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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.46 徹夜とエヴァの二人の話(3/3)
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徹夜の異変

「え?」

夢に魘されているのか。
寝ているはずの徹夜は、とても苦しそうな表情をしており、ときおり暴れていた。

「・・・ッ・・・!」

「徹夜さんっ!?」

きっとさっきの物音も彼が暴れたから、その振動で近くにあった何かが倒れたのだろう。
そんな分析より、まず徹夜を。部屋の奥に進んで夢から覚まさせるために寝ている体を起こすように抱えて、何度も何度も彼の名前を呼んだ。

「徹夜さん!起きて!!」

「・・・・・・。」

「起きてください!徹夜さん!!」

「・・・?」

そしてやっとの思いで目を覚ましてくれたけど、起きて直ぐだったせいで、この状況が分からなかったのだろう。

「ッ!」

「え?」

ビクッと震えた体はエヴァに怯え、敵意むき出しの目で強く睨みつけた。



徹夜の異変 2

「徹夜、さん・・・?」

「あれ?・・・エヴァ?」

けれど徹夜は次第に寝ボケからも覚めていき、現状をゆっくり把握。

「エヴァも悪い子だね。入ってこないって、言ってたのに。」

ホッとしたような息を吐いて、この部屋に入ってきちゃったエヴァを弱々しい声で静かに叱る。

「ごめんなさい。徹夜さんが魘されていたものだから、つい・・・。見るに耐えなくて。」

「そう・・・。そんなに酷かった?」

「・・・はい。」

「そっか。ごめんね心配掛けちゃって。」

それでも悪夢から起こしてくれたことには変わりないから、ありがとうを。もう大丈夫とも伝え、エヴァの腕から離れた。



ギターとの違い

徹夜が暴れて倒したそれは1本の楽器。

(ギター・・・?)

それはアリカの部屋で見たギターとそっくりなんだけど、どこかが何かが違う。
だから昨日ちょっとだけ教えてもらったことを思い出しながら見比べた。

(あれ?弦が少ない?)

しかし気付けた違和感はそこだけ。
詳しくないエヴァは『そんな形のギターもあるんだ』と、そこで頷く。
彼はアリカのプロデューサーだから。
徹夜がギター弾けても何もおかしくない話だったから。

「エヴァ。確か『幾らでも』してくれるんだったよね?」

「え?あ、はい!俺に出来ることがあれば幾らでもします。」

そしてこのタイミングで今日の本題に触れてきたから、この楽器に触れたのはこれっきり。
エヴァはさっさと拾い、近くの壁に掛けて戻した。



『幾らでも』から
『ひとつだけ』へ

「じゃあ『幾らでも』じゃなくていいから。『ひとつだけ』。」

そうして徹夜の口から語られたのは、『幾らでも』を『ひとつだけ』にして選んだこと。

「誰にも言ってほしくないんだ。今見てたこと・・・。」

「え?」

「この歳にもなって魘されてただなんて恥ずかしい話だから。・・・お願い、出来る?」

お得意の絶対命令で捩じ伏せればいいのに、それをわざわざ『お願い』にさせて、2人だけの秘密を作ってエヴァの中に閉じ込めさせたのだった。

「はい、分かりました。誰にも言いません。幾らでもすると言ったのは俺ですから。」



大食旺盛

それからはいつもの徹夜に戻っていた。
エヴァが作っていたご飯も作り置きしていた分まで綺麗に平らげて、相変わらずの大食旺盛っぷりを発揮。

「ありがとうエヴァ。すごく美味しかったよご飯、ご馳走さま。」

「こちらこそ美味しく食べていただきありがとうございました。お腹苦しくないですか?」

「うーん、ちょっと苦しいけど大丈夫。食べれる時に食べておかないと、腐ったりさせたら勿体ないし。」

徹夜は食べるときは凄い量を食べるから、彼の胃袋はどうなってるのかすっごく気になるところだ。

「あ、そうでしたよね。徹夜さん外食多いって言っていたので、つい作り置きまでやってしまって。」

「ううん、いいの。エヴァはやっぱり優しい子だね。嬉しいよ、その気持ち。嬉しかったから腐らせる前に食べ切ったんだから。」



あの時の話の続きを

お茶を飲んでひと息つく2人。
ここで幕を閉じたいところでもあるが、そういうわけにはいかない。

「それでー・・・決まった?エヴァの答え。」

やっとの思いで徹夜と話す機会が出来たのに、エヴァから触れてこないから、徹夜から触れることに。
それはいつか途中で途切れてしまったあの時の話の続きを。

「ごめんね。あの日からずっとエヴァと2人にならないよう避けていたから、嫌な気持ちにさせちゃって。」

「いえ、こちらこそ。みんなにご迷惑お掛けしていて、本当にすみませんでした。」

いつまでも逸らしているわけにはいかないから。

「弁償の話なら今すぐにって訳じゃないけど、上と話し合ってチャラにすること出来ると思う。エヴァの友だちにも迷惑かけてるみたいだったから。」

「いえ。ふざけあってた時に割ってしまったことなので、それはきちんと俺とエーチで払わせて下さい。悪いのは完全に俺らだったので。」

エヴァのこれからにジャッジを下す。



エヴァの選択肢

「言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、エヴァを避けていたのにも理由あるんだよ。あのまま続きを何処かで聞いていたら、僕は頷くことしか出来なくなるから。」

エヴァは辞めるのか、辞めないのか。
彼がどちらを選んでも、これが本当に最後。

「最悪にさせた始まりだったけど、それでもエヴァだって皆と一緒に頑張っていたの見てたから。ステージに立つ喜びを何も知らないまま終わらせてしまうのは、すごく勿体ないって感じて。」

「徹夜さん・・・。」

「それでも仕事に拘って優先させたのは、僕の悪いところだね。だからごめんなさいは僕らのセリフ。エヴァが謝ることなんて何一つないんだよ。」

それがエヴァの答えとして受け止める。



エヴァの答え

「どうする?エヴァが決めることだから、エヴァが決めていいよ。」

悩みに悩んで、悩み抜いたその先で見つけたモノ。

「俺、辞めるの辞めます。」

「え?」

「この数日間。俺、自分がどういう人間なのか。自分って思っていた以上に、欲張りなんだなって改めて知りました。」

「欲張り?エヴァが?」

「はい。俺、どちらも嫌です。堀北を辞めるのも、クロスカルテットを辞めるのも。どっちも嫌でしたから。」

それは自分さえ自分を誰にも譲らない答え。

「だから俺、辞めるの辞めました。」

これがエヴァが決めた答えだった。



辞めるの辞めました

「でも大丈夫?色々と。堀北食堂だって忙しいときあるでしょ?また何かあったりしたら。」

「リンにはこれまでと変わらず申し訳ないこととなりますが、でも俺が決めたことです。今回は完全に自己管理不足が原因でしたし、そこは俺が気をつけていれば防げるお話です。」

辞めるのを辞めたエヴァの答え。
クロスカルテットも堀北食堂も今までと何も変わらず、続ける意欲を持った。

「なりたいとは思ってなくてラッキーで始まった話でしたけど、途中で投げ出すのも無責任な話ですし凄く勿体ないです。それに俺、もっとこの業界知りたいです。なのでもっと教えて下さい。」

「でも無理なときは無理でいいから無茶しないようにね。ダメならダメで全然いいから。」

「あ・・・。それ志摩さんにも同じこと前に言われてたの今思い出しました。もう随分と昔の話のように感じますね。」

受け止めた徹夜も静かに頷く。



不束な者ですがこれからも
よろしくお願い致します

「・・・そっか。じゃあエヴァが選んだことを後悔させないよう。何選んでも結局はすると思うんだけど、その結果が最悪にならないようにするのが僕らの仕事だから。僕らも頑張らないとだね。」

そして差し出した手を、掴んだ手。

「これからもよろしくねエヴァ。」

「はい。不束な者ですが、これからもよろしくお願い致します。」

『これからもよろしくお願いします』と、2人は改めて握手を交わしたのでした。




クロスカルテットは、まだまだデビューしたてで始まったばかり。
駆け出しアイドルだけど、彼らがかっこよく輝けるよう作者も頑張って執筆して参ります。
どうぞ今後これからもCRO×QUARを、よろしくお願い致します!!



『CRO×QUAR』第46話を
読んでいただきありがとうございます

これにてエヴァメインのお話は完結です
次のメインエピソードは誰になるでしょうか?
既にエヴァからバトンタッチ済みですが
予測して頂けますと作者としても嬉しい限りです
だいたいそいつの登場(出番)が増えてくるので
分かりやすいかもしれませんが・・・

そして1話から続けていた調整の日々に
ようやく終止符を打ててホッとしてますが
結構というよりかなり疲れました・・・
あとエヴァ編完結の余韻を味わいたいので
9月の更新はお休みさせていただきます
なので次回は10月から更新再開となります
何卒ご了承下さい。。。


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