14◎夢の楽園【斎×主】 
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「屯所からお越しの斎藤はじめ様。屯所からお越しの斎藤はじめ様?お連れ様がお待ちです。至急、シンデレラ城までお越し下さい」
放送が流れると斎藤は眉を寄せて、呼び掛けた者を探してみる。
「ここは、どこなんだ…」
周囲の人々も首を傾げ、不思議そうに空を指差していた。
何者の仕業か皆目検討もつかないが、斎藤は心してシンデレラ城に向かう事にした。
アスファルトの固い地面に、甘い香りの園内をぐるりと見渡すと呟く。
「しんでれら城とはどこなんだ…」
城と言うからには大きな建物に違いないが、どこもかしこも建物は大きい。
「天守は…あれか!?」
斎藤は更に選択を絞り、突き出た主張をする白い建物に狙いを定めた。
人混みを掻き分け、写真を撮る家族連れを睨み知った顔を探した。
はしゃいだ子供がポップコーンを落とすと、ホウキを持った女が静かに掃いて片付けた。
「どこにでも身分の差があるのだな…」
斎藤は悲しげに俯くと、女に労いの視線を送る。
「娘、この辺りに城はあるか?」
「はい?シンデレラ城でしょうか?」
「そうだ」
「では、こちらのお城になります」
斎藤は真っ白な洋風の城を見上げ驚くと、元気な声に振り返った。
「いたいた!」
『はじめさーん!』
「ひなた!秋吉!無事だったか!」
ひなたが胸に飛び込むと、斎藤は抱き締め、安堵の溜め息を洩らした。
「いや、はぐれただけだし」
意外と冷めた弟は、呆れてポップコーンを頬張る。
「ひなた、これは何だ?」
ひなたが頭に付けているミニーの髪飾りに、斎藤が目を細めて顎を摩る。
『耳ですよ』
「見ればわかる」
ひなたは手を振りながら歩くミニーを指差して笑うと、斎藤も困ったように笑った。
『はじめさんにもプレゼント』
斎藤の頭にミッキーの耳をつけると、心底恥ずかしいのか顔を真っ赤にした。
「あ、秋吉につけてやれ。きっと喜ぶ」
「俺はグフィー派だから」
秋吉は大きな尻尾を見せると、斎藤は指をさした。
「交換してやる」
「止めろよ!はじめさん!」


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