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尻尾と耳が元気に跳ね上がり、頬を緩ませるとカウンターから声が掛かる。
ひなたは軽くウインクして席を外れた。
『オーダー取るだけです』
「行くな…」
『…泣くな』
《かえれ》と書かれたオムライスをはじめが寂しそうに食べていると、またお店の扉が開いた。
『お帰りなさいませ、ご主人たま』
店の常連客が来たのだ。
ひなたが笑顔で席へと案内すると、慣れた様子で注文を始めた。
やはりこちらもオムライスを頼む。
気持ち的には“オムライス一丁!!”と叫びたい所だが、店の雰囲気に合わせ笑顔で交わす。
誕生日の前後5日間は、メイドが特別なお祝いをするのが売りのようだ。
カウンターに入りメイド全員で写真を撮ったり、ケーキをプレゼントする。
初めて見た時は気に入らない客を、裏でボコるのかと勘違いしたものだ。
接客中もはじめの視線が痛い。
一段落ついて店内を覗くと、他のメイドが席についていた。
お相手は店で一番の売れっ子の《ももち》だ。
小柄で華奢なメイドが似合う女の子。
同性からは嫌われるタイプだ。
美男美女。
並んで座るとお似合いだ。
ひなたは哀しくなり奥へと戻ろうとするが、タイミング悪く用事を預かってしまう。
寄りによってはじめと彼女の写真を撮る係りだ。
ひなたがテーブルへと向かうと、無表情だったはじめがパッと笑う。
─うぅ…!可愛い!
不覚にも胸キュンしてしまうが、ここは本命の余裕を見せなくてはならない。
『ももち、チェキ持ってきたよ〜♪』
「ありがと〜ひなた♪」
断っておくが親しくない。
そしてはじめも何でお前と写真を撮るんだとばかりに態度が豹変。
「はじめさんは特別だよ♪」
ももちは可愛くポーズをとるが、はじめはそっぽを向いてひなたに笑いかけた。
「仕事はいつ終わるのだ?」
『え??あ、えっと…』
「ご主人たま〜♪メイドはず〜とご主人たまをお待ちしております〜♪」
─ああ、そういう設定?
『ご、ご主人たま♪』
はじめはポッと頬を染めた。
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