![](http://img.mobilerz.net/sozai/1344_w.gif)
2ページ/4
ひなたもまた隊士達の面倒をよくみていた。
剣術は人に教えられる程の技術は無いが、体術自体は好んで庭で演舞を見せていた。
柔らかくしなやかな身のこなしは、舞妓の優雅さや華やかさとは違う。
着物が舞い上がると視る者を惹き付けた。
《柔よく剛を制す》
腕試しに稽古を名乗り出る者もいたが、斎藤がそれを許さなかった。
これもまた疑いを作るきっかけとなる。
斎藤も不穏な動きを察してか、ひなたに一人の隊士に深く関わるなと忠告をした。
そんなある日の午後。
「好いた者に恋仲の相手がいたらどうします?」
ひなたは熱心な隊士の一人から相談を受けてしまう。
思わず頭を抱えた。
『─でた…』
呟きは相手に聞こえなかったようだが、随分と真剣な眼差しで答えを待っていた。
彼は新八の組の隊士で、背も高く筋肉質で、とても真面目な青年だった。
ひなたも片思いの辛さはわかる方だ。
だからこそ下手に気を持たせるような事を言うわけにはいかない。
叶わぬ想いならば、冷酷と言われようとも伝えなければ。
『…どなたの事かはわかりませんが、恋仲ならば諦めた方が良いのではありませんか。』
「─!…ですがっ!!お慕いしておるのです!!」
ひなたの手を大きな手が握り締め、まるで懇願するように見つめられる。
『あ、あの!お待ち下さ…!』
人の気配を感じて振り返ると、通りを塞ぐように佇む二人の間に斎藤が立っていた。
「一体…、何の騒ぎだ」
繋がれた手を凝視しながら低い声で男に圧を掛けると、彼は慌てて手を離す。
そして視線を逸らし、顔を真っ赤に染めると斎藤が眉を潜める。
『ま、待って下さい!これは…何でもないんです!ただ相談を受けていたんです!』
「─相談?…何の話だ。」
その視線は真っ直ぐ彼を睨み、今にも抜刀しそうな威圧をかける。
『こ、恋バナ?』
ニコッと可愛らしく分からないだろうと思われる単語を出してみたが、明らかにイラッとした反応に秋吉だなと想像がついた。
これはまったく逆効果だった。
「斎藤組長…。お許し下さい…」
←戻る|目次|次へ→
today 48