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大きな月が、湯船に写し出されると二人は夜空を見上げた。
『おっきな、お月様』
「手が届きそうだな」
『私、あの月を捕まえられますよ』
「…月を…か?」
『そう!見てて』
ひなたは親指と人差し指で空に浮かぶ月を挟むと、斎藤に見せた。
『ほら、捕まえた』
斎藤は目を丸くしたが、微笑しひなたの肩に顎を乗せると指を覗き込んだ。
「ああ。可哀想に…。月までもがお前に捕まってしまったのだな」
『……あの日、捕まったのは私の方です…』
ひなたの伸ばされた腕をなぞる様に引き寄せると、腰に腕を回し耳の後ろに口付け、ひなたも斎藤の頬に口付けた。
『んんーっ…嬉しい?』
「ひなた…」
ひなたは斎藤の腕をすり抜けると湯船に浸かりながら、降り積もった雪をかき集め何かを作り出した。
「身体を冷やすぞ」
鼻歌が聞こえ、斎藤が声をかけてもやめそうにない。
『出来た!♪』
「…何だそれは?」
『雪だるま』
「ああ…。見ればわかる」
『こっちがはじめさんで、こっちは私。可愛いでしょ』
可愛いとは言い難い普通の雪だるまだが、腰に携えた木の枝の刀に気付くと笑みが零れた。
「愛らしいな」
『チャチャチャチャン♪』
リズミカルに歌を歌い出すと、二つの雪だるまを引き寄せ口付けさせる。
『冬ソナ〜♪』
ひなたは嬉しそうに笑いかけるが、斎藤は意味がわからず頬杖をつきながら眉尻を上げた。
だが、やや合って笑いながら照れ臭そうに目を逸らした。
「お前は本当に…。飽きがこない」
冬ソナの曲を歌いながら雪だるまで遊ぶひなたを、斎藤は覗き込むように口付けた。
「お前が望むならなんでも与えてしまいそうだ」
『じゃあ、ずっと一緒にいて下さい』
「…それは俺の望みだ」
ひなたが可愛くてたまらない斎藤だった。
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