1.あと一歩、踏み出せば
退屈。
リオンに出会うまでは研究が俺の全てだった。
なのに、研究も実験も身に入らない。
心が何処かへ行ってしまっているような。
リオンのことで頭がいっぱい。
むず痒いような理解不能な感情。
こんな感情、俺は知らない。
おかげで、何度失敗して部屋が爆発したか。
「…はぁ」
思い出すだけで自然とため息をついてしまう。
『クロアの幸せがどうなろうと構わないんだけどさ。…危ないよ?』
「は?……!?」
手元で無意識に混ぜていた薬品が光を放っていた。
「し、しまった!」
言うのが早いか、大々的な爆発音が、耳を通った。
「けほっ…」
『このところ調子悪いね』
まったくだ。
リオンに狂わされてる。
「…いっそのこと、言ってしまえば楽になれるのか…?」
『何が?』
なんでもないとディサピアに返し、後片付けを開始する。
理解できない俺自身の深層心理。
どうすればいいかなんて、なんとなくだけど分かってる。
ただ勇気がないだけ。
あと一歩、踏み出せば(ため息は消えるだろうか?)
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