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豪華な夕餉に舌鼓をし、ひなたが大きく伸びをする。
『美味しかった!もう入らない』
「それは良かった。ひなた。ここの露天風呂は広いぞ。ゆっくりしてこい」
『露天風呂!?行きたい!』
「源泉掛け流しの湯だ」
お互い身なりを整え、ひなたは手を振り女湯へ入って行った。
斎藤が男湯へ入ろうとすると、女将が現れ声を掛けた。
「これから風呂をいただく」
「あら。でしたら女湯へどうぞ」
「お、女湯」
「ええ。他のお客様もみえず、今夜は貸切になります。女湯の方が景色が綺麗ですから。宿の者も入りませんので、どうぞご夫婦でお好きに使って下さいませ」
「そ、そうか。かたじけない」
斎藤は気恥ずかしそうに会釈をし、女湯の暖簾をくぐった。
ーガラ…
『うわぁー。…綺麗…。』
真っ白な雪景色に、真っ白な天然温泉。
広い岩風呂に、チラホラ降り積もる雪。
木の枝に積もった雪が風で舞い上がると、まるで桜の花びらのように流れた。
桶に湯を掬い、手を入れ温度を確認する。
肩から一気に被ると、鳥肌が立った。
『う〜。熱い!寒い!』
足からゆっくり湯に浸かると、じんわりと身体を温める。
『あー………』
みっともないと言われようとも、こんなに気持ちのいい湯に浸かり溜息をつかない者がいるだろうか。
ーガラ
扉が開く音と共に人の気配がするが、立ち昇る湯気で誰かはわからない。
屯所のように隊士が来る心配が無いのは、女湯の特権だろう。
「ひなた…?」
『は!はじめさん!?」
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