体育の授業が終わり、これで本日の授業はすべて終了。 教室に着くと帰りのホームルームが始まって、あっという間に終わり放課後を迎える。 部活に向かう生徒。 家に帰宅する生徒。 それぞれがぞれぞれに散らばり、教室から人の数が減っていく。
「錦くん。及川くんとの勉強頑張ってね〜!」
「う、うん・・・。」
「及川くん。はい、お菓子。よかったら錦くんと一緒に食べてね。」
「わーい、ありがとう。甘いもの好きだから嬉しいなぁ。」
(・・・はぁ。)
「最近あの二人仲いいよね。一緒にいること多いっていうか。」
いつもキャーキャー黄色い声を上げて群がってくる女子生徒も、今日は珍しく静か。 俺と及川の二人に何故か気を遣われ。一言声を掛けたり、差し入れのお菓子を及川にあげたりするだけで退散して行く。
「きっと彼女らの中で僕か浬くん。どっちが掛け算の右側なのか話し合ってるんじゃないのかな?そういう話、彼女ら好きみたいだし。」
(それは大いにやめていただきたい迷惑な話だな。)
「普通に見て分かんないかな〜?どっからどうみても僕が右側に決まってるのにね。ね〜?浬くん。」
「・・・っ・・・。」
(同意を求めるな!)
「薄い本できたら見せてもらえないかな〜。架空とはいえ、どんなふうに僕が攻められてるのか、やっぱ気になっちゃうし。」
(気にならなくてよろしい!)
数分もしないうちに教室にいるのは、俺と及川の二人だけになる。 さっきまであんなに騒がしかったのに、それが懐かしくなるほど静かになった室内。 雲っていた空から、ついにポツポツと雨が降ってきてしまった。
「あ〜あ。とうとう雨降ってきちゃったよ。」
「そうだね。さっさと終わらせて早めに帰ろうか。本降りにならないうちに。」
「だね。お世話になります浬様々。」
(・・・調子のいい奴。)
誰もいなくなった教室"
静かに降る雨の音を聞きながら始まった勉強会"
向かい合わせになった二つの席"
それはいつもよりずっと近くに感じて、縮まる二人の距離"
「そして及川 春希の純潔は、錦 浬の手によって強引に優しく奪われて・・・。」
「及川くん。さっきから何独り言呟いてるのかな?真面目にやらないようなら俺、帰るよ。」
「わわわっ。ごめんごめん。真面目にやるから帰らないで〜。僕マジピンチなんだから。」
(誰が奪うか!)
こうして及川のために開かされた勉強会。
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