9★昔の女【斎×主】 
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洗濯を干し終わりひと段落していると、庭から賑やかな声が聞こえてきた。
何事かと覗き込むと沖田と斎藤、秋吉が桜を愛でていた。
三人は何やらヒソヒソと厭しい笑いで、酒を煽っている。
沖田がひなたに気が付き手招きをすると、酒を片手に掲げて見せた。

「ねぇ、ひなたちゃんもお花見しない?」

満開の桜は見事なまでに美しく、見上げた者の心を奪う。
ひなたが首を振り酒を断ると、沖田が三色団子を差し出した。

「お団子なら食べてくれる?」
『ええ。楽しそうになんのお話しですか?』

ひなたが眉尻を上げながら沖田の隣に腰掛けると、斎藤と秋吉は途端に顔色を曇らせ地面を凝視する。

「今、はじめ君の筆おろしの話しをしていたんだよ」
『筆おろし?』
「そ、総司!!」
「沖田さん!!」
『何それ?』

ひなたが顔を覗き込むと、斎藤はまるで蛇に睨まれた蛙のように冷や汗をかいていた。

「女性を初めて抱くことをいうんだよ」
「「ー!!!」」
『へー……』

ひなたも若いとは言えず、斎藤以外の経験がある為かお互い触れられずにいた話題だ。

「昔の話だ」

斎藤は平静を装い、盃の酒を飲み干す。

『……どんな人でした?』
「!!…………」

他意もなく尋ねたつもりだったが、斎藤は予想外の反応を示した。
相手を思い出したのか、みるみるうちに首まで真っ赤に染まり上げた。

「は、はじめ君。その反応は不味いんじゃない…?」
「ー!!」

沖田の言葉に緩む口元を抑え、必死に誤魔化そうと顔を背ける。
いつもならば男の見栄の張り合いにいちいち腹を立てることはないのだが、今日はどうしてこれ程胸が騒ぐのだろうか。

『…余程、素敵な方だったんですね』
「お、お前に似ていた!」
『……』

咄嗟に出た言葉に偽りを感じられず、それがよけいに苛立たせてしまう。

『じゃあ、私は変わり?』
「ち、違う!」
「「……」」

和かに笑っていた沖田も秋吉も、尋常ではない重苦しい雰囲気に静かに席を立つ。

「ま、待て。どこに行く」

沖田の着物の裾を掴んだ斎藤は、小声で囁いた。

「元はと言えばお前達から話し始めた事だろう。何とかしていけ」
「悪いけど、夫婦喧嘩は犬も食わないっていうでしょ」
「誰のせいだ、誰の!?」


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