神崎先生にまで、こんな症状にさせてしまったのは間違いなく俺だ。 だから俺は責任を取ろうと、支えられていた体を預け、神崎先生の背に腕を回す。
「ごめんなさい、神崎先生。」
「錦、くん?」
「俺・・・、最後までちゃんと。・・・ちゃんと最後まで責任取ります、から。だからー・・。」
続けて言葉にして、必要以上に迫る。 そんな俺は何を先走ったのか。
「神崎・・・せんせ・・・っ・・・。」
もう、どうにもならないような声色で。
「え。」
彼の耳元で。
「俺を・・・、俺を犯して。神崎先生・・・。」
とんでもない言葉を囁いた。
「・・・ッ!!」
全ての物事は、たった一瞬で何もかもが決まる。 神崎先生も、その一瞬で理性のネジが弾けたのか。 乱暴に後ろの壁へ俺を押し付け、そのままこの口を塞ぐ。
「んん・・・っ!」
いつも優しくて温和な神崎先生。 そんなイメージが壊されていく。 未知で未経験な学生の俺に、大人の男という証を思い知らされたのだ。 深く。 熱く。 切なく。 激しく。 優しさなんて感じる暇などなかった・・・。 それでも俺は神崎先生にしがみついてまで、何度も何度でも受け入れたのだった。
ーーー・・。
あんな始終があったのだ。 当然、翌日は体が重くしんどく、あれだけの時間が経ったというのに。 まだ神崎先生の感覚が離れない。 体育の授業だって見学。 他の授業にも集中力が途切れ、いろんな人に大丈夫?と心配された。 生憎、今日は数学の授業がないため、神崎先生と顔を合わすことはなかった。 けれどその日の放課後。
「錦くん!」
「!」
神崎先生は大勢いる生徒の中から、俺だけを探して見つけ出す。
「神崎、先生・・・。」
「会えてよかった。錦くん、ちょっといいですか?」
「え・・・。」
そしてまた人の通りが少ない場所へ。 誰にも聞かれないようにと、今度こそ数学準備室へと俺を連れ出した。
「な、なんですか?神崎先生。」
昨日の今日だ。 またこんな静かな教室で二人きりになれば、昨日のことを思い出して意識してしまう。 俺も神崎先生もそれが顔色に出ていて、互いに目を合わせようとしなかった。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
沈黙と緊張がシーンッと続く時間。 この間を何とかしなければ・・・。 そう思い自ら先に出たが、
「あの・・・っ。」 「あ・・・。」
妙なところで気が合い、二人とも同時に話してしまう。 だから俺は神崎先生に先を譲った。
「か、神崎先生。先にどうぞ。」
「あ、うん。」
昨日の今日のことだ。 神崎先生に何を言われるのか、だいたい想像がつく。 それでも彼の言葉で聞きたいから、それを待った。
「・・・・・・。」
しかし神崎先生は何を躊躇っているのだろう? 言葉を喉の奥から出せずに、慎重に選んでいる。
「先生?」
「・・・!」
そんな彼に助け船を。 神崎先生を呼ぶと、ようやく二人の目が合う。 それでやっと覚悟が決まったのか。
「・・・あんな行為をしておきながら、とても身勝手なことだと分かってます。それでもそれを承知で言わせて下さい。」
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