8◎新婚旅行【斎×主】 
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大きな月が、湯船に写し出されると二人は夜空を見上げた。

『おっきな、お月様』
「手が届きそうだな」
『私、あの月を捕まえられますよ』
「…月を…か?」
『そう!見てて』

ひなたは親指と人差し指で空に浮かぶ月を挟むと、斎藤に見せた。

『ほら、捕まえた』

斎藤は目を丸くしたが、微笑しひなたの肩に顎を乗せると指を覗き込んだ。

「ああ。可哀想に…。月までもがお前に捕まってしまったのだな」
『……あの日、捕まったのは私の方です…』

ひなたの伸ばされた腕をなぞる様に引き寄せると、腰に腕を回し耳の後ろに口付け、ひなたも斎藤の頬に口付けた。

『んんーっ…嬉しい?』
「ひなた…」

ひなたは斎藤の腕をすり抜けると湯船に浸かりながら、降り積もった雪をかき集め何かを作り出した。

「身体を冷やすぞ」

鼻歌が聞こえ、斎藤が声をかけてもやめそうにない。

『出来た!♪』
「…何だそれは?」
『雪だるま』
「ああ…。見ればわかる」
『こっちがはじめさんで、こっちは私。可愛いでしょ』

可愛いとは言い難い普通の雪だるまだが、腰に携えた木の枝の刀に気付くと笑みが零れた。

「愛らしいな」
『チャチャチャチャン♪』

リズミカルに歌を歌い出すと、二つの雪だるまを引き寄せ口付けさせる。

『冬ソナ〜♪』

ひなたは嬉しそうに笑いかけるが、斎藤は意味がわからず頬杖をつきながら眉尻を上げた。
だが、やや合って笑いながら照れ臭そうに目を逸らした。

「お前は本当に…。飽きがこない」

冬ソナの曲を歌いながら雪だるまで遊ぶひなたを、斎藤は覗き込むように口付けた。

「お前が望むならなんでも与えてしまいそうだ」
『じゃあ、ずっと一緒にいて下さい』
「…それは俺の望みだ」

ひなたが可愛くてたまらない斎藤だった。


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