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小さな旅館に着くと、綺麗な女将が深々と頭を下げながら出迎えた。
案内された部屋は明るく、大きな窓が一枚の絵のように景色を写していた。
『わあ…』
ひなたの歓声があがり、斎藤も安堵の笑みを零した。
女将がお茶を運び、部屋の説明をしていく。
見るからにいつもと違う部屋の豪華さに、感動してしまった。
『はじめさん…。ここ凄く高そう…』
「赤子が生まれれば暫く出歩けまい。ゆっくりして精をつけられれば、安いものだ」
『はい…』
「ここの夕餉は豪華だ。楽しみにしていろ」
『やったーー♪』
斎藤は荷物を置くと、女将が運んできたお茶をすする。
「ごゆっくりどうぞ」
女将が部屋を出ると、斎藤は何やら落ち着かない。
意を決したように立ち上がり、ひなたの隣に腰掛けると肩を抱き寄せた。
『は、はじめさん?』
「何だ…」
『どうかなさいました?』
「本当は…」
『はい…』
「お前を置いては行きたくないのだ…」
『はあ…。寂しいんですか?』
「……」
『私も、寂しいです』
ひなたは身体をすり寄せ、斎藤にしな垂れかかった。
それから夕餉が運ばれるまで二人は片時も離れず、触れ合っていた。
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