優ちゃん | ナノ

 01 さびしい

はあ、と息を吐けば白く変化したそれは風に流されて消えていく。
季節は12月。もう冬本番だ。
やはり帝鬼軍の制服だけでは寒かった。
体の芯から凍えるような寒さに耐えるべく自らの両腕を擦った。
「こんな所にいたら風邪引くぞ」
「あ、百夜くん」
部屋にいなかった私を探してくれたのだろう。
彼が持ってきてくれたブランケットをありがたく受け取り肩に掛けた。
「ごんべはこんな時間に何してたんだよ」
「んー、ちょっと眠れなくって。百夜くんはどうしたの?」
「あー…、俺もそんなところ」
「そっかー」
彼の気の抜けた返答に少し笑うと隣からじと目でこちらをみる百夜くん。
それがまたおかしくって笑いが止まらないでいると彼に頭を叩かれた。
そしてそのまま撫でられた。
「お前の事だからどうせ明日の事でも考えてたんだろ」
明日。
明日は吸血鬼と戦うのだ。
今までとは度合いが違う危険を伴う戦いで、最悪の場合は死人が出るかもしれない。
もしかしたら私の知り合いが死ぬかもしれない。
そして自分も。
「……もし明日死んじゃったらって考えると少し怖くなっちゃって」
「馬鹿かお前は」
大きくため息を吐いた彼は私をぎゅっと抱き締めながらこう言った。
「お前は弱くないし絶対に俺が守ってやる。だから自信を持てって」
な、と明るい笑顔で言った彼の言葉は私の心を軽くした気がした。
「……うん、ありがとう」
私の笑った顔を見ると、彼はまた笑った。
どきん、胸が高鳴った。
(あれです、恋煩いです)

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