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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.11「・・・ごめんなさい」(1/5)
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ついにやってきた定期テストのシーズン。
1日あたり2〜3教科のテストを3日間かけて行われてから、1週間が経った今日。
うちの学校では上位50名ほど名前と総合点数が、昇降口の掲示板に貼り出されるわけだが、事件はそこで起きた。

「え!?錦くん1位じゃない!!」

「うそーっ!ホントだ!」

「・・・・・・・・・。」

入学してからずっとキープしていた首位が暴落。・・・とまでは流石にいかないが、落としてしまった俺の順位。
先に返ってきたテストを総計していたから、この結果はお察し通りで、俺自身は特に驚いていない。
周りがちょっとうるさく騒いでるだけ。ただそれだけ。
ショックでもないし、分かっていたことだから全然気にもしてない。
むしろそんな時間があるのなら、次のテストに向けて勉強を。
今回は特に苦手な数学が良くなかったから、そこを中心に。予習や復習もやって、しっかり取り込んでいかないと。





そんな始まりの1日だったが、始まり以外は至って普段通り。
午前中の授業は終わって昼休み。
自分の教室で及川と昼食をとっていたとき、その及川からある頼まれごとが。

「そうだ、浬くん。このあとちょっと時間ある?」

「ん?」

「担任から昼食済ませたら、数学準備室に来て欲しいって、お手伝い頼まれちゃってて。」

なんで担任が及川にそんなことを?と疑問が一瞬生まれたが、続けて「今日、日直でさー・・・」と説明され、そういえばと思い出せて静かに納得。
本当は昼休みも自習室で勉強していたかったけど、人手を欲しがっていたので、俺は及川に2つ返事で返すと共にコクンと頷く。
すると彼は自分の嬉しさを体を使ってまで表現化。

「わーい、ありがとう。浬くん。」

「ありがとうを抱きついてまで言わなくていいから、春希くん・・・。」

「え〜?いいじゃない。今に始まった話じゃないし。」

あれからでそれからの及川は、すっかりいつもの調子を取り戻しているようだ。
大瀬にフラれたあの時は本当に心配したけれど、ニッコニコ〜なこの顔を見たら、それはもう不要だろう。
若干、空っぽさは感じるけれど、そこに俺が触れてもどうしようも出来ないし・・・。





「ごちそうさまでした、っと。それじゃあ浬くん、数学準備室まで行こうか。」

「うん。」

そうして昼食を済ませたら、そのまま及川と一緒に数学準備室へと向かう。
だけどそこには、

「失礼しまー・・・。」

担任以外に、見覚えのある違うクラスの男子生徒と数学担当の神崎先生の姿があった。
ドアを開けた途端、その3人を目の当たりにし、一瞬だけ俺の空気が凍てつく。

「及川くん来てくれてありがとう。錦くんも一緒にありがとう。さっそくで悪いんだけど、ここに並んでるプリントをあっちの机から順番通りに1枚ずつ取ってって、1セット集まったら神崎先生のとこでホッチキスしてもらって。あ、でも中身はあまり読まないようにお願いします。」

「いいですけどー・・・、なんですか?このプリントの数々。」

「今度、先生たちの会議で使う資料書。仕上がったのが今朝で、明日までに人数分まとめないといけなくて。」

「ん!?それってつまり先生の個人的な仕事の手伝いに、僕呼ばれたってこと?!」

「そういうことです・・・。あ・・・、錦くん。このことはどうかお爺ちゃんや教頭先生には黙ってて下さい。見つかると大目玉食らっちゃうんで・・・。」

そう、一瞬だけ。
一瞬が過ぎ去れば、直ぐに元どおり。

「頑張ろうか、春希くん。」

「浬くんって割とイエスマンなんだね・・・。僕、1抜けしたいー・・・。」

途中の会話を右から左へと素通りさせてしまったが、最初の方はちゃんと聞いていたから大丈夫。
担任の説明に従ってやっていくだけ。

「神崎先生も大変だね。僕らの担任の手伝いなんかさせられて。」

「困ったときはお互い様ですから。」

こうして残りの昼休みの時間は、及川たちと一緒に担任の仕事の手伝いをすることとなった。





それから暫くして。

「ん、あれ?」

「どうかしましたか?及川くん。」

最後のホッチキス止めで、及川が神崎先生に妙な違和感を抱く。
最初は首を傾げて「???」な状態だったが、ピンとあることに気付いて、「あっ」と手の平をポンと叩いた。
そしてその一瞬だけ俺の方を見て、神崎先生に問いただす。

「神崎先生。確か前まで指輪してませんでしたっけ?左の薬指。」

きっと及川の質問に悪気はない・・・はず。
しかしその内容をあまりにも普通に口にしたから、あっという間に気まずくなるような空気が漂う。

「・・・・・・・・・。」

及川の言うとおり、神崎先生の左の薬指に指輪が確かにない。
知らなかった・・・。
俺は及川が言うまで、その違和感すら気付いていなかった。

「えっと、それはー・・・「及川くん、そんな野暮なこと。神崎先生に訊いちゃ駄目だよ。」

「あ、そっか。・・・すみません。」

しかしその答えは、担任に遮られてしまったため分からないまま。

「浬くんのでラストだね。」

「・・・そうだね。神崎先生、ホッチキスお願いします。」

「はい・・・っと。及川くんも錦くんもお疲れ様でした。」

ラスト1セットにもホッチキスされ、これにて担任による個人的な仕事の手伝いは終了。
心も落ち着かないままだったけど、なんとか最後まで平常のように乗り切れた。

「はい。2人にも手伝ってくれたお駄賃。これで好きなジュース買っていいからね。」

「えーっ!先生の仕事の手伝いをしてあげた報酬が、たったこれだけ!?」

「先生も給料前で金欠なんだから許して!」

けど及川と担任のやりとりが、またあまり耳に入ってこない。

「やったね、春希くん。これで好きな飲み物買えるね。」

「えぇ!?それはー・・・、そうだけど。浬くんって割と安上がりだね。」

これで手伝いが終わったんだ。
なら、いつまでもここにいる必要はない。

「昼休み終了まで、まだちょっとあるから。これから自動販売機まで一緒に買いに行こうか。」

「うーん・・・、そうだね。終わっちゃう前に行っちゃおうか。それじゃあ失礼しましたーっ。」

「失礼しました。」

落ち着けない心の騒めきが、居心地を悪くさせて、隙をついて焦らされる。
それを誰にも気付かれたくないから、及川を連れて、さっさとここを出た。
担任らや神崎先生に見送られる視線を背中に感じながら・・・。
少しだけあった残りの昼休みは、校内にある自動販売機にて及川と一緒に購入した飲み物を飲んで過ごした。




そしてその後、担任に遮られた続きの答えを、女子生徒から及川まで伝ってきた噂から知ってしまう。
少し前に神崎先生が離婚されていたことをー・・・。



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