆ザキヤマ



真選組が組織されてしばらくたった頃、江戸での新隊士募集でその男が入隊してきた。



なんでこんな地味なの採ったのと土方さんに聞くと、「監察は地味なほうがいいんだ」とおもしろくもない答え。



別に男前でもないし背も高くないし、仕事もできなさそうだしなにより地味だし。

ああ名前も地味かな。

さがる、だって。



そいつのことは、すぐ忘れた。



次の日、廊下ですれ違った時に軽く会釈されて、『あいつだれだっけ』と思ってチラリと振り返って後姿を見ていると、隣にいた土方さんがそれを察したのか

「きのうの新隊士の山崎だ」

なんて言ったので、ああ今のは土方さんに会釈したのか、とわかった。



そいつは俺のことをなんとも思っていないみたいだった。

大抵は入隊希望でやってきた奴らは俺を見るとポーっとなって、次の瞬間には入隊試験の腕試しで俺にけっちょんけちょんにやられる。

だけどそいつは俺を見ても別に顔色を変えなかったし、「俺は剣の腕で入隊するわけじゃありませんので」っつって立ち合いも辞退しやがった。

ま、世の中ホモばっかりじゃないってことで。



別に可も無く不可もなくのおもしろくない人間の典型みたいなやつだった。



次の日も、その次の日も、廊下で奴とすれ違って、そのたびに

「山崎だ」

なんつって隣のおせっかいが教えてくれる。

そんなわけでようやっと一週間くらいした頃、なんか暑苦しい髪型してる奴が山崎だって俺ののうみそにもインプットされた。

相変わらず顔は覚えられなかったけど。



あっちも相変わらず副長である土方さんだけに会釈して、まるで俺はいないかのようだった。

そういうところは暑苦しくなくていいかもね。







ある日、俺がコンビニに行こうと屯所の玄関へ行くと、俺の靴が見当たらなかった。

とりあえず土方さんの靴に粘着型のインソールを三枚貼ってガポガポ言わせながらコンビニには行ったが、いくらインソールなんか入れたってこんなデケエ靴カッコ悪いしなにしろマヨネーズ臭くていけねえ。

土方さんに靴がねえんですって言ったら「どうやって靴なんか失くすんだ」って怒られて、それから「そういう細かいことはこれから山崎に言え」って言われた。



トコトコと山崎の部屋に行く。

山崎は真選組が採用した最初の監察で、すでに入隊してから三カ月がたっていた。

山崎の部下と呼べる監察メンバもちょろちょろ採用しだしていたこともあるし、なにしろ隠密活動は昼夜を問わない。それに土方さんは色々山崎に言いつけることがあったりなんかするから、便宜上あいつに個室を与えている。



もちろん声なんか掛けないで、スパンと襖を開ける。

俺の、このやり方に真選組では土方さん以外誰も文句を言わない。

バズーカ打ちこんで風穴開けられるよりはずっとマシだからだ。



だけど、この監察は、文机に向かって書類をまとめていた手をとめてじろりと俺を見あげた。

『なんだ、この人』

とでも言うように。

あまりにその目がむかついたので、とりあえず文机の上の硯をとりあげて、中の墨汁を書類の上にやさしくぶちまけた。



「なっ、なにするんですか!!」

ちょっとだけ慌てた山崎の姿を見て俺は気分が良くなった。



「ザキィー、俺の靴無くなったんだけどお」

必死にそこいらの墨汁を拭きまくってる背中に足をのせて言う。



『ザキってなんですか』

みたいな目をして俺を振り仰いだザキの背中をぐりぐりぐりっと踏みねじって。

「新しい靴支給しろィ」

と言うと、はーーーーーーーーっ・・・と大げさにため息をつきやがった。



「備品を大切にしないのは感心しませんね。とりあえず紛失届だしてください、そうしたら新しいの支給しますから。靴のサイズは・・・ぐぼおっ!!!!」

まだ俺の恐ろしさを知らないようだったので、何やら鬱陶しい言葉を並べるその口を閉じてやろうと思いっきり顎を蹴り上げた。

「俺、馬鹿で字ぃ書けねえから。紛失届はお前書いといて〜」



もう用は無かったので踵を返してふらふらと山崎の部屋を出た。



部屋に戻ろうとしたら、土方さんに呼びとめられる。

「お前始末書書いとけよ、こないだの旅籠で大暴れした時のな」

煙草を咥えながら、人差し指と中指で挟んだ書類を俺の目の前につき出した。



それは始末書のテンプレート・・・とかじゃなくて、どうやら俺がくれって言った休暇届の用紙(そういうものの字は書ける俺だ)だった。

じいとそれを見て。

「ありがとうございます」

シュ。と斜め下にひっぱってやった。



「いぃっつ・・・・!」

土方さんの人差し指と中指の股のやわらかい皮膚が紙で切れて、つ・・と赤い血が流れた。

見ると土方さんが軽く眉を寄せている。

多分、痛いんだろう。



ちょっとぞくりとしてからなんでもない顔をしてすいすいと廊下を歩いて自室に戻った。



あの人は苛めがいがある。





めでたく俺の靴が支給されて、靴ずれなんか起こしながらやっと新しいのにも慣れた頃。

また俺の靴が無くなった。

せっかくなめらかにフィットするようになったのに・・・。

かちんときて。

土方さんに文句を言いに行った。



「また俺の靴が無くなったんでさぁ、泥棒がいやすぜ泥棒が。土方さんこれから毎日下足箱の前で見張っててくだせえ」

「うるせえそういう事は山崎に言えって言ったろう!てかどうせお前中庭から入ったりしてそのままなんだろうが!もっとよく探せ!!」

「んなわけねえでしょうが!中庭にはアンタの草履で出入りしてんだから靴なんか使わねえもん」

「勝手に俺の草履使ってるのお前か!ねえんだよ俺が履こうとした時によォ!いいから山崎んとこ行って来い!!」

理不尽に追い出された俺はまたトコトコと山崎の部屋へ行った。



そして前と同じように何も声をかけないでスパンと大きく襖を開けた。



開けたら。



そこに、山崎がいた。





俺の、靴に。

鼻先をつっこんで。

ふがふがくんかくんかと匂いを嗅ぎながら、ばかでかいチ○コを握りこんでいた。

ちょうど、ふごおっと大きく息を鼻から吸い込んだところで、俺が襖を開けたもんで。

山崎は地味な石像のようにがっちりと固まった。





「・・・・・・・・・・・なぁにしてるんでィ」



「す」

「す?」

「す」

「す?」

「す」

「す?」

「す、す、す、すみませえええええええええええんんっ!!!!!」



大きく叫ぶと、山崎は俺の靴を放り出して ずさずさとち○こ丸出しで後ずさり、後ろ手で障子を開けて縁側を飛び越し中庭に飛び降りると土下座をした。

ああ、フィニッシュ前のデカブツがすっかり萎えて、地面にこすれて先走りが2cm四方のちょっとした泥水を作っている。



「すみません、すみません!俺、沖田さんに一目惚れしたんですうううっ!!それで、それで・・・・それで俺、沖田さんの靴・・・靴を・・・靴が・・・・あの・・・俺、靴が・・・」



何を言っているのかよくわからなかったけれど、どうやら俺の靴がこいつの性衝動をかきたてるらしい。

滂沱しながら中庭に這いつくばって下肢丸出しで俺に許しを乞う山崎を見ていると、今までおもしろくもなんともねえと思っていたこいつになんだかぞくりとした。



「フフン、許してやってもいいぜィ」

「ほ、ほんとですかあ?」

「そのかわり、お前のオ ナ ニー見せてみろよ、俺に」

そう言ってにやりと笑ってやると、訳が分からないとでも言うような顔で、おずおずと俺を見上げる。



いいね、その、小動物のような怯えた顔。

地味だけど、イイカンジだよ、お前。



山崎を部屋に戻して俺の靴を手渡す。

「さあ、どうやってヤルんでい?」



山崎はわりと胆の据わっている野郎だった。

す、と俺の手から靴をとりあげるとまずそれを裏返して、まだ砂のついている靴底に口づけた。

口づけながら目線は俺を見ている。



俺は、自然と自分の口角がじわりと上がるのを感じた。



それから山崎は足を入れる穴のまわりをべろりと一周ゆっくりと舐めた。

器用に紐をゆるめてぐいと靴の舌部分を大きく広げると、さっきみたいに鼻から俺の靴に顔を突っ込む。

スン、という音と上下する肩やら胸やらで、山崎が大きく息を吸っているのが分かった。



スン・・・スン・・スン!

と性急に息を吸い込み続ける山崎。

朝から晩まで外を巡回したり討ち入りの時なんかも履いて行った俺の靴。

俺の汗がしみ込んで蒸れに蒸れた匂いがしているんだろう。

山崎はむきだしの性器に手をかけて、胸一杯に息をしながら上下に激しく擦り始める。



「んう・・・ふご・・・おき・・・沖田・・・さん」

左手で靴を持ち、右手は高速で性器を扱き上げ、山崎の頬は紅潮し、腰を激しく揺らして俺の名を叫び続けた。

「おき・・・沖田さん・・・ああ・・・ああ、沖田さん・・・好きです・・・」



俺は、山崎の性器にくぎ付けになっていた。

元々大きかったそれは、ものすごい膨張率でいやらしく蜜をたらしながら天を向いてそそり立っていた。



「んっ・・・んっ・・・ふぐ・・・ふ・・・ぐ・・・はあっ・・・沖田、さん・・・」



今にも爆発しそうな山崎をじっと見ていると、限界の一歩手前なのかふるふると震えるその山崎自身から、不意に手を離して。

顔をつっこんでいた靴をゆっくりと己の象徴にかぶせた。

山崎の肉棒が、スリッパ立てのようにすっぽりと靴に隠れる。



「はあっ・・・は・・・・」

両手で優しく靴を上下させて。

フィニッシュへ向けて腰を更に激しくピストン運動させる。



あれ・・・あれは・・・・・手でやるよりも全然刺激にならねえんじゃねえのか?

多分靴のつま先には先端が当たってるだろうけど、茎の部分には革靴の上辺の裏側しか触れていないと思う。

あんな刺激で、イケるのか???



だけど山崎は自慰を始めてからここ一番の恍惚とした表情で、さらに激しく腰を揺さぶった。

「うっ・・・あっ・・・・あう・・・ん・・・おきた・・・おきたさん・・・そうご・・・総悟っ!!!!」



そして。

とうとう俺の靴の中に、山崎は盛大に射精した。



はあ、、はあと肩をゆらしながら熱のこもった目で俺を見上げる。

どろりと山崎の精液が俺の靴の内底を流れ落ちてきて、かかとに溜まる。



その、靴と山崎の表情を見て。

俺は自分が興奮していることに、気付いた。









その後、俺は暇を見つけては山崎の部屋を訪れた。

山崎はいつも俺の新しい靴をほしがった。

何度も使っていると俺の匂いが薄れていくんだそうだ。



山崎はいつも同じように自慰をする。

まあ時には俺の靴を自分の裸の胸の上を滑らせて悦に入ったりしているが大体は俺の靴にフィニッシュする。

何度見てもなぜか飽きなかった。

飽きるどころか新たな興味が沸いてくる。



こいつは、俺にこうやって見られながら俺の靴に射精するわけだけど、俺自身は欲しいと思わないのだろうか。



ある日、俺はその素朴な疑問を山崎にぶつけてみた。



「お前、俺の事抱きたくねえの?」

「え」

「靴ばっか相手にしてねえでも、俺やらせてやってもいいぜィ、一回くらいなら」

そう言うと、山崎は本当に意味が分からないというような顔でぽかんとしたまま俺を見上げた。



「いえ・・・・いいです」

「いいってなんだよ、遠慮すんな、こんなチャンスめったにないぜィ、明日になったら気が変わってるかもしれねえんだから」

「いえ、本当に、いいです」

「なんだソリャ、俺より靴の方がいいってのか?」

「はい、そうです。俺、靴が、沖田さんの靴がいいんです」



しれっと。

山崎は俺の靴を舐めながら言った。





変だ変だ変態だと思っていたが。



やはりとんでもない奴だったらしい。





俺はそれからも山崎に靴を提供した。

備品は何でも屋的な山崎が主に管理していたので問題はなかった。



何故だかわからないけれど山崎の自慰を見ることで、俺の性衝動が駆りたてられるのだ。

ちょっと前までは土方さんの泣きそうな顔を見るのが俺の楽しみだったのに。

こんな、こんな他人の気持ちよさそうな顔を見て興奮してしまう俺を、俺は自分で持て余していた。



「ザキぃ・・・・」

「なんですか?」

はあはあと、今日も俺の靴の革部分にに己のモノをこすりつけながら返事をする。



「俺・・・・俺な・・・ザキ・・・・お前に・・・い・・・入れて・・・ほしい・・かも」

自分で何を言っているのかわからなかった。

ただ、俺の目の前で俺の靴に愛を吐露しながら腰を動かしている山崎に、俺を、俺自身を見てほしかった。



ぴたりと山崎の動きが止まる。



「・・・・・嫌です」

「・・・・・・なんで、だよ」

「俺はそんなケツなんて汚らしいところにつっこみたくありません」



ズキリと胸が痛んだ。



「ザキ・・・・なんで、だよ・・・なんでそんな・・・靴なんかがいいんだよ。俺が好きなんじゃねえのかよ・・・」

俺の意思とは関係なく俺の瞳がうるむのがわかった。



「もちろん好きですよ、だけど俺が興奮するのは貴方の靴なんです、靴だからイケるんです」



「なんだよ・・・・へ・・変態野郎・・・・・。もう・・・もうお前に俺の靴なんて二度と触らせるもんか・・・・・」

つい、言ってしまった。



チロリと。

山崎の冷たい瞳が俺を睨む。



「ザキ・・・・・・」



はあ、とため息が聞こえた。



「仕方ありませんね、わかりました。じゃあ沖田さんが俺にお願いしてくれたら、10日に一度くらいは突っ込んであげますよ」



俺は、天にも昇る気持ちだった。

10日・・・・10日に一度は、この、山崎のモノを俺にブチ込んでくれる。



俺はさっそく着物を脱いでパンツも自分で降ろした。



「ザキ・・・・・」



「お願いしてください、沖田さん」



「ザキ・・・頼む・・・・頼む、から・・・・入れて・・・・」



「違うでしょう?総悟」



きらりと山崎の瞳が光る。



「なに・・・た・・頼むから・・や・・・やまざき・・・」

「なまえ」



目の前に山崎の大きなモノが揺れている。

俺は、ごくりと、喉を鳴らした。



「お、お願い・・・・さ・・・さがる・・・さま・・・。さがるさまの・・・ち・・・ち○こを・・・俺に・・・・俺に・・ぶちこんで・・・くだせえ・・・・・」



震える声で俺は懇願した。









にっこりと。







地味な男が壮絶な色気をもって、微笑んだ。











(了)

















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