10◎二人でお留守番【斎×主】 
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朝も早くからひなたは身支度に追われていた。

「本当に行ってしまうのか?」

斎藤が寂しげに玄関に佇み、その足元には小さな秋吉が指を咥えていた。

「だ…」
『なーに?』

ひなたは振り返らず、秋吉の頭を撫でる。

「だ?」
『そうよ。留守番しててね』
「だ!」
『それはお父様にお尋ねしなさい』
「何故わかる…」
『じゃあ、出掛けてきます。秋吉をお願いしますね』
「ああ、ゆっくりしてこい」
『ありがとうございます』
「早く帰っても良い」
『……』

ひなたは下駄を履き、風呂敷を抱えると笑顔で手を振った。

『じゃあね、秋吉』
「にゃ!?にゃ、にゃにうえ〜!!」

秋吉は後ろを向いて玄関を降りようと、短い足を伸ばしモゾモゾと動く。

「こら、待て。どこへ行く」
「にゃあ!!!」
「にゃあではない。母上を見送る…「にゃにうえーー!!」」
「……秋吉、母上だ」

斎藤に捕まり肩に乗せられると、呆然とひなたの背中を見送った。

「ひ…」
「あ、秋吉?ま、待て」
「ぎゃ〜ーーーーー!!!」

充電完了と共に、鼓膜が敗れそうなほどの大きな声で秋吉は泣き出した。
大粒の涙が流れ咳き込むと、斎藤は眉間にシワを寄せながら背中を撫でる。

「よしよし。母上は夕刻には戻る。たまにはゆっくりと出掛けさせてやらないとな」
「だ」

秋吉は啜り泣きながら斎藤の胸を押し、拒否の合図を送る。

「……」


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