優ちゃん | ナノ

 06 赤薔薇

「驚きました。#なまえ#あんなに力強かったです?」

「…なんか変だった?」

「変というか、いつもよりキレが良かったというか…、簡単に言えば強くなりました?」

「どうだろう?自分じゃわかんないや」

「ん〜、そうですかぁ〜?」

確かにさっき現れた四騎死を刀で切った時いつもより簡単に切れた為疑問に思った。
これも吸血鬼になった事による作用だろう。
しかしシノアや他の皆にバレるわけにはいかない。
ましてやごんべ自身吸血鬼になった事実を認めたくない為気付かない振りをした。


「ななしごんべ。新宿中央軍官舎 一号執務室へ出頭しなさい」

「え、なんでごんべが柊家から」

「……」
ごんべは察していた。
柊家上層部は私が何をされたのか、今私の身に起こっている事を知っている-または疑っている。
不安げに私を見つめるシノアを慰めるよう笑顔を顔に張り付け いってきます 、と踵を返した。

「失礼します。ななしごんべ只今参りました。…入っても宜しいですか?」

「お待ちしておりました。暮人様は中でお待ちです。」

入るよう促され、三つ編みを片方に寄せた髪型の女性の後ろを歩く。
シンプルやシックな物で纏められている高級感漂う部屋だ。こんな部屋に呼ばれるような事をされた覚えは1つしかない。この事を言うべきか、言わないべきか。
最善なのは隠し通す事だろう。帝鬼軍なんかに吸血鬼がいれるはずがない。
帝鬼軍中将相手に騙し通す事なんて不可能に近いに決まってる。
色々な考えが頭を回り、気が付けば目の前に日本帝鬼軍中将 柊暮人が座っていた。

「ななしごんべ、お前は百夜優一郎が吸血鬼と繋がっていると思うか」

「…いいえ」
自分の事を聞かれると思っていた為拍子抜けしそうになるが表に出すのを堪える。
それにしてもなぜ優一郎君が。
ごんべはあの時、誰よりも早く気を失った為何があったのか把握していない。
だから暮人が何故優一郎を疑っているのか理解が出来なかった。

「何故彼を疑っているんですか?」

「お前が気を失っている間、百夜優一郎は自我を失い覚醒した」

「覚醒…?」

「詳しい事は他に聞け。もうお前に用は無い」

もう私と話す気は無いのかくるりと背を向ける暮人様にお辞儀をし部屋を出る。
柊家に知られていないという事は帝鬼軍にも知られていない事だろう。
ホッとすると同時にこの事実を1人で抱えていかなければならない重圧に押し潰されそうになった。
ふと、窓に映る自分と目が合う。
しかし感じる違和感に思わず声が出る。

「目が…、赤い」

前までの瞳の色とは違う深紅の鮮やかな赤がそこにはあった。
吸血鬼であることを主張するかのような赤。

「まるで血の色みたい…」

血。
無意識に出た自分の言葉に僅かに反応するかのように喉をゴクリと鳴らす自分から目を背けるようにその場から逃げ出した。

(もう人じゃない)




prev / next