13◎甘えて欲しい【斎×主】 
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背中を向けた互いの心はすれ違い、想い合う故にボタンを掛け違えた。
時代の生活の違い、更に慣れぬ子供らの世話や、子供らの体質の違い。
誰に弱音を吐けるのだろうか。
親も無く、弟は死に、明治で一人暮らす。
心の支えは彼だけだった。
それがいつの日か子宝に恵まれ、忙しさに感謝を忘れてはいないだろうか。
ひなたはピタリと足を止めて、床を見つめる。
斎藤が生きてる。
ただそれだけで良かった。
愛されて傍らで髪を掬いながら、子供らを愛でる。
なんて、贅沢過ぎる幸せを頂いたのだろう。
忙しさが、なんだ。
疲れが、なんだ。
生きていなければ、二人が出会わなければ、愛されなければ、何も生まれなかった。
ひなたが勢い良く後ろを振り返ると、真っ黒な影に視界を奪われた。
『あ…』
斎藤が追い掛けたひなたを抱き締めると、胸がぎゅっと締め付けられる。
「お前が嫌だと言っても離しはしない」
ひなたは斎藤の肩に顔を埋めながら、鼻を啜った。
「お前を労わるのは、大切だからだ。煩わしいだの、出来が悪いだのと考えた事もない。お前はそれを負い目に感じて、いつも俺に頼らぬが…。俺はそれ程までに頼りないだろうか…」
ひなたは目頭が熱くなり、唇を噛み締め首を振った。
「では…俺が煩わしい…か?」
躊躇う様にひなたは吹き出し肩を震わせると、斎藤はフンと鼻を鳴らして怒りを表した。
ダラリと流れていたひなたの腕を掴むと、背中に叩きつけて抱き締めさせ、斎藤も摺り寄せるようにひなたを抱いた。
「ひなた、愛してる…。頼むからもう少し俺を頼ってくれないか」
瞳から涙が溢れると、斎藤は唇で掬い、頬に口付け唇を啄ばんだ。
ひなたが斎藤の頬に手を添えると、何度も角度を変えて口付けする。
斎藤はひなたからの口付けに微笑すると、目を擦りながら身体を任せて甘える。
「…ベッドに行かないか?」
真昼間からの爆弾発言に、ひなたは笑いながら口付けを続けると、斎藤は了承だと判断し抱き上げた。
「父上!?母上!?どちらへ??」
「………秋吉」
斎藤がひなたを抱き上げたまま振り返ると、眉尻を上げて顎で庭を指す。
「素振り一万だ」
「い!一万!?父上、夜になってしまいます!!」


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