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くたりと手が落ち、ひなたが力なく倒れると斎藤は抱き上げた。
深い溜め息を尽きながら縁側を振り返ると、沖田の嫌そうな顔と原田の苦笑が待ち構えていた。
ーパチパチパチパチ…
秋吉は一人スタンディングオベーションだ。
ひなたは自室で目覚めると、枕元に斎藤が座っていた。
『あっち行って…』
「ー!!ひなた…」
『話したくない…』
斎藤は顔を背けてしまうひなたの隣で、ただ何かを言いたげに目を泳がせていた。
『別に咎めてない。ただ…』
『私の知らないあなたを見て。悲しかっただけ…』
『あなたが…。私、以外の人を想って嬉しそうに笑うから…。悲しくて…』
目頭が熱くなり、女々しい自分に嫌気がする。
『私に似てるって言うから…。私が似てたから、側にいてくれるのかと…』
「それは違う!…お前は、お前だ…」
『ごめん。もう話したくない。そっとしておいて。お願い…』
ひなたは両手で顔を覆うと、指の間から涙が流れた。
「ひなた…。俺もお前の過去にいつも嫉妬している。それに…」
「た、大切なのは…。最初の女より。最後の女だろう」
『……。はは…。何それ…』
《最後の女》
ひなたは涙を拭うと、斎藤の膝に置かれた手を握り微笑した。
『今は、それで許してあげる』
「……」
ホッと胸を撫で下ろす斎藤は、二度とひなたに酒を飲ませまいと誓うのだった。
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