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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.13 志摩とキィの二人の話(3/3)
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コンビニコロッケ

(でも本当に60円のコロッケでよかったのかな?)

徹夜の缶コーヒーとコンビニコロッケを二つ買って、ようやくコンビニを後にする。

「キィちゃん、はい。コロッケ。」

そして買ったばかりのコロッケを紙袋ごと手渡そうとしたのだが、キィは受け取ろうとしない。

「え?」

きょとんとした顔で『なんで今?』と続けて言葉にして、頭を傾ける。



富豪育ちのキィ

けどそんな俺の行動に、すぐ理解してくれたようだ。

「あぁ、そっか。ごめんごめん、ごめんね、しまちゃん。」

「???」

「僕、歩きながら食べるなんて行儀悪いからダメですよーって。母様たちに昔から強く言われてるから出来ないよ。」

いつも残念な言動のせいで、キィが富豪育ちの坊ちゃんだということを、つい忘れてしまいそうになる。
それを改めて思い出し、初めて知った南浦家の一つの仕来たりだった。

(そういうところは、ちゃんとお坊ちゃま仕様なんだな。)



気になる視線

「しましまちゃんは僕に構わず食べなよ。食べるために自分の分も買ったんでしょ?」

「それはそうだけど・・・。」

買い食いする気分で購入したコンビニコロッケ。
キィは自分に遠慮せずにと勧めてきたが、片方食べて片方食べないはどうしても気になってしまう。

(・・・・・・。)

キィの視線がじぃーっと、じぃーっと、ずっとこっちのコロッケを見てるから、どうしても気になって仕方がない。

(これは食べづらいなぁ。)



ダメもとの一押し

自分だけ食べるのは、やはり心苦しい。

「うーん。やっぱりキィちゃんも一緒に食べない?」

なのでダメもとで。もう一度、キィを誘ってみる。

「キィちゃんと一緒に食べたくて買ったわけだから、キィちゃんが食べないなら俺も食べない。事務所に帰ってから食べるよ。・・・兄貴に奪われそうだけど。」

「・・・え。」

せっかく一緒のコロッケを買ったのだ。
やっぱりキィと一緒に食べたい。



言葉遊びのルール違反

歩きながら食べるのがNGなら、座りながらならOK?
南浦家の仕来たりに、そんな言葉遊びでルール違反。
だけど見張りがいるわけじゃないからと安直な考えで、事務所近くの公園に寄り道。

「・・・こんなとこ見つかったら、すごく怒られそう。」

そんな誘いにキィは頷くこともなければ、拒否ることもなく。
黙ってついて来てくれて、おとなしく公園のベンチにハンカチを敷いてから腰を下ろした。

「しましまちゃん。もし見つかったら一緒に怒られてね?」

「ははは・・・。」



キィちゃんと一緒に

「あんな言い方されたら断れないよ。もー、今回だけだからね。こういうことするの。」

「ははは・・・。」

隣に志摩も座り、再び差し出したコンビニコロッケを今度はちゃんと受け取ったキィ。
口から出る言葉はちょっとだけ怒ってるようだったけど、顔から出てる表情は少し嬉しそう。

「いただきます。」

そして食べ慣れない様子でコロッケを口に運んで、一口パクリ。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
よく噛んでからゴクリと飲み込む。

「少し冷めちゃってるね、これ。」

「ホントだ・・・、ぬるい・・・。」

その味はアツアツでもなければ冷たくもない。
ちょうど真ん中ぐらいの温さで超絶微妙なコロッケだった。

(いつまでも悩んでいたのが原因だな。)

ぬるいコロッケも美味しいと言えば美味しいが、やはりアツアツの揚げたてのあの美味さには勝てない。

「うん、美味しい♪」

次々にパクパクとコロッケを食すキィ。
お気に召したようで機嫌も上々。
でも今更ながら、坊ちゃん相手にこんなぬるいコロッケなんか食べさせて本当に大丈夫だったのだろうか。と小さな不安を覚えた。



ごちそうさまでした

「ご馳走様。ありがとう、しましまちゃん。すごく美味しかったよ♪」

「そっか。喜んでもらえてよかった。」

でもキィの満面な笑顔が見てて何より。
そこに後悔なんて何もない。
キィと一緒にコロッケを食べれたのだ。
そこに後悔なんてあるわけがない。

「うん。だってずっと前から、もう一回食べたくて食べたくて、こんな形で食べられるって思ってなかったから。」

「すごくコロッケ見つめてたもんね。やっぱり我慢してたんだ。」

「あ、れ・・・?バレバレだった?」

「あれでバレないほうがおかしいよ、キィちゃん。」



今日はありがとう

コンビニコロッケを食べ終え、公園を後にする。
そしてあっという間に事務所へとご到着。

「ん?あれ!?もう事務所!?」

「うん、そうだよ。さっきの公園からずっと見えてたよね?」

「えーっ。全然歩き足りないよ!」

行きは文句ばっかりだったからかな?
帰りは(寄り道もあったけど)、ずっと志摩と喋りながらだったからかな?
同じ距離のはずなのに、キィは全然違うように思えたようだ。

「それでも寄り道がなければ、もっと早く帰れたんだけどね。」

「えー。それでも僕、もっと歩けたよー。」

「本当?それ。行きはあんなに遠いって言ってたのに?」

「あれは本当に遠かったのー。なんであんなに遠く感じたんだろう???」

これにてキィちゃんとのコンビニショッピングは終了。
二人仲良く事務所の中へと戻って行く。

「しましまちゃん。今日はありがとね。すっごく楽しかった!」

「ありがとうはこっちの台詞だよ。こちらこそおつかいに付き合ってくれてありがとね、キィちゃん。」

何か大事なことを忘れたまま・・・。



言ってたよね?

コンビニから事務所へ戻ってきた志摩とキィ。
その途端、

「イ゛ッ!?」

志摩も左頬に徹夜の拳がダイレクトに炸裂!
油断してただけあって見事に決まり、向こうの壁までぶっ飛ばされてしまう。
そこにはもちろん兄から弟への優しさなんてものはない。

「な?!いきなり何すんだ!クソ兄貴!!」

「僕、微糖の缶コーヒー買ってきてってお願いしたよね?」

「はぁ!?ちゃんと買ってきてあるだろ!ほら、微糖の缶コーヒー!」

「僕、温かいのって言ったよね?これすごくぬるいんだけど。」

「・・・あ。」

「殴られる覚悟できてるってことだよね?これ。」

予告通りに、グーパン執行。
おつかい内容忘れた志摩に徹夜から無愛の制裁を。
このあと拳でメチャクチャにさられたのでした。



パシり屋主人公

徹夜からの制裁。
メチャクチャにグーパンされた後、買い直すためにもう一度、コンビニへ行くこととなった志摩。

「いってらっしゃーい、しましまちゃん。気を付けてね。」

「あ、あれ?キィちゃんもういいの?また一緒に行かない?」

「んー、疲れたからもういいや。」

あれほど歩き足りないと言ってたのに、志摩の誘いをバッサリ断るキィ。
どうやらさっきまでの気分は、もう遠いどこかへやってしまったようだ。

「・・・トホホ。」

こうして志摩は結局一人寂しく、徹夜の買い出しにパシられるのでした。



『CRO×QUAR』第13話を
読んでいただきありがとうございます!

今回は主人公とキィのお話でした
第二話を書いてた頃からキィを
コンビニに連れて行きたいな〜っと思ってました
好物のコロッケを食べさせるシーンも入れられて
個人的には凄く満足しております

スーパーのコロッケも美味しいですけど
コンビニのコロッケも美味しいですよね
自分で作るコロッケは、まず作ることが出来ないので、
美味しいかどうかも分かりません


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