与一 | ナノ

 04

ピピピピ―――

朝日が射し込む中、目覚まし時計特有の耳に障る音が流れる。

心地よく布団にくるまれて幸せだったごんべはそれに邪魔されて眉を潜める。

だが忙しなく鳴り続ける奴に勝てるわけもなく、仕方なく目を開け時計をみる。
しかしそこには集合時間の数十分前の時刻が刻まれていた。

ごんべの眠っていた脳は覚醒した。





「遅れてすみません!!」

「初日に遅刻とかお前やる気あるのかよ」

「いで!」

初日に遅刻してしまったごんべはグレンに頭を叩かれた。
しかし遅れた自分が悪いことは事実、なので「すみません…」と謝ることにしたごんべ。
……、向こうでニヤニヤこっちを見ている優一郎君は後で蹴っとこう。


三宮三葉を加えた6人に与えられた任務は次の通りだ。
原宿にて吸血鬼の家畜となっている人々を救い、新宿へむかうこと。

壁の外に出てそっと息をのむ。

かつて高くそびえ立っていたビル郡は崩れ、アスファルトの地面は所々陥没している。

何回か外に出てはいるが、いつになってもこの景色は慣れなかった。
ごんべは顔を歪ませた。

「ごんべちゃん、そんな顔しないで?」

「あ…、与一君」

目の前には心配そうにごんべの顔を伺う与一。
そんな与一の心配を他所に、ごんべはあろうことか違うことを考えていた。

学校の制服よりこっちの制服の方がいいな、とか。
前髪帽子のなかに入れるんだな、とか。
か、かっこいいな…、とか。

な、何を考えてるんだ自分は!
我にかえったごんべの顔に朱がかかる。
そんなごんべを見た与一は更に慌てた。

「いや!大丈夫、大丈夫だから!」

「でも顔赤いよ?」

「あああ言わなくていいよ!」




―――――




原宿に着いたら小さな女の子がヨハネの四騎士から逃げていた。
奇妙な光景だ。

優一郎は助けにいこう、と意気込んでるがシノア、三葉、ごんべは黙って考え込んでいた。

「なんだよお前ら!助けに行かないのか!?」

「多分あれは罠だね …」

「はい。化け物の前に餌を放って、助けにきた人間を捕獲する。吸血鬼がよくやる手です」

「んなことどうでもいい!俺らはどうするんだよ!」

「……だから待機だ…!」

悔しく、気まずそうに顔を下げなから呟く三葉に優一郎はキレた。

それからの優一郎の行動は速かった。
襲われそうになる子供の方へ一気にかけて行き、抱き抱えたかと思えばその子供を大空へ投げた。

のんとかあの子を保護しなきゃ、そう思ったごんべはその子供の落下点に走りキャッチする。

しかし子供とはいえ重いので、女一人では抱えられない。
キャッチしたはいいものの、バランスを崩し転んでしまった。

「あっ!大丈夫!?」

子供は大丈夫だろうか?、腕にいる女の子に聞くとどうやら怪我はしてないらしい。
ほっと息を吐き周りを見渡せば皆が戦っていた。

吸血鬼には優一郎、シノア、三葉が。
ヨハネの四騎士には君月が。
そしてごんべと彼女の腕の中にいる子供を守るようにして前に立つ与一が。

「ごんべちゃんは僕が守るよ!」

( 期待するくらい、いいですか? )

prev / next