10◎二人でお留守番【斎×主】 
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夕暮れ時、ひなたが玄関から声を掛けた。

『ただいま〜』

元気な返事は無く、庭へと回ると部屋を覗き込んだ。

『あら…?』

畳に大の字で寝息を立てる夫と、縋り付くようにくっつく息子を見つけた。
ひなたは笑みを堪えて、干してある洗濯物を下ろしにかかる。

「…帰ったのか」

廊下に寝ぼけ眼で頭を掻く斎藤は、柱に持たれながら両手を出した。
ひなたは迷い無く洗濯物を渡すと、斎藤はポイっと畳に放り投げまた手を出す。
ひなたが戸惑いながら斎藤の胸に引き寄せられると、強く抱き締められた。

『大変だったでしょ…。ありがどうございました』
「母とは辛抱強いものだな」
『…あなたと秋吉はちゃんと向き合う必要があったんです』
「そうだな…」
『私はとっくに和解しましたよ』
「俺は…、まだまだ上手くいかぬよ」
『大丈夫これからです。いい子にしてました?』
「盥で溺れた」
『それから?』
「味噌汁もひっくり返す」
『中身が残ればまだマシ』
「引き出しを…、手を挟みながら閉める」
『ああ、地球の子供は必ずやるんですよ。あとは?』
「降ろすと起きる」

ひなたは一瞬間があくと、腹を抱えて笑い出した。

『全然大丈夫。普通です。いい子にしてましたね。じゃあ、何して遊びました?』
「ん…。積み木で遊んだ」
『それから?』
「虫を捕まえた」
『成る程。だからあんなにぐっすり寝てるのね…?いない…』

二人で顔を見合わせ、部屋を覗き込むと降ろしたばかりの洗濯物に飛び込み寝転がる秋吉がいた。

『こら。シワになる、どきなさい。一緒に畳むよ、おいで』
「だ」

上手に諭すと秋吉は畳む真似をして、ひなたの手元を見ていた。
元気なひなたの声に斎藤も頬を緩ませ、三人仲良く洗濯を畳み出す。

「秋吉、シワを伸ばしなさい」
「だ」
『あら?いつの間に仲良くなったの?』

ひなたが口を尖らすと、秋吉も真似をして口を尖らせた。

「にゃ、にゃにうえー」
「秋吉、母上だ」
『それは、あなたの口癖ですよ』
「……」

斎藤は目を瞬かせ、俯き微笑すると秋吉の頭を嬉しそうに撫でた。

《何故》

「ひなたを追い掛けまわすのも、俺のせいだろうか…」

斎藤の呟きはひなたの耳にもしっかり届いていた。


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