10◎二人でお留守番【斎×主】 
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斎藤は溜め息混じりに、秋吉を見つめ気合を入れた。

「よし、では洗濯から始めるとしよう」

小さな子供がいれば洗濯も自然と多くなる。
斎藤は屯所での山の洗濯を思い出し、口元を緩ませると秋吉が眉を潜めて見つめる。

「ああ、すまない。思い出し笑いだ」
「だ」
「……」

斎藤が盥に水を組み上げていると、元気な鼻歌が聞こえてきた。
嫁と同じ歌い方に微笑すると、後ろでウロチョロしていた秋吉が消えた。

「秋吉?」

ーぶくぶくぶく…

「秋吉!!」
「…げほげほ!げほ…。ギャー!!」

何をどうやれば、盥程度の水位で溺れる事が出来るのだろう。
斎藤は背中を撫でであやしながら、ひなたの苦労を労う。

「何にも進まぬと言っていたな…」

仕方なく背中におんぶをして、洗濯を始めた。
世話しなく動けば、背中の秋吉もウトウトと居眠りを始める。
斎藤は軽く揺すってやると、首はコテンと折れて眠ってしまった。
今のうちにと洗濯物を干し終え、昼餉の支度もすませた。
一段落して布団に寝かせようと降ろしたとたん、パチリと目を開ける。

「……ひ、昼餉にするか…」

丁寧に用意したご飯の半分は落とされ、片付けている間に散らかす。

「これを毎日終わりなく続けるのか…」
「ギャーー!!」
「今度は何だ!?」

秋吉は引き出しに左手を入れたまま、右手で閉めている。

「何をしている!秋吉、いい加減にしろ!」

斎藤は溜め息混じりに、引き出しを閉めると秋吉が泣き出した。

「わからん!お前が何を欲しいのか俺にはわからぬのだ!」

秋吉は泣きながら訴えるのだが、斎藤には言葉が理解できない。

「何で俺には懐かないのだ…」
「ごめ、な、しゃい」
「否、咎めているわけでは…」
「はは、うえー…」

泣きじゃくる秋吉の頭を撫でで、斎藤は抱き寄せた。

「怒鳴って…、悪かった。お前の母上は大したものだ…」
「だっこ…」

息子の言葉に漸く彼が欲しがったものを知る。

「こうすれば、良かったのだな…」

斎藤は秋吉を抱き上げ笑った。

「秋吉、何をして遊ぼうか」


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