12◎離さない【斎×主】 
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「黙れ!黙れ!黙れ!」
斎藤は肩に抱き上げていたひなたを乱暴に芝生へ下ろすと、地面に押さえ付け唇を噛み締めた。
気迫に押されてひなたが身を固くすると、斎藤は眉を潜めて拳を握り締めた。
「何だその目は…」
囁くほどの声に含みのある物言いは、斎藤の激しい怒りを表している。
ひなたは訳がわからずただ狼狽えるが、怯えた姿に斎藤は怒りが込み上げた。
乱暴に手首を掴んで口付けると、ひなたは息苦しさに顔を背け、逃げようともがいた。

問題は大久保夫人の一言によるものだ。
常日頃、斎藤の冷たさには不安を感じていた。
大久保夫人曰く、《産後の女は母扱い》だ。
確かに、斎藤はこのところひなたを女扱いなどしない。
何かを頼むにしても、会話にしても、子供中心の生活なのだ。
だからひなたが不安に思うのも仕方の無いこと、これはまさに出来心だった。
ひなたは嫉妬をさせようと、街にいた一人の歌舞伎役者に声を掛け、劇の話を始めるが、予想以上に話しが弾んでしまった。
何もそこまで腹を立てる話ではないのだが、ひなたがついうっかり見栄を張ってしまったのだ。
「ご主人は?」
『おりません』
このやり取りは大変まずかった。
冷ややかな怒気が放たれると、ひなたはひょいと担がれ今に至る。


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