11◎密かな恋【原×主】 
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原田が物陰から姿を現すと、気迫に押された男達がゴクリと唾を呑みこんだ。
「用が済んだなら、さっさと行っちまえよ」
「ー!」
顔を見合わせ慌てて倒れた者を引っ張りあげると、足をもつらせながら男達は走り去って行った。
『左之さん…』
「…元気そうだな…。ひなた」
口元を抑え信じられないと全身で喜びを表すひなたは、着物の裾が捲れるのも直さず、通りの向こうから原田の元へと走り出した。
勢いに押され思わず原田も両手を差し出してしまうと、その胸目掛けて一直線に飛び込んだ。
『左之さーん!!』
ーギュ!!
背中に腕を回して頬を擦り寄せると、懐かしい匂いに原田は目を瞑り、ひなたは肩を震わせ泣き出した。
「元気そうだな…。無事で。何よりだ」
声を押し殺して泣くひなたの頭を優しく撫でてやると、しゃくりあげながら漸く顔を上げた。
「はは!何だよ、お前。ひでー顔」
『もう!左之さん!』
「悪りぃ、怒んなよ。それにしても、お前は変わんねーな」
泣いた顔、澄んだ声、怒って口を尖らせる仕草、全てが愛しい。
『べっぴんさんでしょ?』
「ああ、べっぴんさんだ」『へへ…』
原田はひなたの頭を撫でながら、懐かしそうに目を細めて笑った。
「茶でも飲んでくか?」
『はい!』
向かいの茶屋に腰掛けると、まるであの頃に戻れたような気がしてしまう。
鼻をすすりながら恥ずかしそうに髪を整えるひなたに、斎藤の訃報をいつ切り出すべきか迷っていた。
「なあ、ひなた」
『はい…』
「斎藤のことだが…」
『はじめさん?…彼がどうかしました?』
心配していたよりも遥かに明るく答える彼女に、まさか便りは届かなかったのだろうか。
遠慮がちにお悔やみを告げた。
「…残念だったな…」
『残念…ですか?』
「いや、武士として散るのならば、あいつも本望だよな」
『も、燃え尽き症候群ですか?』
「は?何言ってんだよ。斎藤は、その…戦死したんだろ?」
『え?今朝も元気に出掛けて行きましたよ』
「な、何だって!?」


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