「鉄線よ、我君を愛す(6)-1」 H.23/10/H.23/11/02 |
「土方の進撃は比類ねえらしいなあ」 ぷかりと煙管をふかしながら柱にもたれかかるいつもの体勢で高杉が呟いた。 じろりと隣に座している総悟が高杉を見やる。 「なんですかぃ」 あれからもう一年の月日が流れた。 総悟がここへ来て二年。今や十七の歳を数える。 たった二年で驚異的に勢力を広げた土方家。 その影に、総悟の存在があるということはわかりきっていた。 「十四郎様の話はするななんて言っておきながら、そんなこと言うたぁいってえどういう了見ですか」 クク。 薄い肩が揺れる。 「俺はいいんだ、何言っても」 振り向きついでに身体を総悟の方へ向けて顎を取る。 強く唇を吸いあげてから顔を離した。 「どうするよ、常陸の長鳥と下野の三木親子に護らせてはいるけどもよ、ガンガン押されてるらしいぜ、そのうち泣きついてくるだろうよォ」 おもしろそうに総悟の瞳の中を覗き込む。 「そうしたらお前は出陣するってのか?出羽との戦いにも刀振り回せんのか?」 ニヤニヤと音がしそうなほど。 「出やす」 「無理すんな」 「俺は高杉軍の人間でさ」 「フッ・・戦の途中でかっ攫われちゃかなわんからな」 「あんれ、護ってくれねえんですかィ?」 「俺だってそういつもいつもテメエだけに目ェ光らせてらんねえっつの」 「愛情が足りませんねえ」 「それにお前はたまに呆けていやがるからな、ひょいと首根っこでもつかまえられて連れ戻されちゃあ面倒だ」 「俺はそんな簡単にかっ攫われたりしやせんぜ」 総悟の髪がさらりと流れる。 その亜麻色を気に入っている、煙管の煙の匂いが染み付いた指が掬い上げたのだ。 「手触りがいい」 梳いたり指に巻きつかせたりしながら、長い髪で遊ぶ。 「美しい髪だが、こうやって梳いていてもすぐに手の中から零れ落ちてしまう」 その言葉どおり、総悟の素直な直毛は高杉の男らしい指からさらりさらりと滑り落ちて行った。 「攫われねえでもお前はあいつを見たら、てめえで馬を駆って戻って行っちまうだろうからな。感動の再会を手助けしてやる気はねえよ」 「んなアホな、俺ァてめえの意思でここに来たんですぜ」 「土方を護るためにな。だが、果たして今のあいつが大人しく俺に滅ぼされるかどうか」 つ、と何度も総悟の髪を梳く指から、その髪が離れる。 総悟が立ち上がって、廊下の手すりから城下を見下ろした。 この白鷺城を囲う深い緑の向こうに見える、活気のある城下町。 人々の姿までは見えないが、まぶしい光を受けて、この武蔵の国全体が生きているという実感が総悟にも感じられた。 「俺も、ここからの景色が、好きになってきやした」 音もなく背後に近づいた高杉が、総悟の襟から右手を滑り込ませる。 合わせの奥がごそりと動くと総悟の眉が切なげに寄った。 「女の乳のように、敏感だ」 耳元に息を吹きかけられて小さく震える。 息を止めて、震えと声を抑えようとするが、強く肉芽を捻られて己の意思とは関係なく身体が跳ねた。 背後で薄く笑う声。 「日が高ぇうちは・・・・んはっ・・・やめ・・」 「やめられるか」 クククと独特の笑い方をして、胸元から手を引き抜いて総悟の袴の紐を解く。 解いておいてずり落ちそうになる袴を左手で押さえて、あえて腰の側面の合わせから手を差し入れて直に総悟の一物を握った。 総悟には戦場に出る時以外、下帯を着けることを許していなかった。 今も袴の下の着物をかき分けると、ふるりと所在無げにぶら下がる物を容易に見つけることができた。 高杉の掌の中で生命の源を主張する温もり。 総悟の興奮をゆっくりと育て上げて、それから総悟自身に交わりを強請らせようと、高杉の指がゆっくりと動きを開始した。 |