5.好きとは言えない
自覚してからは、早いものだった。
出会った頃なんて、ニーニを重ねてしまっていたのに。
親友なんかじゃなく、もっと先の深い関係を築きたいとか思ったり。
けど……
自覚してからは、早いものだった。
初めて出会った時なんて、誰かと重ねられていたのに。
溢れてくる想いは止まらない。
けど…
「はっ……よし、また俺の勝ち!」
クロアは、尻餅をつくリオンに剣の切っ先を向けて笑う。
その息はリオン以上に荒い。
リオンは眉間にシワを寄せ、差し出される手を掴んで立ち上がる。
「いい剣の修行になるしいつも感謝してるぜ、リオン」
「………今日は四月だったか…」
「何勝手に嘘って決めつけてやがる」
じとりと睨むクロアの視線に物怖じせず、それどころか睨み返してリオンは言った。
「いつも僕に圧勝しているくせに、何が'剣の修行になる'だと…?」
「二回負けたことあるだろ?」
「それはクロアが風邪をひいているのに手合わせをしたからだろう!!」
「…そうだっけ?でも、剣の相手してくれてるのには普通に感謝してるから。ありがとう、リオン。おまえは最高の…親友だ」
ニコリと微笑み、リオンに言うクロア。
リオンは不服そうに顔を歪める。
(なぜ、悲しそうに笑うんだ…っ)
笑顔の仮面を被り続けるクロア。
だが、'親友'のリオンにはお見通しだということに気づいていない。
(想いは届かない。リオンには、マリアンがいるんだ…。)
リオンとクロアの思考が重なる。
この'親友'という関係を崩さない為にも__
好きとは言えない(それは互いの為の、己への戒め)
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