3.はなして。嘘、はなさないで。
「リオン!入るぞ!」
「ば、馬鹿!止めろ!!」
ノックもなく、扉が開けられた。
「あー…ごめん?」
風呂から出たばかり僕は、まだ着替えもちゃんと終わっていなかった。
パジャマの胸元はまだ閉められていないし、髪も拭いている途中だったんだ。
なのに、悪びれることなくクロアは部屋に入ってくる。
しかも真っ直ぐに、豪快に僕のベッドに寝ころんだ。
「退け!ここは僕の部屋なんだぞ!!」
「いいだろ?まだベッド使ってねぇんだし。それとも、リオンはそんな格好で寝るのか?エロいな、絶対誘ってる」
クロアの指が胸元を差していることに気づき、急いでボタンを閉める。
「とにかく今すぐ退け!!」
「うるせぇな…そうだ」
何か思いついたのか、クロアは起き上がる。
僕は漸く退くのかと僕は安堵し、息をついた。
が、瞬間グイとベッドに倒される。
「クロア!!」
「問答無用」
腕と足で拘束されロクな抵抗できず、クロアの思うがままになっている。
「じっとり濡れてること以外は最高の抱き枕。あったかい…」
「どうでもいいからさっさと離せ!!//」
「顔真っ赤にして言われても説得力ねぇっての」
抱きしめる力が増し、さらに僕の顔は朱くなったのだろう。
見下ろしてくるクロアの顔がとてもニヤついているから。
「離せっ!!」
「そんなこと言って、実は俺に抱きしめられたかったりして?」
「そんなわけあるか!!///」
ついムキになり、否定的な言葉を、叫んでしまう。
気持ちに反して。
離せ。そんなこと嘘に決まっている。
心地よいこの距離を手離したくない。
だけど"離すんじゃない"なんてこと、言えるはずがない。
「離せ!!」
「拒否権を発動する。…あ、リオンには無いからな、拒否権」
「ふざけるな!!」
どうやら僕はまだまだ素直になれないようだ。
はなして。嘘、はなさないで。(この距離が心地よいなんて言えない…)
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