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『ご主人様、お帰りなさいまて♪』
「…」
頬を染めてお店に入ってきたはじめを出迎えると、奥へと案内する。
レースを付けたひらひらの短いメイド服に包まれたひなたは飛びっきりの営業スマイルだ。
─また来た…。
事の発端は数日前の秋吉への相談から始まる。
「手っ取り早く稼げるバイト?」
『そ。バイトは禁止じゃないし』
「んじゃ、いい店知ってるよ!」
こうして紹介された店というのが、今流行りの《メイド喫茶》だ。
喫茶店のバイトと内容が変わらないのに時給が高い。
おいしい話には裏があり、言葉使いに決まりがあるのだが、慣れればさほど苦にならない。
はじめに知られれば厄介な事になると隠していたが、お喋りな愚弟のお陰でなぜか当初の目的を忘れた彼が常連客になりつつある。
テーブルに運ばれたオムライス(チンしただけ)が彼のお気に入りのようだ。
メイドがケチャップで絵やメッセージを書いてくれるオプション付き。
『ご主人たま、ケチャップで…』
「…何でもいい」
『……』
ひなたは笑顔でケチャップを握り締めると、はっきりと三文字でメッセージを書いた。
《か・え・れ》
ビクッと肩を震わせたはじめには、ワンコのような耳や尻尾が見える。
『何で常連客になってるんですか!?私は海に行く為のバイトしてるんですよ!』
殆ど唇を動かさず笑顔ではじめを叱ると、プルプルと涙目で震えた耳はパタンと折れ尻尾は丸まる。
『オムライス食べたら帰って下さい』
「…だが、他の客につくのだろう」
『…』
ふてくされた頬に口付けたいが、他の客に誤解されかねない。
グッと堪えてテーブルの下で足を撫でる。
『いい子にしてね』
「─!」
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