これぞまさに珍味[3/3]



二人に遅れてミラさんが居るであろう滝の下へ走る。
すると、ミラさんは空中で拘束されていた。
おそらく精霊術と思われるそれは、アルフレドを殺す為に奴を追跡したとき見たことがある女性。
ミンクさんだったっけな。
…にしても大胆な格好。


「…ハムの製作過程ってあんな感じだったよなぁ。人間も平たく言えば肉の塊だけど…さすがに食べる気にも料理する気にもならないや」

「何グロいこと言ってるんだ!?」

「アルヴィン、早く!」


ジュード君に急かされたアルフレドは、ミラさんとミンクさん(?)がいる場所から離れた右上の岩壁を銃で撃ち始めた。
ミンクさん(?)は首を傾げる。
俺も、首を傾げる。

一瞬ノーコンか?なんて失礼なこと…アルフレドだから失礼なことないだろうけど、考えてしまう。
だけど、その疑問はすぐ解消された。
撃たれた岩が動き始め、足を生やしたんだ。
どうやらあれは魔物だったらしい。

ミンクさん(?)は魔物に気づいて術を解くけど、遅かった。
ミンクさん(?)に魔物が突進して、彼女は滝つぼへと落下する。

解放されたミラさんが俺たちの元へ走ってきて、その後ろ…俺たちにとっての前方に戦意丸出しの魔物。


「まったく、乱暴だな!」

「そう言うなって。とにかくこいつを片付けようぜ!」


俺たちの所まで来たミラさんは、自身の剣を構えた。
俺も、おたまとフライパン…武器を握る。
良かった。包丁はまだ戦闘で試したことないから、きっと足手まといになっただろうし。

そうこうしていると、魔物の触手が俺に向かっていた。


「おっと…危ない危ない」

「油断しすぎだよ、イウ」


詠唱中のミラさんを庇うように立ち回るジュード君に呆れられた。


「ごめんね、ジュード君。…よし、じゃあいくよ!」


触手を避け、魔物の正面に忍びこむ。
そしてフライパンをしっかり握ると、調理するように振るった。


「ステイクフレア!」


フライパンの表面から炎の柱が出現し、魔物を炙る。
くっ…見た目は食欲をそそらないのに、いい匂いを…
ボアの肉は珍味って言われてるし、ブウサギだって食べれるんだし、もしかしたらすっっごくこの魔物も美味しいかも…?

ゴクリと思わず喉を鳴らす。


「イウ!!」


後方からミラさんに呼ばれて振り向くと、炎の弾が俺目掛けて…本来は魔物だろうけど、飛んできていた。
焦ってしゃがむと、魔物に直撃する炎。
…また、美味しそうな匂いだ。

くそっ、こんなのが続いたら俺…多分耐えられない!!


「ミラさん!早くやっちゃって!!」

「?…分かった。アルヴィン、行くぞ」

「ああ」

「「紅蓮剣!」」


二人の共鳴術技によって、魔物は倒れた。
そして、俺の理性もかなり崩れた。


「魔物が岩に擬態していたとはな…よく気づいたな、ジュード」

「……駄目だ、もう限界!」

「えっ、イウどうしたの!?」


いきなり大声を出した俺に驚くジュード君を構わず、俺はミラさんの肩に手を置いた。


「ミラさん!丸焼きと刺身、どっちがいいと思う!?」

「ふむ。私はしっかりと火が通った方が良いと思う。…だが、刺身も気になるな。刺身とは、魚介類を生のままさばいて皿などに盛り付けたものなのだろう?村の者は皆、焼いたものしか食べていなかったから食べてみたいな!」

「よし、じゃあ刺身にしよう!」

「任せたぞ、イウ!」

「ちょっと待てよおい!それって、あの魔物食う気だよな!?」

「や、止めなよ二人とも!!」


約二名反対する人がいたけれど、俺とミラさんが止まることはなかった。





to be continued,
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