「鉄線よ、我君を愛す(8)-1」 H.23/12/21 |
年が明けて、高杉軍は隣国との境で防衛戦を行っていた。 高杉は年末から前線へと赴き、未だ戻ってこなかった。 総悟はといえば、出陣を許されずに未だ白鷺城にその身を置いている。 「つまんねー・・・・」 高杉軍の巴御前、また子も最前線に出てしまって不在。 主に総悟の相手をしてくれる人間はここに誰も残っていなかった。 最後の砦の草太でさえ、十の声を聞いて初陣となった。 初陣と言っても戦馬の世話方として陣営に屯するだけだが、また子が前線で隊を指揮しているため、殿の身の回りの世話も担っている。事実上の小姓デビューだった。 「草太までいねえたァ、マジつまんねー」 ちいちちと鳥の鳴き声がする。 退屈、とはいえ、この戦に出てどうすればいいのかわかっていなかった。 高杉が今戦っているのは、土方軍。 とうとう十四郎が己を迎えにやってきたのだ。 その十四郎の軍の兵士を、斬れるだろうか。斬るべきなのか。 故郷に、十四郎の下へ戻りたくないと言えば嘘になる。 だが、もうすっかり白鷺城の人間になってしまった己が、十四郎に会って、何を言えばいいのか。なにを感じるのか。 「それでも、こんなところにいるわけにはいかないんでィ」 結果がどうなるにしろ、もう賽は投げられた。 戦場へ行って、己がどうするのか、頭で考えるのは苦手だ。すぐにでも行って己の行動を確かめたかった。 「行っちまおうかな〜」 ぼそりとそう呟いた時、早馬の報せが白鷺城に入った。 |